秋田市にある書店が惜しまれながら姿を消しました。
70年以上の歴史がある老舗の最後の1日に密着しました。
平野照子さん
「あなた方がこういう(小さい)ときから連れてきてもらったったからね」
地域に愛された街の書店。
この春、その長い歴史に1つの区切りをつけました。
平野左近さん
「やっぱり明るい未来ではないなというところ」
母・照子さん
「しょうがないかなと思ってる。絶対もう後戻りするってことはないですよね」
家族3代でつないできた75年。
左近さん
「最後の日は一緒にと思って」
最後の1ページを追いました。
江戸時代、久保田城につながる主要な道の1つだった秋田市の通町商店街。
秋田藩の顔とも呼ばれた通りには古くから商店が並び、いつの時代も市民の暮らしを支えてきました。
この通りに店を構えて75年、ひらのや書店です。
幅広い品揃えと、読書好きの心をくすぐるラインナップで街の書店として愛されてきました。
3代目の平野左近さん45歳。
母親で2代目の照子さんを含め家族で続けてきた店の営業をこの春で終える決断をしました。
平野左近さん
「いまの売り上げに対して、これから人件費であったりとか設備投資であったりとかというところを考えていくとやっぱり明るい未来ではないなというところ」
活字離れや電子書籍の台頭。
出版業界の不況を肌で感じてきました。
左近さん
「年々雑誌の数も少なくなってきて」「昔家族総出でやってたんすけど。そのぐらい雑誌も入ってきてたんだけども、いま全然一人で対応できるぐらいの量になっちゃいましたね」
戦後の復興期に平野さんの祖父・栄一さんが始めたひらのや書店。
娯楽が少なかった時代に雑誌や漫画は人気を集め、売り上げの増加とともに店舗も次第に拡大していきました。
創業当時から変わらないのが本の配達サービスです。
いつの時代も地域とのつながりを大切にしてきました。
学童に配達
「こちらになりまーす」
泉学童ひまわりクラブ 篠田典子さん
「きょう14日だから、あしたくるな~とか、付録もみんなで貯めて分けたりくじ引きをして付録をみんなでもらったりとかしていますよ」「私も地元の本屋さんってことで ひらのやさんにお願いしたわけです。人から人にいただけるということで」
かつてはリヤカーで配達にいったという2代目の照子さん。
売り上げが右肩上がりだった時代も、その後の不況も、ともに歩んできた夫の史郎さんは今年2月に亡くなりました。
閉店は1月に史郎さんを含め家族みんなで決めたといいます。
照子さん
「みなさんほんとに長いお客さんで何十年とか、親子4代でお付き合いいただいているお客様もいらっしゃるぐらいなので、ほんとに何ていうかな、申し訳ないな~という気持ちの方が」「でもほんとにお客様に支えられていままでやってこられたなってこと、ほんとに皆さんに感謝してます」
迎えた最後の営業日。
左近さん
「いつも通り。あんまり気負わずに。頑張りすぎないで」
母・照子さん
「きょうもまた1日お客様とちゃんとご挨拶できることを、ほんとにそれはありがたいことだなと思ってます」
最後は家族全員で。
左近さん
「やっぱり店ね一緒に頑張ってきたし、じいちゃんばあちゃんに関しては店を開いた人たちだから。おやじもね、長い間ほんと頑張ってくれたから最後の日は一緒にと思って」
木綿などを扱う店が前身のひらのや書店。
130年以上、ここ通町で商売を続けてきました。
節目の1日は商売を始めた先祖の半纏をまとって店に立ちます。
いよいよ最後の1日の始まりです。
「どうもおはようございます。いらっしゃいませ」
開店から絶え間なく客が訪れ、別れを惜しみました。
客
「ここけっこう本の選書がいいもんですから。いろいろ出会いがあって」「疲れた時に立ち寄ってオアシスだったんですけどね、ほんとにそういう意味じゃすごく悲しい」
客とのやりとり
「ほんと色々お世話になりました。ありがとうございました」「こちらこそ」「ねえほんっとに」「今までありがとうございました」「こちらこそ」「これちょっとですけど手紙書いてきたので」「あいごめんねほんとに。長い間ね~。ありがとうございました」「寂しいです」
娯楽が少なかった時代も、娯楽があふれている今も、大切な場所でした。
客
「私たち小さいころ、そのへんを参考書だとかあのへん読んでるうちにおじいちゃんにはたきをボンボンボンボン。そうやって逃げ回った思い出がありますけど。そういうふうな思い出です。お金がなかったもんでそんな買えなくてね、本は。よくしてくれてもうほんとにいい町内でしたよ」
本を通じて街を見つめてきた75年。
地域に愛された店の歩みを改めて感じることができました。
「とんでもないです。こちらこそありがとうございました。閉めるか」
「けっこういらっしゃるね」
平野左近さん
「このときをもってひらのや書店の店舗での営業を終了いたします」「どちらかといえば正直ほっとしています。祖父母がこの店を開業して、父と母が育てた店をここまで続けてこられたこと。自分たちの意思で終わることができることに安堵している次第です」「75年間本当にありがとうございました」
惜しまれながらも姿を消しつつある街の書店。
その灯かりがまた1つ消えました。
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最後の1日は終始客足が途切れることがありませんでした。
先代たちも含め、家族で誠実に地域と向き合ってきた姿勢がお客さんたちに伝わってた証だと感じました。
※5月7日午後6時15分のABS news every.でお伝えします
