【6月22日 CNS】勝てないなら、いっそ退場する。
5月6日、サムスン電子(Samsung Electronics)の公式サイトが突然通知を発表した。要点は一文に集約される。急速に変化する市場環境に対応するため、中国大陸市場でテレビ、モニターを含むすべての家電製品の販売を停止することを決定した、というものだ。
かつて10年以上にわたり中国市場のテレビ販売台数で首位を占めていたブランドは、なぜひっそりと退場することになったのか。産業在線のシニアアナリスト、王娟(Wang Juan)氏は三里河中国経済観察の取材に対し、サムスン家電の中国市場撤退は、国内業界の激しい競争、企業自身の戦略転換、そして世界的な生産能力配置の再構築という三つの要因が重なった必然的な結果だと分析した。
サムスンが中国家電市場で劣勢に陥ったのは、一朝一夕のことではない。2010年前後、勢いに乗っていたサムスンのカラーテレビ市場シェアは一時20%に達した。しかし2025年には、年間テレビ出荷台数がピーク時の255万台から50万台未満にまで縮小した。
ビックデータの分析サービスを提供する奥維雲網(All Viw Cloud)のデータによると、2026年初めから4月26日までのサムスン製カラーテレビの中国オンライン市場シェアはわずか1.33%、オフラインでも3.54%にとどまった。白物家電の状況はさらに厳しく、冷蔵庫の市場シェアは0.41%、洗濯機は0.37%まで落ち込んだ。これは、多くの中国の消費者が家電を選ぶ際、サムスンという選択肢をほぼ視野から外していることを意味する。
王娟氏は、この状況の根本には、中国本土の家電ブランドの全面的な台頭と技術面での逆転があると指摘した。中国テレビ市場のブランド出荷報告によると、中国テレビ市場の上位8ブランドはいずれも国産ブランドで、出荷台数は市場全体の94.1%を占めた。一方、外資系4大ブランド(サムスン、ソニー<SONY>、フィリップス<Philips>、シャープ<Sharp>)の2025年通年の出荷台数は100万台を下回り、長期にわたり市場の底辺にとどまっている。
王娟氏は「現在、国産家電は中核技術、スマートホーム、AIを活用したシーン別応用において、同等レベルに達しただけでなく、すでに追い越している分野もある。完整な産業チェーンと規模の強みを背景に、コスト面とサプライチェーンの対応速度で明確な優位性を持っている」と述べた。同じ構成、同じ仕様の機種であれば、国産ブランドの家電は一般的にサムスンより3〜5割安い。品質がよく価格も手ごろであれば、消費者に選ばれやすいのは当然だ。
一方のサムスン家電は、製品展開が停滞し硬直化しており、革新力も不足していた。業界関係者は、本社主導の中央集権的な管理体制が、中国市場の需要への対応を遅らせたと指摘している。国産ブランドが2021年に投入した技術を、サムスンは2022年になってようやく大規模に展開したが、価格は3〜5倍も高かった。家電製品には欧米の広い住宅向けの設計を踏襲しており、中国の小型住宅のキッチンやベランダには合わなかった。さらに、スマートシステムは中国国内の主流スマートエコシステムと直接連携できず、中国家庭のスマート生活シーンに入り込みにくかった。
本土ブランドによる強い圧迫に加え、サムスン自身の事業構造の調整も、家電事業の中国撤退という決定を加速させた。2026年第1四半期、サムスンの単四半期営業利益は57兆2000億ウォン(約6兆174億円)に達し、前年同期比で750%超増加した。これは同社の四半期利益として過去最高を更新しただけでなく、2025年通年の営業利益総額も上回るものだった。この業績を支えたのは、絶好調の半導体事業である。
これと鮮明な対照をなすのが、衰退傾向が強まる家電部門だ。2026年第1四半期、サムスン電子の映像ディスプレイ(VD)・家電(DA)事業の営業利益はわずか2000億ウォンで、前年同期比33.3%減となった。聯合ニュースによると、2025年通年でサムスンのVD・DA部門は合計約2000億ウォン(約210億4000万円)の赤字を出した。これは、サムスン家電が1992年に中国市場へ参入してから34年で、初めて通年赤字となったケースである。
一方では半導体事業が伸び続け、もう一方では家電事業が年々損失を出している。グループの資源配分の方向性はすでに明らかだ。利益を生まない家電端末の小売事業を思い切って切り捨て、資金、技術、人材を集中させ、AI演算力時代の中核分野である半導体産業に全力で賭けるということだ。注目すべきは、サムスンが中国の家電小売市場から撤退することは、中国の製造サプライチェーンから撤退することを意味しない点だ。江蘇省(Jiangsu)蘇州市(Suzhou)にあるサムスンの冷蔵庫、洗濯機、エアコンの生産ラインは今後も稼働を続け、北米と東南アジア向けの輸出生産拠点へと転換される。
王娟氏は「世界的な配置という視点から見ると、サムスンは中国における生産能力の位置づけを再構築し、中国国内の工場を輸出向けサプライチェーンの拠点に転換している。資源を集中させ、北米や東南アジアなどの高付加価値市場を深掘りする動きであり、本質的には、中国本土ブランドの力強い台頭に直面した多国籍企業による戦略的縮小だ」と述べた。
なおも中国市場に踏みとどまる外資系家電ブランドにとって、中国は決して穏やかな避難港ではなく、実力が問われる競技場であり、鍛錬の場でもある。中国製造の革新力を正面から受け止め、本土の需要に自ら適応し、自己革新を加速させてこそ、激しい競争の中で足場を固め、より強い世界市場での競争力を鍛え上げることができる。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News
