ポール・サイさんプロフィール

ポール・サイさんプロフィール写真
台湾生まれ。9歳で家族とともに米国へ移住。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で機械工学を学んだ後、エクソンモービルでエンジニアとして勤務。その後、ビジネススクール、戦略コンサルティング会社を経て、外資系運用大手フィデリティ投信の調査部に入社。日本株アナリストとして運輸セクターなどを担当し、のちに調査部長を務める。
米国株を中心に、日本株、中国株、不動産などへも分散投資を行う。2016年にFIREを達成し、現在は米国シアトルを拠点に、投資、執筆、地域活動、ヨットなどを楽しむ生活を送っている。

著書:台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!

(2025年11月12日発売/ダイヤモンド社/1,980円(税込))

投資の原点は家族の食卓。起業家一家の食卓で交わされた「お金」と「社会」の話

トウシル:2016年にFIREされてから約10年がたちますが、今のシアトルでの生活はいかがですか?

ポールさん:毎日とても充実しています。朝起きてすぐに新聞やニュースレターを読み、株式市場の動きや自分のポートフォリオをチェックします。その後はロータリークラブやヨットクラブの活動に参加したり、子どもの学校のPTAでボードメンバーとして活動したりしています。

 数年間はPTA会長も務めていました。会社に縛られる時間がないため、やりたいことを詰め込めるし、自分の時間を完全にコントロールできるのは本当に楽しいですね。健康管理のために自炊やジム通いもしています。

トウシル:ポールさんは、もともと台湾のお生まれなんですよね。

ポールさん:はい。台湾で生まれ、9歳の時に家族と一緒に米国に移住しました。台湾時代の記憶は今でもしっかり残っています。

トウシル:ご親族に起業家や投資家が多かったと伺いました。子どもの頃から家庭の中でお金の話などに触れる機会があったのでしょうか?

ポールさん:そうですね。私の父はもともと機械工学出身の人間だったのですが、その後自分で会社を二つ立ち上げまして、社長や取締役を務めていたんです。そのため、日常の会話や夕食の食卓での会話に、当たり前のように「会社経営のポイント」や「会計」「ビジネス」「政治」「経済」の話が飛び交っていました。

トウシル:小学生の男の子が聞く夕食の会話としては、かなり渋いですね(笑)。

ポールさん:そうですよね(笑)。まだ深くは理解できなかったのですが、お金をどうやって管理するか、税金対策をどうすればいいかといった議論を、幼少期からごく自然に聞いて育ちました。

 夏休みになると、父の会社へ連れて行ってもらい、自転車部品の組み立てラインで少し働かせてもらうなど、ビジネスの現場をリアルに体験させてもらったりもしていました。ちなみに議論の習慣は今でも変わらず、家族が集まるとずっとビジネスや経済の議論をしています。

トウシル:日本では「子どもの前でお金の話をするのはよくない」とか「お金の苦労をさせたくない」という教育方針の親が、まだ多いという印象です。

ポールさん:私は世の中のからくりや社会の働き方は、子どものうちから理解しておいた方がいいと考えています。「うちはお金がないから大変だ」といった愚痴を言うのではなく、例えば「デフレからインフレに社会が変わったのはなぜか」というような、答えのない経済のテーマについて議論を戦わせるのです。

 お金そのものの話というよりは、社会に関心を持つための教育ですね。私も子どもが13歳なので、米国の*フィデリティ証券で未成年口座を開いてやりました。実際の投資を通して、投資や経済に興味を持たせようと考えているところです。

* 米国のフィデリティ証券の「Fidelity Youth Account」では、13〜17歳の子供がアプリを使って株や上場投資信託(ETF)を取引できる。親は口座の活動を監視・閉鎖する権限を持っている。子供の口座であっても、運用益に対しては税金がかかるため、金融リテラシー教育が必須。

トウシル:13歳で投資デビューですか! 早いうちから生きた経済に触れさせているのですね。

ポールさん:もうかる、もうからない、という点ではなく、「ニンテンドースイッチが売れることはなぜ任天堂のメリットになるのか」「この会社はどうやってもうけているのか」と、会社が利益を出す仕組みについて考えてみてほしいんです。「お金=家計」で終わらせず、社会でお金が回るからくりに興味を持つきっかけになってくれれば最高です。

「米国人は数学ができない!?」移住先でのカルチャーショック

トウシル:9歳で台湾から米国へ移住されたときは、環境が一変したかと思います。何かカルチャーショックはありましたか? 

ポールさん:一番驚いたのは、「数学が不得意な米国人が多い」ということでしたね。

トウシル:ええっ!? なぜそう感じたんでしょう?

ポールさん:移住する前は、私も米国人は全員がものすごい天才集団だと思っていました。私は台湾では中の上くらいの成績でしたので、ついていけるか不安だったんです。移住後、米国の学校に入学したのですが、英語はまだ全く話せない状態だったのにもかかわらず、数学に関しては天才的な扱いを受けてしまったんです。

トウシル:アジアと米国の基礎教育の差が出た、ということなんでしょうか。

ポールさん:そうかもしれませんね。「この学力で、米国はどうやって人を月に送ったのだろう?」と、子どもながらに真剣に疑問を抱きました…。大人になった今の私の結論は、米国という国は「ごく少数の強烈なエリート」によってリードされ、成り立っている国だということです。

 全員が賢い必要はなく、仕組み自体がトップ層を飛び抜けさせるエリート教育システムになっています。小学校から中学校に上がる時に、すでに優秀な班とそうでない班にクラスがはっきりと分かれるのです。

トウシル:日本の教育とは大きく異なりますね。

ポールさん:日本はどちらかというと、中流を重視する社会ですね。しかし、資本主義の本質は「格差の仕組み」です。米国は、格差があるからこそ進歩が生まれるという側面を重視した教育システムを組んでいると思います。

 競争は非常に激しいですが、その厳しい社会を勝ち抜くための武器として、言葉の壁を越えた理系の知識や、多様な言語を話せることが自分にとっての強みになると気づけたのは、このカルチャーショックのおかげです。

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