
現地からオーストラリアの最新情報を伝える【SURFMEDIAオーストラリアSURFNEWS】。7月は「オッキーズ・グロム・コンプ」など国内の多くのグロムイベントが開催。一方で育成の現場では新たな議論。サーフィンが上達する上で本当に必要なことは何なのか。
取材、文、写真:菅野大典
7月のゴールドコースト。
空気が澄み渡り、冬ならではの美しい景色が広がっています。

晴れた日のビーチには水着で遊ぶ人の姿も。冬のゴールドコーストですが、日中は暖かく快適に過ごせています。

夕焼けが美しい季節でもあり、高台や見晴らしの良い場所では、ビールを片手に景色を楽しむ人の姿も見られます。自然と共存するゴールドコーストらしい暮らしが垣間見える光景です。

スケートパークは相変わらず人気スポット。サーフィンと同様にスケートボードがオリンピック種目になってからは、スポーツとして広く認知されるようになりました。
ゴールドコーストには昔からスケートボード文化が根付いていましたが、世界トップレベルの育成拠点として注目されるようになったのはここ数年です。
世界レベルのスケートパークが整備され、サーフカルチャーとの相性の良さや若い世代の人口が多いこともあり、プロコーチやアカデミーも年々増えています。
最近では若いオージースケーターの活躍も目立つようになり、ゴールドコーストはサーフタウンとしてだけでなく、スケートボードを含めた横乗り文化が根付く街となっています。
今月も良い波に恵まれました。今年は本当に当たり年。夏ほどコンスタントではないものの、7月も上旬と下旬に大きなうねりが入り、サイズのあるコンディションが続きました。

7月のゴールドコーストにここまでうねりが届く事は珍しい。大きな南うねりが届く時にはサンドパンピングシステムにより砂が流され、スナッパーロックスの岩の周りは地形が整いました。

ポイントにサイズがない日でも、南うねりに敏感なD-BAHではグッドコンディションの日が続きました。

下旬には大きな低気圧のうねりが届き、グリーンマウントからキラにかけて高速バレルがブレイクしました。

今年、何度も見るキラの高速バレルセッション。通常であれば1年に一度見られるかどうかというコンディションだけに、今年は非常に恵まれたシーズンとなっています。
7月は国内のグロムイベントが盛んな時期となりました。
7月1日から5日にかけて、若手の登竜門ともいわれる「オッキーズ・グロム・コンプ」がスナッパーロックスで開催されました。

今年で21回目を迎えたオッキーグロム。以前は世界中から有力グロムが集まる大会として知られていましたが、現在はサーフィンオーストラリア・ジュニアシリーズの一戦となり、ISA世界ジュニア選手権へつながる選考にも関わる重要な大会の1つとなっています。
そのため、オーストラリア国内のトップジュニアが集まる国内最高峰のイベントの一つとして位置付けられています。

南半球であるゴールドコーストの日の出時間は午前6時30分ごろ。朝早くから親御さんが付き添いウォーミングアップの手伝いをしていました。

週末のファイナルデイはビーチにも多くの観客が集まり、大いに盛り上がりを見せました。
イベント初日から3日まではオンショアコンディション。朝から海面は乱れているものの、スナッパーロックスではアクションしやすい波がブレイクしていました。
ケリー・スレーター
エクスプレッションセッションではオッキーと共にケリー・スレーターも登場。現在オーストラリアで過ごす時間も多く、会場にはリラックスした様子で姿を見せていました。

多くのキッズから写真撮影をお願いされていたケリー。以前行われたCTやCSでは長蛇の列ができてしまうため立ち止まることはほとんどありませんが、今回はグロムイベントということもあり、気さくにファンサービスをしていました。

スローなコンディションで、セットをうまく乗るかが勝負の鍵に。良い波の数が少ないだけに一つのミスが命取りになる。
エライザ・リチャードソン
大会直前にビラボンとの契約を発表したエライザ・リチャードソン。セミファイナルでは波に恵まれず敗退してしまったが、U18のオーストラリア代表に選ばれている実力は健在。同世代のサーファーが世界に飛び出す中、QSには参戦せず国内で着々と実力をつけている期待のサーファーです。
マイラ・ブラウン
今年のU12ガールズの世代ではもはや敵なしと言えるほどずば抜けた実力を持つ10歳のマイラ・ブラウン。エクセレントスコアを連発し、ラウンド1からファイナルまで圧倒的なスコアで優勝した。

幼い頃から取り組んできたスケートボードで培った技術は相当なものです。スナッパーロックスという環境の中で育ちながら、陸にはスケボーパークが充実しているゴールドコーストは、まさに世界トップクラスの育成拠点。マイラと同様に7歳の弟のハンター・ブラウンも相当な実力の持ち主で、将来楽しみなサーファーの一人。
トーマス・バーク
ファイナルで2つのエクセレントライドをスコアし、U14ボーイズで見事に優勝したトーマス・バーク。ジェイ・フィリップスを彷彿させるようなスタイリッシュなサーファーのトーマスは、毎年あと一歩のところで優勝を逃していただけに、とても嬉しい勝利となった。
タイラ・テブ
U16ガールズファイナルで敗れはしたものの、素晴らしいサーフィンをしていたタイラ・テブ。タイトなポケットを攻め、技へ入るまでのセットアップも非常に速い。しっかりとしたレールワークも兼ね備えた、基礎力の高いサーファーです。
優勝したマディソン・ケンチントン
U16ガールズで優勝したマディソン・ケンチントン。じっくりとアクションの入る良い波だけを待ち、最後には8ポイントのエクセレントスコアをメイクし見事勝利。地元スナッパーロックスの仲間たちから祝福を受け、喜びを爆発させていました。
ロカナ・カレン
最もレベルが高いと言われるU16ボーイズでは、ロカナ・カレンが優勝。セミファイナル、ファイナルの試合は大人さながらのようなバトルが繰り広げられたが、要所要所で勝負強さを発揮し優勝をつかんだ。
すでに世界ジュニアでも注目される存在となっているロッキーだが、自分のメインスポンサー主催であるオッキーグロムでの優勝は3年ぶりとなり、見事に王者に返り咲いた。
7月7日から12日には、WSL トレジャー・グリルズ・プロジュニアとサウンドボックス・OZ・グロムオープンが同時開催。
毎年オッキーズ・グロム・コンプの翌週にレノックスで開催されるこの2つのイベントは、もはやキッズサーファーにとって、冬のスクールホリデーの恒例イベントとなっており、ジュニアランキングを左右する重要な大会です。
ヘリテージ・セッションでは、レノックスヘッドを拠点とするコナー・オレアリーも登場。PHOTO:SURFING NSW

イベント期間を通してサイズのあるコンディションとなったプロジュニアと、OZグロムオープン。
ヘリテージ・セッションでのコナー・オレアリー PHOTO:SURFING NSW

イベントはタイラ・テブがプロジュニアとU16ガールズでダブル優勝という偉業を成し遂げた。PHOTO : WSL / ETHAN SMITH

プロジュニア男子はラクラン・アーギロスが優勝。2人ともWSLプロジュニア初優勝を飾り、15歳のタイラ、16歳のラクランという新たな才能の台頭を印象付ける大会となりました。PHOTO : WSL / ETHAN SMITH
さらに翌週の7月15日から19日には、2026 リップカール・グロムサーチ・OZカップがコフスハーバーのノースディガーズビーチとパークビーチで開催。
素晴らしい波でエクセレントも多発 PHOTO:SURFING NSW
大きな東うねりがヒットしパワフルな波がブレイクした今大会では、イベント期間を通して106ヒートが消化。そのうち36本ものエクセレントライドが記録された。PHOTO:SURFING NSW
ジョーイ・シルク。PHOTO:SURFING NSW
U18ボーイズセミファイナルで9.57ポイントをスコアしたジョーイ・シルク。イベントを通じてのシングルハイエストスコアを記録。PHOTO:SURFING NSW
U16ボーイズで優勝したルカ・マーティン。PHOTO:SURFING NSW
U16ボーイズで優勝したルカ・マーティンは、セミファイナルでは9.5ポイントと9.4ポイントをスコアし18.90ポイントのヒートトータルをマーク。その勢いを維持し見事優勝した。
他にもオーストラリアン・ロングボード・チャンピオンシップがツイードコーストで開催されるなど、国内イベントが充実した7月となりました。
オーストラリアのジュニアイベントが充実している一方で、育成の現場では新たな議論も生まれています。
サーフィンオーストラリアの育成部門に関わり、次世代選手の発掘や強化を担当するクランシー・ドーソンは、以前自身のSNSで、現在のジュニアサーフィン環境について意見を発信していました。
クランシーは、キッズサーファーがコンテストに多くの時間を費やすことで、技術を伸ばすために必要な時間が不足してしまう可能性を指摘しています。
もちろんコンテスト経験は重要ですが、年に数回であれば成長の刺激になる一方で、結果ばかりを追い求めるようになると、「失敗しないこと」や「20分間のヒートで点数を取ること」に意識が偏ってしまう。
本当に大切なのは長期的な視点で、さまざまな波を経験し、異なるボードに乗り、幅広いスキルを身につけること。その積み重ねが最終的なサーフィンの成長につながるという考えです。
実際に、ジャック・ロビンソンも幼少期からコンテストだけを中心に活動していたわけではありません。世界中の波で経験を積み、自分自身のサーフィンを追求してきた結果、現在ではWSLトップレベルで戦い、2024年パリオリンピックでは銀メダルを獲得しました。
もちろん幼い頃からコンペティターとして成長し、試合経験を積み重ねることで強くなる選手も多くいます。
しかし、サーフィンが上達する上で本当に必要なことは何なのか。
コンテストという限られた環境で結果を出す能力だけを磨くことが、果たして長期的な成長につながるのか。時には型にはまりすぎることで、本来持っている才能や個性を伸ばす機会を失ってしまう可能性もあります。
日本でも強化指定制度など、コンテスト結果を重視する環境があります。もちろん競技力向上には必要な仕組みですが、それだけではなく、フリーサーフィンや様々な波を経験する時間、選手それぞれの個性を伸ばす環境も同時に必要なのではないでしょうか。
これからの育成では、決められたルートに当てはめるだけではなく、様々な角度から才能を発掘し、それぞれの選手に合った成長方法を見つけることが重要だと感じます。
グロメッツサーファーにとって忙しい月となった7月。数多くの大会が開催される一方で、改めて感じたのは、選手それぞれがどのようなサーファーを目指すのか、そして長期的な視点で成長を考えることの大切さでした。
私自身、8月は日本へ一時帰国する予定です。日本のサーフシーンに触れることで、オーストラリアとはまた違った環境や文化の中で育まれるサーフィンを感じながら、それぞれの魅力や可能性を改めて見つめてみたいと思います。

菅野大典:オーストラリアのゴールドコーストを拠点にして、サーフボード・クラフトマンとして働きながら、サーフィン修行のために来豪する日本のサーファーをサポート。写真や動画撮影のほか、選手の試合に帯同、大会のジャッジやサーフコーチなどマルチに活動している。
