日常の忙しさに追われ、「どこか遠くへ逃げ出したい」「ゆっくりとした時間の流れを感じたい」と思うことはありませんか?
そんなときにおすすめなのが、観るだけで旅気分を味わえる「バカンス(ヴァカンス)映画」です。
映画史において、「バカンス(夏休み)」は古くから魅力的なテーマとして描かれてきました。
旅先という非日常の空間で生まれる一瞬の恋、普段は言えない本音、そしてバカンスの終わりとともに訪れる切ない予感――。エリック・ロメールやジャック・ロジエといったフランス映画の巨匠たちが愛したこのジャンルは、現代のギヨーム・ブラックや新鋭監督たちにも深く受け継がれています。
本記事では、クラシックなフレンチ・バカンスの名作から、世界中で話題を集めた近年の感動作、さらには最新の邦画まで、バカンスの空気感を深く味わえる映画12選をピックアップ。
ぜひお気に入りの一作を見つけて、画面越しの極上な夏休みを楽しんでください。
『海辺のポーリーヌ』(1983年 / フランス)
まずは「バカンス映画といえばこの人」という巨匠の、一番親しみやすい名作から。
巨匠エリック・ロメール監督による、きらめく夏の光と男女の恋の駆け引きを描いた不朽の名作。フランス・ノルマンディー地方の美しいビーチを舞台に、どこかおかしくもリアルな大人の恋愛模様が、15歳の少女ポーリーヌの視点を通して軽妙に描かれます。おしゃれなフレンチ・カジュアルのファッションも見どころ。
あらすじ:
15歳の少女ポーリーヌは、美しい従姉のマリオンと一緒に海辺の別荘へバカンスにやってくる。離婚したばかりで「燃えるような恋」を追い求めるマリオンは、そこで昔の恋人や新しい男たちと出会い、複雑な恋愛の四角関係に陥っていく。そんな大人たちの嘘や欺瞞を冷ややかな目で見つめながら、ポーリーヌ自身も同世代の少年と淡い初恋を経験していく。
配信:Amazon Prime Video(追加チャンネル:日活プラス)
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『みんなのヴァカンス』(2020年 / フランス)

(C)2020 – Geko Films – ARTE France
少し時代を進めて、現代フランスのバカンス映画の旗手として人気を誇るギヨーム・ブラック監督の登場です。セーヌ川で知り合ったばかりの女性がバカンスで南フランス・ドローム県の小さな田舎町ディーに行ってしまい、主人公は彼女を追いかけることに。お金がなくても、計画が狂っても、なぜか最高に愛おしい「大人の夏休み」の空気感が画面いっぱいに広がる青春ロードムービー。思わずクスッと笑えて、観終わったあとに心地よい多幸感に包まれる一作です。
2017年製作の「7月の物語」に続いてブラック監督がフランス国立高等演劇学校の学生たちと制作した作品で、俳優には長編映画初出演の学生たちが起用されています。
あらすじ:
パリの夏の夜、素朴な青年フェリックスは、偶然出会った女性アルマに一目惚れする。しかし翌日、彼女は家族と南仏の田舎町へヴァカンスに旅立ってしまう。彼女を驚かせようと思い立ったフェリックスは、親友のシェリフと、相乗りアプリで知り合った堅物男エドゥアールを巻き込み、おんぼろ車で南仏へと向かう。ハプニングだらけの旅の果てに彼らを待ち受けていた、ひと夏の体験とは?
配信:なし
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『女っ気なし』(2011年 / フランス)
ギヨーム・ブラック監督作品からもう一本。彼の評価を決定づけた初期の作品。
オルトという北フランスの寂れた海辺の町を舞台に、地元の不器用な男とバカンスに訪れた母娘の交流を温かくも切なく描いた至高の小品です。
バカンス特有の「一時的な出会いと必ず訪れる別れ」の気配が全編に漂い、観る者の胸を静かに締め付けます。彼女たちの去ったバルコニーを眺めるヴァンサン・マケ―ニュ、帰りの車の中で涙を流す娘、まさに究極の胸キュン映画。
あらすじ:
フランス北部沿岸の町オルトで暮らす独身男のシルヴァンは、不器用でモテないが心優しい青年。ある夏、彼はアパートを貸し出すため、パリからやってきた母親パトリシアと高校生の娘ジュリエットを迎え入れる。彼女たちと過ごすうちに、シルヴァンは久しぶりの華やいだ時間に胸を躍らせるが、バカンスの終わりとともに切ない現実が近づいていく。
配信:なし
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『マンマ・ミーア!』(2008年 / アメリカ・イギリス)
伝説のポップグループ「ABBA」のヒット曲で構成された絢爛豪華なハリウッド流リゾート・ミュージカル。
ギリシャのパノラマのような青い海と白い壁のロケ地(ギリシャのスコペロス島やピリオン半島)が素晴らしく、観るだけで心がスカッと晴れ渡るような最高峰のエンターテインメント作です。メリル・ストリープをはじめとする豪華キャストが全力で歌い踊ります。明るくポップに、旅気分を100%爆発させたいときにおすすめ。
あらすじ:
ギリシャの小さな島で、小さなホテルを経営する母ドナ(メリル・ストリープ)と暮らすソフィ(アマンダ・セイフライド)は、自身の結婚式を控えていた。父親とヴァージンロードを歩きたいソフィは、母の日記を盗み見し、父親の可能性がある昔の恋人3人を、母に内緒で式に招待してしまう。翌日、かつての恋人たちが同時に島に現れたことで、ドナは大パニックに陥る。
配信:U-NEXT Netflixほか
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『食べて、祈って、恋をして』(2010年 / アメリカ)
ジュリア・ロバーツを主演に迎え、世界的なベストセラー私小説を映画化した本作は、大人の女性に向けた、生き方のヒントが詰まった旅映画。ニューヨークでの日常を捨て、イタリア、インド、バリ島へと1年間の旅(長期バカンス)に出る女性を描きます。
特に前半のイタリア編で見せる、パスタやピザを美味しそうに頬張る姿は「人生を味わうこと」の楽しさを教えてくれます。
あらすじ:
ジャーナリストとして働き、結婚もして一見順風満帆な人生を送っていたエリザベス(ジュリア・ロバーツ)。しかし、心の中に満たされない思いを抱えていた彼女は、泥沼の離婚を経て、全てをリセットするために1年間の海外へ旅立つ。イタリアで食の快楽に目覚め、インドで精神を清め、最後に訪れたバリ島で、彼女は予期せぬ新しい恋と出会う。
配信:U-NEXT、Amazon Prime Video他
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『気狂いピエロ』(1965年 / フランス・イタリア)

(C)1965 STUDIOCANAL / SOCIETE NOUVELLE DE CINEMATOGRAPHIE / DINO DE LAURENTIS CINEMATOGRAPHICA, S.P.A. (ROME). ALL RIGHTS
ヌーヴェルヴァーグ(1950年代末に始まったフランスの映画運動)の巨匠、ジャン=リュック・ゴダール監督の代表作。パリの退屈な日常から抜け出した男女が、南仏の眩しい海岸線へと向かう究極の逃避行(危険なバカンス)が描かれます。原色を多用した美しい色彩と、主演のジャン=ポール・ベルモンドとアンナ・カリーナの退廃的な魅力が光る、映画史に輝く傑作。
「50周年2Kレストア決定版」が一部劇場で公開中。
あらすじ:
富裕層の妻との退屈な結婚生活に嫌気がさしていたフェルディナン(ジャン=ポール・ベルモンド)は、かつての恋人マリアンヌ(アンナ・カリーナ)と再会し、すべてを捨てて彼女と逃亡する。マリアンヌが関わっていたギャングのトラブルに巻き込まれながらも、2人は南仏の海辺へとたどり着き、自給自足の自由な生活を始める。しかし、次第に2人の心はすれ違っていき……。
配信:U-NEXT他
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『ポルトガル、夏の終わり』(2019年 / フランス・ポルトガル)
名優イザベル・ユペールが主演を務め、ポルトガルの世界遺産の町シントラを舞台に大人のほろ苦い人間模様が描かれています。ヨーロッパの避暑地独特の、クラシカルでどこか哀愁を帯びた「夏の終わり」の雰囲気が美しく、家族の複雑な感情が繊細にスケッチされています。
シントラの山頂での世にも美しいエンディングを主人公たちと共に是非体感してください。
あらすじ:
フランスの大女優フランキー(イザベル・ユペール)は、自らの余命が長くないことを悟り、ある計画を胸に、一族をポルトガルの高級リゾート地シントラに呼び寄せる。夫、元夫、子供たち、そして親友。美しい緑と古城に囲まれた町で、それぞれに秘密や悩みを抱える家族たちの本音が、バカンスの終わりとともに静かに交錯していく。
配信:U-NEXT他
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『君の名前で僕を呼んで』(2017年 / イタリア・フランス・アメリカ等)
1980年代の北イタリアの眩しい夏を背景に、17歳の少年と24歳の大学院生が織りなす生涯忘れられない初恋を描いたルカ・グァダニーノ監督による美しくも儚いラブストーリー。
陽光にきらめく果樹園、冷たい川の水、自転車でのサイクリングなど、五感を刺激する北イタリアのリゾート描写とティモシー・シャラメの瑞々しい演技が絶賛されました。
あらすじ
1983年夏、北イタリアのヴィラで家族と夏休みを過ごす17歳のエリオのもとに、教授である父の助手として24歳の大学院生オリヴァーがやってくる。自信に満ちたオリヴァーに最初は反発していたエリオだったが、ともに音楽や読書、水泳を楽しみながら時間を共有するうち、互いに激しい恋心を抱くようになっていく。
配信:U-NEXT、Amazon Prime Video他
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『aftersun/アフターサン』(2022年 / イギリス・アメリカ)
新鋭シャーロット・ウェルズ監督が自身の体験をもとに描き、世界中の映画賞を席巻した感動作。11歳の少女が若い父親とトルコのリゾート地で過ごした「最後の夏休み」を、20年後に当時の父と同じ年齢になった彼女の記憶とホームビデオ映像を辿りながら再構築していきます。光あふれるリゾート地と、その裏側に潜む切なさが胸に残る作品です。
【関連記事】『aftersun/アフターサン』レビュー記事はこちら☟
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あらすじ
1990年代後半、11歳の少女ソフィは、離れて暮らす31歳の若い父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地へバカンスにやってくる。バスでトルコ沿岸の市内ツアーに出かけた以外は近場の海やホテルのプールで泳ぎ、ホテルのビュッフェで食事を摂り、ゲーム機やビリヤードに勤しむ毎日。この時間がずっと続いてほしいと願った日々。しかし、幼いソフィには見えていなかった父親の抱える孤独や苦悩が、あの日々の記憶の隙間から少しずつ浮かび上がってくる。
配信:U-NEXT、Amazon Prime Video他
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『お!バカんす家族』(2015年 / アメリカ)

(C)2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
名作コメディ『ナショナル・ランプーン/ホリデーロード4000キロ』の精神を受け継ぐ爆笑ロードムービー。家族の絆を取り戻すために車でテーマパークを目指す一家が、行く先々で想像を絶する災難に巻き込まれます。良き家庭人であるように見えたクリスティーナ・アップルゲイトのイケイケな大学時代の過去と、それを証明するための悪戦苦闘ぶりがすさまじい!
下ネタやブラックユーモア満載で、とにかく深く考えずに笑ってスッキリしたいときに最適なバカンス映画です。
あらすじ
格安航空会社のパイロットとして働くラスティは、マンネリ化した家族関係を修復するため、一家で大陸横断ロードトリップを企てる。目的地は、自身が幼い頃に家族と訪れた思い出のテーマパーク「ワリー・ワールド」。しかし、借りてきた謎多き最新型レンタカーのトラブルを皮切りに、立ち寄る先々で最悪のハプニングが連続して発生する。
配信:U-NEXT他
『簪』(1941年/日本)
日本映画からは、名匠・清水宏の作品を。
映画評論家の上野昻志がかつて「ヌーヴェル・ヴァーグは、1950年代末のフランスではなく1930年代の日本の清水宏によって始まっていたのではないか」と書いたように、清水宏は、エリック・ロメールヤジャック・ロジエの作品を彷彿とさせるような、瑞々しいバカンス映画をいくつか撮っています。『簪』はひと夏を温泉宿で過ごす人々を描いた偶像劇。人々の暖かな交流が描かれますが、夏が終わると散り散りになる様が深い哀愁を感じさせます。
【関連記事】『簪』のレビュー記事はこちら☟
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あらすじ
学者先生、若夫婦、老人とその孫たち、戦傷帰還兵など、ひと夏を温泉宿で過ごす湯治客。個性豊かな人々の間にはトラブルもありつつも、ある種の一体感で結ばれていました。そんな折、戦傷兵の納村が入浴中、湯舟に落ちていた簪で足を怪我してしまい、簪の持ち主、恵美(田中絹代)が責任を感じて東京から詫びにやってきます。湯治客は彼女を温かく迎え、恵美は妾という自分の境遇から脱するため東京には戻らない決心をします。退屈だけれど心穏やかな日々。ですが、いつしか夏も終わろうとしていました。
配信:TSUTAYA DISCASの宅配DVDレンタルを利用
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『バカンスは始まったばかり』(2026年 / 日本)

(C)ENBUゼミナール
最後は最新の日本産バカンス映画を。『違う惑星の変な恋人』や『代々木ジョニーの憂鬱な放課後』などで知られる木村聡志監督が手がける長編群像劇。
ジャック・ロジエやエリック・ロメールといったフランスのクラシックなバカンス映画の系譜を感じさせつつ、海辺の街と「詩の教室」を舞台に、男女のすれ違う恋模様を独自のユーモアと会話劇で涼しげに描いています。 終盤のダンスコンテストでのタランティーノをはじめとする映画のパロディに爆笑。
ただいま、全国の劇場で順次公開中。
あらすじ
夏の始まり。3年連れ添った夫と離婚したばかりの優香は、親友の詩菜とその恋人・太宰とともに海辺の町へバカンスに訪れる。実は太宰と優香はかつて交際していた。太宰は優香を軽くくどくが、優香にはその気はない。一方、詩菜は街で暮らす詩人の天馬に惹かれ始めており、海街の穏やかな風の中でこんがらがった恋愛模様が展開していく。
映画『バカンスは始まったばかり』公式サイト
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