音声配信メディア「ポッドキャスト」で、島根、鳥取両県の高齢女性が自らの人生を振り返るユニークな番組がある。最高齢102歳の女性が登場する「おばあさんラジオ」(通称・おばラジ)だ。インタビュアーは30歳代の男女4人。「自分たちがおじいちゃん、おばあちゃんになるまでやりたい」と番組づくりに込める思いとは――。(門脇統悟)
「自分たちがおじいちゃん、おばあちゃんになるまで話を聞き続けたい」と話す(左から)池亀さん夫妻、しのださん、松本さん(松江市で)=一両編成提供
「今の若い人は家事が大変だと言うけど、うちの母親に比べたら、話になりませんわ」「戦後、くず米の粉から小麦粉に替わった団子汁の団子は表面がスベスベしていて、おいしかった」――。声の主は、島根県東部で暮らす102歳のますよさん。記憶を紡ぎながら発する一つ一つの言葉には喜怒哀楽がにじみ、人生の場面が垣間見える。
おばあさんラジオの収録風景。マイクに向かうのは最高齢102歳のますよさん(手前)
制作を手がけるのは、松江市を拠点に様々な事業を展開する「一両編成」。代表の池亀桃子さん(32)、夫の雅人さん(32)、池亀さんの友人のしのだまなこさん(32)、松本渚さん(33)の4人が山陰のおばあさんたちを訪ね、幼少期の生活や就職、恋愛、結婚、子育てなど戦中、戦後を生き抜いた人生のページをめくる。
契機は4年前。池亀さんは勤務先の放送局から転職したのを機に、かつて勤めていた松江市に移り住んだ。鳥取県西部の実家にいる祖母と話す機会が増え、ふと思ったという。「祖母にもおばあさんになるまでの長い人生があったんだと。どんなふうに歩んできたのかを知りたくなって」
2024年5月、自身の祖母から始まったおばラジ。これまでに80歳代以上の15人から話を聞いた。ますよさんに至っては2度自宅に足を運び、収録時間は約5時間にも及んだ。
聞きたいことを聞くのではなく、相手が話したいことをどう引き出すかを心がける。すると、一つの記憶が別の記憶を呼び起こし、どんどんつながっていく。「どのおばあさんも、ありのままの自分を肯定的に受け入れている。生きるための力とは何なのかを教わった」
今も、嫁ぎ先の菓子店でせんべいづくりに励む鳥取県東部のまちこさん(84)は「歌はいいですよ」と、長年楽しんでいたコーラス活動を懐かしむ。運動が得意だった島根県中部のようこさん(81)は、地区の運動会を振り返り、「夫婦でやる二人三脚なんかね、敵がいなかった」とユーモアたっぷりに語る。
おばラジを機に、家財の片付けなどを行う「実家じまい」の事業も新しく始めた。一両編成の4人は「ものがない時代に生まれた人にとっては、もったいない気持ちが強い。手放すにしても、一度しっかり話を聞くことから始めたい」と口をそろえる。
「ゆっくりでも目指す場所へ確実に送り届ける各駅停車のように」との思いから名付けた「一両編成」。池亀さんは「苦労や感謝の思いを誰かに聞いてほしい、誰かに伝えたいというDNAが人にはある。そんなおばあさんたちの話をこれからも聞き続けたい」と話す。
おばラジは、世界最大級の音楽ストリーミングサービス「Spotify」で。
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