私はアメリカからイギリスに移住したが、熱波への備えができていなかった。Courtesy of the authorエアコンはアメリカの多くの地域では一般的だが、イギリスではほとんど普及していない。学校、住宅、公共サービスは熱波の際に機能不全に陥る。極端な気温下では、日常生活が驚くほど困難になる。
イギリスに猛烈な熱波がやってくることは、誰もが事前に知っていた。気温が最高で36度にまで達するという警告が、あらかじめ出されていたからだ。
しかし、実際に火曜日に熱波が襲来し、水曜日、木曜日と日が経つにつれて状況が悪化して初めて、私たちはどれほど凄まじい暑さになるかを身をもって痛感することになった。
15年前にアメリカのメリーランド州からウェールズに移住し、それ以前はルイジアナ州(いずれも夏は非常に暑い地域)にも住んでいた私なら、暑さへの対処法など心得ていると思っていた。
だが、今の私はまったく対処できていないし、周りの誰もが途方に暮れている。イギリスという国は、世界の他の地域のように、このレベルの暑さに対する備えが根本的にできていないのだ。
自宅にエアコンがない:これまでの常識が通用しないイギリスの住宅
アメリカではどこの地域でも高い気温が観測されるが、大抵の場所ではそれに対する明確な対処法が確立されており、ある程度涼しく快適に過ごすためのインフラ(設備)が整っている。
アメリカ南部で過ごした夏の間、外で汗だくになりながら這うようにして室内に入り、エアコンの吹き出し口のすぐそばに倒れ込んだことを今でもよく覚えている。天井のシーリングファンの真下であれば、なお最高だった。
一方で、ここイギリスの住宅は、歴史的にエアコンを必要としてこなかった。これほどまでに暑くなることなど、かつて一度もなかったからだ。実際、この木曜日は観測史上最も暑い「6月の一日」となった。一応、据え置き型のエアコンなども販売されてはいるが、この熱波に乗じて価格が高騰しており、中には数百ポンド(数万円)も値上がりしているケースもある。
みんなゾンビのよう:眠れない夜とインフラの麻痺
エアコンのない生活は日中も過酷だが、夜になると本当に耐え難いものになる。寝室は文字通りサウナ状態だ。家族全員がまったく眠れず、翌日はゾンビのようにぐったりとした様子で、不機嫌そうに街を歩き回っている。
スーパーマーケットなど、まともにエアコンが効いている一部の店舗には人々が文字通り殺到しており、涼を求めてただ店内をうろついたり、立ち尽くしたりしている。逆に、エアコンのない個人商店などは軒並みシャッターを下ろしている。この猛暑の中で、従業員や顧客を危険にさらしてまで営業を続けるわけにはいかないからだ。
本来なら7月中旬まで開校しているはずのほとんどの学校が、水曜日と木曜日に急きょ休校となった。そのため、私のような親たちは、家で仕事をこなしながら、エネルギーの有り余る子どもたちをどうやって退屈させずに過ごさせるかという難題に頭を悩ませることになった。イギリスの学校の建物はどれも古く、たとえ照明を消し、扇風機を回し、窓を開け放ったとしても、この暑さでは子どもたちも教師も算数の授業に集中することなど不可能だっただろう。
今週の我が家では、テレビとテレビゲームが最大の味方になってくれている。仕事をなんとか終わらせるため、必死になって子どもたちの気をそらしているのだ。コロナ禍の隔離生活を思い出さずにはいられない。
電車も運休、プールは閉鎖
アメリカでは多くの住宅地に共同プールがあり、夏になれば手軽に涼をとることができる。私がアメリカにいた頃も、毎夏をプールサイドで過ごしたものだ。しかし、いま私が住むイギリスの地域の近くには、屋外プールがひとつもない。
火曜日に少しでも涼しい場所を求めて、屋内プールに泳ぎに行こうとした。しかし、現地のスタッフから「ライフガードが監視台に座っている場所の気温が42度に達してしまったため、危険と判断しプールは閉鎖中です」と告げられてしまった。
外に目を向ければ、線路の温度が上がりすぎて歪む危険があるため、列車は運休している。誰もが、本当に例外なく誰もが、限界を超える暑さに苦しんでいるのだ。
