鳥取県立美術館(鳥取県倉吉市)で、「マンガを拓ひらく 谷口ジロー」が7月11日から開催されます。
緻密な描線やストーリーテリングで、世界中の読者を魅了する漫画家・谷口ジロー(1947-2017/鳥取県出身)。日本では、ドラマ化された人気作品『孤独のグルメ』でその名を知る人も多いでしょう。しかし、彼の創作の魅力は、決してこの作品のみに集約されうるものではありません。
デビューから約50年にわたる漫画家としてのキャリアの中で、谷口は、非常に多岐にわたる題材を描いてきました。信念をぶつけ合う男たちのドラマ、厳しい自然と対峙する人間の姿、動物たちのいのちの手触り、さらには時代の「思想」そのものといった抽象的な事柄、そして「歩く」「食べる」といった日々の何気ない営みなど、取り上げてきたテーマの幅広さには驚くべきものがあります。
それは、限られた領域にとどまることなく、常に好奇心と探究心をもって新しいマンガ表現を模索し、卓越した描写力でそれを具現化し続けた――「マンガ」の可能性を生涯かけて切り拓き続けた姿勢のあらわれでもありました。
本展では、そんな「開拓者」としての漫画家・谷口ジローの軌跡を辿ります。時を経ても色褪せることのない谷口の作品世界を、ぜひ体感してみてはいかがでしょうか。
「ヴェネツィア」©PAPIER/Jiro TANIGUCHI
「孤独のグルメ」(原作:久住昌之)©PAPIER/Jiro TANIGUCHI
マンガを拓く 谷口ジロー
会場:鳥取県立美術館 3F企画展示室(鳥取県倉吉市駄経寺町2-3-12)
会期:2026年7月11日(土)~8月30日(日)
開館時間:9:00~17:00(入館は閉館30分前まで)
※8月8日(土)、9日(日)、22日(土)は20時まで開館
休館日:毎週月曜日(7月20日、8月10日は開館)、7月21日(火)
観覧料:一般 1,500円、学生 950円、高校生 500円、小中学生 300円
※未就学児、障がい者・難病患者・要介護者等及びその介護者は無料
※企画展のチケットで当日コレクション展も観覧可能
アクセス:※駐車場あり(110台)
JR倉吉駅よりバスで約10分、「県立美術館前」下車
鳥取砂丘コナン空港からバスで約45分
米子道湯原ICから車で約50分
詳細は、鳥取県立美術館公式サイトまで。
展覧会のみどころ
「ふらり。」©PAPIER/Jiro TANIGUCHI
本展では、展示室内を4章で構成。谷口ジローの世界観や熱きその試み、日本のマンガメディアの変遷、そして谷口が描く故郷鳥取にも触れていきます。
◎ポイント1:圧巻! 約50年にわたる名シーンが巨大壁面に
膨大な作品群から象徴的なシーンを厳選。約50年の壮大な軌跡を一望し、開拓者としての情熱に触れてみてください。
◎ポイント2:『孤独のグルメ』は入口にすぎない!
圧倒的なテーマの幅広さを体感し、自分だけの推し作品、推しの一コマをぜひ見つけてみてください。
◎ポイント3:一枚の原画から漂う「空気感」
風を感じたり、いい匂いがするような臨場感! 緻密な描線とストーリーテリングで、あなたを作品世界へ誘います。
◎ポイント4:「観る」から「読む」へ!
エピローグには読書コーナーが用意されます。 展示で心に残った原画をきっかけに、一冊の物語と向き合う贅沢なひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
展覧会構成
「歩くひと」©PAPIER/Jiro TANIGUCHI
【1章】 谷口ジローが拓いた世界/何でもマンガにしてみたい!
イントロダクションとして、谷口ジローが「拓いた」マンガ表現の世界を体感できる展示内容が用意されます。
【2章】 谷口ジローの軌跡/ひとつの線から世界へ
戦後の日本マンガが経験した6つの時代を追いながら、貴重な資料や関係者の証言とともに谷口の生涯を辿ります。
【3章】 谷口ジローの試み/描く技と眼差しから
作品を構成する「技」、その源となる谷口ジローの「眼差し」の数々にスポットを当てます。谷口が何を考えながら、どんなふうにマンガを描いていたのか。その試みの数々を感じ取ってみてはいかがでしょうか。
【4章】 描かれた鳥取から/「記憶の風景」につながる線
漫画家・谷口ジローが世界へと羽ばたいていく過程で特別な存在となった場所である故郷・鳥取を舞台とした作品群が紹介されます。谷口が自身のルーツから紡ぎ出した物語の世界を体感できるでしょう。
【特別展示コーナー】
谷口ジローのマンガを基に制作された2026年秋公開予定の映画「遥かな町へ」のメイキング映像が「特別展示」として披露されます。
主な展示作品の紹介
「光年の森」©PAPIER/Jiro TANIGUCHI
「青の戦士 -BLUE FIGHTER-」(原作:狩撫麻礼)©PAPIER/Jiro TANIGUCHI
「遥かな町へ」©PAPIER/Jiro TANIGUCHI
「神々の山嶺」(原作:夢枕獏)©PAPIER/Jiro TANIGUCHI
「神々の山嶺」(原作:夢枕獏)©PAPIER/Jiro TANIGUCHI
アーティストプロフィール
谷口ジロー(1947-2017)
鳥取県出身の漫画家。石川球太のアシスタントを経て、1971年漫画誌デビュー。「事件屋稼業」、「『坊っちゃん』の時代」(いずれも関川夏央との共作)、「父の暦」、「遥かな町へ」、「神々の山嶺」(原作:夢枕獏)など多様な作品を発表。「孤独のグルメ」(原作:久住昌之)はドラマ化されたことでも知られている。海外で非常に評価が高く、19の言語に翻訳出版され、映画、ドラマ、演劇にも展開されている。1992年「犬を飼う」で第37回小学館漫画賞審査委員特別賞を受賞。他にも手塚治虫文化賞マンガ大賞、アングレーム国際漫画祭最優秀脚本賞や最優秀美術賞なども受賞。2011年にはフランス政府芸術文化勲章シュヴァリエ章受章。2017年逝去。2026年秋に映画「遥かな町へ」が公開、ベルギーで回顧展が開催される。2027年にはアメリカでのグループ展に出品予定。
世界中の読者を虜にする谷口ジローの唯一無二の表現力。その原画が放つ圧倒的な「空気感」は、印刷物では味わえない臨場感に満ちています。故郷・鳥取で開催される本展は、初期のハードボイルドから、自然、動物、そして何気ない日常の営みまで、ジャンルの壁を越えて走り続けた開拓者の魂に触れる貴重な機会となります。緻密に積み重ねられた一線の集積が描き出す、豊潤な創造の世界を五感で受け止めてみてはいかがでしょうか。(美術展ナビ)
