
岐阜県の宿泊価格は、ひとつの平均値で語れる市場ではない。飛騨の国際観光地、飛騨川沿いの温泉地、季節でお客様が集中する小規模市場、そして濃尾平野の業務需要帯——同じ県内でありながら、価格の水準も、季節の動き方も別々である。メトロエンジンリサーチの月次データで岐阜県16市町村の推定成約ADR(平均客室単価)を2025年9月から2026年11月まで並べると、紅葉期(10〜11月)に8月比で+28.0%まで上がる市がある一方、逆に−15.6%と夏をピークにする市が同居していた。本稿では県内の宿泊市場を4つの層に分け、価格の階層と、秋に上がらない「空いている価格帯」がどこにあるかを整理する。
本記事における指標の定義
ADR(平均客室単価):各施設がOTA等の予約サイト上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
掲載価格:予約サイト上に掲載されている全プランの平均(素泊まりから2食付きまでを含む、2名1室利用時の1室あたり料金・税込)。上記のADRとは基準が異なるため、本記事では常に区別して表記します。
基準(basis)の違い:2026年7月以前は確定した履歴に基づく検証済み基準、2026年8月以降は調査時点の掲載状況から算出した推定基準です。本記事の「8月比」は両方とも後者どうしの比較のため基準が揃っています。前年同期比は基準が揃わないため、単一基準で通して集計できる掲載価格の側で示します。
データ出典:メトロエンジンリサーチ(集計対象期間 2025年9月〜2026年11月)
Key Takeaways
— 岐阜県の紅葉期(2026年10〜11月平均)ADRは14,614円で集計期間内の最高水準。8月比+14.5%、掲載価格の前年同期比は+10.0%。
— 最大市場の高山市はADR22,160円・8月比+28.0%と県内最大の上げ幅。掲載施設数281施設、ADR算定施設数129施設。
— 郡上市は8月比−15.6%で夏がピーク。飛騨市−9.2%、揖斐川町−13.5%と、紅葉期に下がる市が同じ県内に同居する。
— 掲載価格と推定成約ADRの倍率は、業務需要帯で1.5〜1.6倍、温泉地・観光地で1.8〜2.6倍。売られている商品の違いが倍率に出る。
— 県内の最高/最低市町村の開きは2.78倍。長野県2.83倍とほぼ同型で、石川県1.92倍・愛知県1.84倍とは構造が異なる。
岐阜県全体のADRは紅葉期に年間最高水準へ
まず県全体の輪郭を押さえておきたい。岐阜県のADRは2026年10月に14,572円、11月に14,655円と、集計期間内で最も高い水準に達する見通しである。2026年8月の12,764円と比べると+14.6%、同じ基準で比較できる範囲でも紅葉期が年間のピークを形成している。掲載価格の側で前年同期と並べると、2025年10〜11月の平均27,955円に対し2026年同期は30,761円で+10.0%となり、二桁の伸びが続いていることが読み取れる。
季節の形そのものは例年と大きく変わらない。下のグラフは県全体のADRを年ごとに重ねたものだが、2月と6月に谷、8月と10〜11月に山という二山型が3年分きれいに揃う。梅雨明け前の6月に9,623円まで下がり、そこから紅葉期にかけて5,000円近く積み上がる——この振れ幅が岐阜県の宿泊市場の基本リズムである。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
4つの層で見る価格の階層——最上位2万円台、業務需要帯は1万円前後
県平均の裏側には、はっきりした階層がある。紅葉期(10〜11月平均)のADRを市町村別に並べると、上位は白川村22,450円、高山市22,160円、下呂市20,336円と2万円台に集まり、中位に中津川市14,898円、関市13,107円、岐阜市12,253円が続き、下位は大垣市9,744円、美濃加茂市9,912円、多治見市10,000円と1万円前後で並ぶ。上位と下位の差は約2.3倍である。
この並びは、単に「観光地は高く、都市部は安い」という話ではない。それぞれの層が別の需要と別の商品設計を持っているため、季節に対する反応の仕方が違う。この4層構造がどのように形成されているかは、岐阜県ホテル市場2026 — 白川郷・高山・下呂と岐阜市業務帯、県内で2倍開く4層構造でも整理している。以下、4層に分けて見ていく。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
表1:岐阜県16市町村の紅葉期ADR・掲載価格と8月比(2026年10〜11月平均)
市町村
施設数
(10月)
ADR
算定施設数
紅葉期ADR
(10-11月平均)
8月比
掲載価格
(10-11月平均)
掲載
8月比
掲載
前年同期比
① 国際観光地 訪日比率の高い飛騨エリア
高山市281129¥22,160+28.0%¥40,782+15.4%+13.7%
② 国内温泉地 食事付き旅館が主体
下呂市6044¥20,336+19.0%¥41,928+1.3%+2.4%
中津川市3111¥14,898+24.2%¥39,200+9.2%+14.1%
③ 季節集中型・小規模市場 施設数が少なく個別施設が平均を動かす
白川村168¥22,450+11.8%¥40,910+7.4%-9.0%
郡上市7123¥11,632-15.6%¥26,488-6.0%+15.3%
揖斐川町42¥12,050-13.5%¥53,207-5.0%-10.8%
飛騨市2713¥10,381-9.2%¥27,168-3.9%+10.0%
恵那市2714¥10,888+8.5%¥21,798-3.9%+15.3%
関市84¥13,107+15.7%¥28,018+3.1%+1.9%
④ 業務需要帯 平日出張需要が下支え
岐阜市5132¥12,253+22.1%¥18,656+24.4%+10.2%
大垣市1511¥9,744-5.0%¥15,425+4.7%-1.8%
各務原市95¥12,434+68.8%¥13,870+23.9%-20.2%
可児市76¥10,046+40.9%¥15,062+12.9%+3.7%
美濃加茂市87¥9,912+10.1%¥15,958+3.4%+17.4%
多治見市86¥10,000+4.9%¥15,722+1.6%+11.8%
羽島市138¥8,081+23.6%¥13,236+4.6%+11.1%
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(掲載施設数は2026年10月時点)
サンプル数についての注記:ADRは業態が検証済みのカテゴリ(ビジネス・シティ・リゾート・旅館・カプセル)に属する施設から算出しており、「ADR算定施設数」がその母数です。揖斐川町は算定施設数が1〜2施設、各務原市の11月は4施設と、系列中央値を下回る薄いカバレッジの月を含みます。これらの市町村は1〜2施設の販売状況が平均を大きく動かすため、水準そのものではなく方向性の参考として扱ってください。関市(4施設)も同様です。
① 高山市——訪日需要が支える最大市場、紅葉期は8月比+28.0%
高山市は掲載施設数281施設(2026年10月時点)と県内で群を抜いて大きい。ADRは2026年8月の17,312円から10月22,923円、11月21,398円へ上がり、10〜11月平均では8月比+28.0%となる。掲載価格でも35,351円から40,782円へ+15.4%、前年同期比でも+13.7%と、水準と伸びの両方で県内トップである。
背景には訪日需要の厚みがある。高山市の発表によれば、2025年の観光入り込み客数は479万5千人、外国人宿泊者数は97万8,312人といずれも2005年の市町村合併以降で最多となった。岐阜県全体でも2024年の外国人延べ宿泊者数は230万5,600人泊で過去最高、全国11位に位置している。秋の飛騨は欧米豪からの長期滞在と国内の紅葉需要が重なる時期であり、この二重の需要が価格の段差を作っている。
注目したいのは、10月(22,923円)が11月(21,398円)を上回る点である。飛騨エリアの紅葉は標高帯によって時期が分かれ、乗鞍・平湯といった高標高側が10月中旬、高山市街が11月上旬に見頃を迎える。10月に価格の頂点が来るのは、高標高側の紅葉と秋の連休、そして10月9〜10日の高山祭(秋の八幡祭)が同じ月に集中するためと考えられる。なお高山エリアには2026年9月に283室規模の新規開業が控えており、この高単価帯に供給が入る構図についてはヒルトン高山リゾート9月14日開業 — 283室が入る飛騨の高単価帯で詳しく分析している。
② 下呂市・中津川市——食事付き旅館が主体、掲載価格とADRの倍率が開く層
下呂市は掲載施設数60施設、ADRは8月17,088円から紅葉期20,336円へ+19.0%。掲載価格の側では41,928円と県内最高水準にあるが、8月比では+1.3%、前年同期比でも+2.4%と動きが小さい。ADRは二桁上昇し、掲載価格はほぼ横ばい——この差は、下呂の宿が年間を通じて2食付きの高価格プランを掲載し続けており、季節による変動が実際に販売される価格帯の側に現れることを示している。
中津川市も同じ構造で、ADRは8月12,000円から紅葉期14,898円へ+24.2%。掲載価格39,200円に対しADRは14,898円で、倍率は2.63倍と県内で最も開いている。馬籠宿・付知峡・恵那峡といった秋の集客資源を抱え、宿は旅館・古民家宿が中心である。
掲載価格とADRの倍率は、その市場でどんな商品が売られているかを映す指標として使える。下の表のとおり、業務需要帯の市は1.5〜1.6倍に収まるのに対し、温泉地・観光地では1.8〜2.6倍まで広がる。素泊まり中心の市場では掲載価格と成約水準が近く、2食付きが主体の市場では掲載の高価格プランが平均を押し上げるためである。
表2:掲載価格と推定成約ADRの倍率(2026年10〜11月平均・層別)
市町村
掲載価格
(10-11月平均・税込)
ADR
(推定成約・税抜相当)
倍率
層
下呂市¥41,928¥20,3362.06倍国内温泉地
中津川市¥39,200¥14,8982.63倍国内温泉地
郡上市¥26,488¥11,6322.28倍季節集中型
白川村¥40,910¥22,4501.82倍季節集中型
高山市¥40,782¥22,1601.84倍国際観光地
岐阜市¥18,656¥12,2531.52倍業務需要帯
美濃加茂市¥15,958¥9,9121.61倍業務需要帯
大垣市¥15,425¥9,7441.58倍業務需要帯
可児市¥15,062¥10,0461.50倍業務需要帯
羽島市¥13,236¥8,0811.64倍業務需要帯
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(2026年10〜11月平均)
③ 季節集中型の小規模市場——郡上市は夏がピーク、紅葉期は8月比−15.6%
3つ目の層は、施設数が少なく、特定の季節にお客様が集中する市場である。ここで最も特徴的なのが郡上市だ。ADRは2026年8月に13,782円と年内の高水準を記録した後、10月11,235円、11月12,028円へ下がり、紅葉期は8月比−15.6%となる。掲載価格でも8月28,189円に対し紅葉期26,488円で−6.0%と、方向は一致している。
郡上市は8月に郡上おどりの徹夜おどりがあり、ひるがの高原・郡上八幡の避暑需要も重なる。県内で唯一、明確に夏をピークとする価格カーブを描いている。一方で前年同期比では掲載価格が+15.3%と伸びており、秋の水準そのものは前年より上がっている。「8月比では下がるが、前年比では上がっている」——この二つは矛盾しない。
飛騨市(8月比−9.2%)、揖斐川町(同−13.5%)も紅葉期に下がる側に並ぶ。ただし揖斐川町はADR算定施設数が1〜2施設と極めて薄く、掲載施設数も4施設である。1軒の販売状況で数値が大きく振れるため、傾向として読む以上の解釈は避けたい。恵那市は+8.5%、関市は+15.7%と上がる側だが、いずれも算定施設数は14施設・4施設と限られる。
白川村は施設数16施設ながらADR22,450円と県内最高水準で、8月比+11.8%。合掌造り集落という代替の利かない資源を持つ市場で、算定施設数8施設という規模を考えると、少数の宿が高い水準を維持している構図が見える。掲載価格の前年同期比は−9.0%だが、これも母数の小ささを踏まえて読む必要がある。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
④ 業務需要帯——岐阜市は+22.1%、大垣市・美濃加茂市は動きが小さい
濃尾平野側の業務需要帯は、県内で最も価格が落ち着いている層である。紅葉期のADRは岐阜市12,253円、各務原市12,434円、可児市10,046円、美濃加茂市9,912円、大垣市9,744円、多治見市10,000円、羽島市8,081円。上位の観光地との差は2倍以上ある。
この層の中でも動きは一様ではない。岐阜市は8月比+22.1%、掲載価格でも+24.4%と観光地並みに上がる。岐阜市は市街地の宿が観光需要も取り込む位置にあり、掲載施設数も51施設と業務需要帯では最大である。前年同期比も掲載価格で+10.2%と伸びている。
対して大垣市は8月比でADR−5.0%、掲載価格+4.7%と、ほぼ横ばいの範囲にとどまる。美濃加茂市も+10.1%(掲載価格+3.4%)、多治見市+4.9%(同+1.6%)と、動きは限定的だ。平日の出張需要が通年で下支えしているぶん、季節による上下が小さくなる。
各務原市(+68.8%)と可児市(+40.9%)は数字上の伸びが大きいが、ADR算定施設数が5〜6施設と少なく、各務原市の11月は4施設まで下がる。この2市の上昇率は、少数施設の販売構成が変わったことによる振れを含んでいる可能性が高く、水準そのものを他市と横並びで比較するのは避けたい。
地図で見る施設分布とADRの重なり
下の地図は、県内16市町村の掲載施設数(円の大きさ)と紅葉期のADR(色)を重ねたものである。円が大きく色の濃い高山市が飛騨エリアの中心にあり、その南に下呂市、西に白川村が続く。一方、濃尾平野側は円が小さく色も薄い。施設が集まっている場所と価格の高い場所が、県北部でほぼ一致している構図が見て取れる。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
供給側——2028年完成予定の120室計画、把握範囲は掲載施設と公開計画に限られる
価格の階層を読むうえで、供給側の動きも押さえておきたい。公開されている建築計画のうち、岐阜県で客室数が確認できるホテル計画は美濃加茂市山手町の1件である。事業者はABホテル、客室数120室、地上8階建て、完成予定は2028年12月とされている。美濃加茂市の現在の掲載施設数は8施設・ADR算定施設数7施設という規模であり、この層に120室が加わる影響は小さくない。同市の紅葉期ADRは9,912円と県内下位にあり、8月比+10.1%と動きも限定的な帯である。中京圏の製造業を背景にした業務需要帯に、新しい受け皿が用意される形になる。
直近の開業も飛騨側に寄っている。2025年以降に予約サイト上で稼働が確認できた岐阜県の施設には、スーパーホテル岐阜・中津川天然温泉(142室)、ホテルアマネク飛騨高山(153室)、KOKO HOTEL 飛騨高山(139室)、TAOYA下呂(99室)、ユトリアリゾート飛騨高山(104室)、東横イン岐阜(207室)などがある。100室超の案件が高山・下呂・中津川・岐阜市に集中しており、価格の上位層と業務需要帯の双方に供給が入っている。飛騨側の高単価帯で既存施設の採算がどう変わるかは、飛騨高山周遊圏のホテル投資余地が背景を掘り下げている。
供給データの把握範囲について:開業実績は主要予約サイト上で稼働が確認できた施設、計画案件は公開されている建築計画に基づくものであり、いずれも全数調査ではありません。開業実績は予約サイトへの掲載が開業の数ヶ月前から始まるため、直近以降の月は今後の掲載により件数が増える可能性があります。計画案件は確認申請ベースであり、今後の申請追加により件数・客室数は増加する見込みで、現時点での確定パイプラインの下限値として参照してください。
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(予約サイト掲載確認ベース)/国土交通省「建築物動態統計調査」
秋に上がらない「空いている価格帯」はどこか
ここまでの整理を、宿泊需要を持つ側の視点で裏返してみたい。紅葉期に価格が上がりにくい帯は、県内に3つある。
ひとつは郡上市・飛騨市である。郡上市は8月比−15.6%、飛騨市は同−9.2%と、夏のピークを過ぎて秋に水準が下がる。郡上市は紅葉期の掲載施設数が71施設と県内2位の規模を保っており、選択肢の幅も残る。飛騨市(古川)は高山市から鉄道で15分ほどの距離にありながら、紅葉期ADRは10,381円と高山市の47%の水準である。
ふたつめは大垣市・美濃加茂市・多治見市といった業務需要帯の一部だ。8月比の変動が−5.0%〜+10.1%と小さく、掲載価格ベースでも+1.6%〜+4.7%にとどまる。平日の出張需要が価格を通年で支えている帯であり、週末の観光需要が入っても水準が跳ねにくい。多治見市から名古屋までは快速で30分台、可児市・美濃加茂市は東海環状自動車道で恵那峡・馬籠方面へ接続する。
みっつめは同じ市の中の11月後半である。高山市は10月22,923円に対し11月21,398円と、月単位で見ても10月がピークになっている。県全体では10月14,572円・11月14,655円とほぼ同水準だが、上位層ほど10月に需要が寄る構造が見える。
なお2026年秋は、岐阜県が「楽しすぎるぞ岐阜!割引特典キャンペーン」(2026年9月1日〜2027年2月28日)を実施している。県内のアウトドア施設・宿泊施設・飲食店・土産物店等で店頭の二次元コードを読み取ると、割引やノベルティなどの特典が受けられる仕組みである。宿泊料金そのものを直接動かす制度ではないが、価格の階層が明確な岐阜県では、どの層に滞在するかの選択と組み合わせて考える余地がある。
近隣県と並べる——水準は中部・北陸の上位、開き方は長野県型
ここまで岐阜県の中を見てきたが、この水準と動き方が周辺と比べてどの位置にあるのかも押さえておきたい。中部・北陸の8県について、同じ基準(推定成約ADR・2026年10〜11月平均)で並べたのが下の表である。
表3:中部・北陸8県の紅葉期ADRと8月比(2026年10〜11月平均・推定成約ADR)
県
紅葉期ADR
(10-11月平均)
8月比
掲載施設数
(10月)
ADR
算定施設数
石川県
¥14,689
+25.0%
508
233
岐阜県
¥14,614
+14.5%
690
355
長野県
¥14,163
−0.6%
1927
755
三重県
¥12,827
+2.0%
563
334
福井県
¥12,365
−1.1%
350
202
愛知県
¥12,281
+30.3%
713
474
滋賀県
¥11,607
+1.6%
326
147
富山県
¥11,400
±0.0%
264
160
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(2026年10〜11月平均)
岐阜県の紅葉期ADR14,614円は、石川県14,689円に次ぐ8県中2位である。水準の面では、北陸・中部のなかで上位にあると言ってよい。ただし8月比の上がり方は+14.5%で、石川県(+25.0%)や愛知県(+30.3%)ほど急ではない。8月にすでに一定の水準がある岐阜県と、夏が谷になる県とで、秋の見え方が変わってくるためである。長野県は−0.6%、福井県は−1.1%と、紅葉期でも8月を下回る。
もうひとつ、県内の開き方も並べておきたい。ADR算定施設数が5施設以上ある市町村に限って県内の最高値と最低値を取ると、岐阜県は白川村22,450円に対し羽島市8,081円で2.78倍。同じ基準で長野県は軽井沢町24,128円に対し伊那市8,530円の2.83倍と、ほぼ同じ開き方をしている。一方、石川県は加賀市19,736円に対し白山市10,254円で1.92倍、愛知県は中村区16,089円に対し一宮市8,751円で1.84倍と、開きは2倍に届かない。
つまり岐阜県は、県平均の水準では石川県と並ぶ上位にありながら、県内の価格構造としては長野県に近い。国際観光地・温泉地・小規模市場・業務需要帯が同居し、それぞれが別の需要曲線を持つ県——という点で、岐阜と長野は同じ型に属する。県単位の平均値で語ることの難しさも、この2県で共通している。
まとめ——ひとつの県に4つの価格市場
岐阜県の宿泊市場は、県平均の14,572円(2026年10月)という一点では説明できない。訪日需要で紅葉期に+28.0%動く高山市、掲載価格は横ばいでもADRが+19.0%上がる下呂市、夏をピークに秋は−15.6%となる郡上市、そして季節に対して±5%程度しか動かない大垣市・多治見市——これらは同じ県内にありながら、別々の需要曲線を持つ4つの市場である。
宿を運営する側から見れば、自館がどの層に属するかによって、紅葉期に取れる価格の形は変わる。上位層では10月に需要が寄る構造を前提に、リードタイムの長い予約から段階的に価格を組み立てる余地がある。業務需要帯では通年の下支えが厚いぶん、週末や連休の観光需要を取り込む商品設計にアップサイドが残る。季節集中型の小規模市場では、ピーク期の水準を年間の収益にどう配分するかが設計の中心になる。
供給側では2028年完成予定の120室計画が美濃加茂市に控え、直近では飛騨エリアに100室超の開業が続いている。価格の階層は固定されたものではなく、供給が入る層から順に組み替わっていく。次に県内の価格を読むときは、まずどの層の話をしているかを確認するところから始めたい。
あわせて読みたい
⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事の2026年9月以降のADR・掲載価格は、調査時点で予約サイトに公開されている販売価格に基づく推定であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。現時点で高く設定されている価格が直前の調整で下落する可能性、また新規プランの追加により水準が動く可能性がある点にご留意ください。前年同期比を掲載価格ベースで示しているのは、この推定基準の違いを揃えるためです。
参考資料・出典一覧
■ データソース
岐阜県16市町村および中部・北陸8県の月次ADR・掲載価格は、メトロエンジンリサーチが主要予約サイトの公開販売価格を日次で収集・集計したもの(集計対象期間 2025年9月〜2026年11月、掲載施設数は2026年10月時点)。県内の市町村別集計は施設数加重の中央値、県別集計も同一の定義で算出しています。外国人延べ宿泊者数・観光入込客数は岐阜県および高山市の公表統計、供給計画は公開されている建築計画に基づきます。
■ 試算前提
推定成約ADRは、各施設の最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定値(税抜相当)です。「紅葉期」は2026年10月と11月の単純平均、「8月比」は同一基準(推定基準どうし)での比較を指します。前年同期比は基準が揃わないため、単一基準で通せる掲載価格の側でのみ示しています。倍率は掲載価格÷推定成約ADR。県内の開き(2.78倍等)は、ADR算定施設数が5施設以上の市町村に限って最高値と最低値を取ったものです。
■ 限界・留意点
本記事のADRは実際の会計数値ではなく推定値であり、上場ホテルREITの物件別開示との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%です。揖斐川町・関市・各務原市・可児市のようにADR算定施設数が1〜6施設と薄い市町村は、1〜2施設の販売状況で数値が大きく振れるため、水準ではなく方向性の参考として扱ってください。2026年9月以降は将来日程の掲載価格に基づく推定であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。供給側の把握範囲は主要予約サイトへの掲載と公開建築計画に限られ、全数調査ではありません。
■ 市場データ
■ 政府・自治体統計
■ 自治体キャンペーン・報道
