軍事力を強化する国家、既成政治への支持を失う社会――二つの変化が同時進行

福山 隆

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2026.9.11(金)

ザクセン=アンハルト州議会選挙でトップに躍り出たAfDの共同党首であるアリス・ヴァイデル氏(右)とティノ・クルパラ氏(左)、中央は同州の首相候補ウルリヒ・ジークムント氏(9月7日撮影、写真:ロイター/アフロ)

AfDが圧勝した夜、もう一つのドイツが動いていた

 2026年9月6日、旧東ドイツ地域にあるザクセン=アンハルト州。

 開票が進むにつれ、「ドイツのための選択肢(AfD)」の選挙会場では歓声が大きくなっていった。

 比例配分の基礎となる第2票(政党名での得票数)で、9月8日時点の暫定結果では得票率が43.8%。

 AfDは39議席を獲得し、州議会の第1党に躍り出た。ただし、単独過半数には届かなかった。

 フリードリヒ・メルツ首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)は17.2%にとどまった。

 既成政党を中心に成り立ってきた戦後ドイツ政治の秩序が、大きく揺れた瞬間だった。

 ただし、この選挙結果を「ドイツが右傾化し、再軍備へ向かっている」と見るのは正しくない。

 むしろ、話はその逆である。

 AfDはウクライナへの武器支援に批判的で、ロシアとの関係改善を訴えてきた。

 つまり、ドイツがかつてない規模で軍事力を増強しようとしているその時に、こうした防衛政策を進める既成政党への不信も広がり、ウクライナ支援や対ロ政策で政府と対立するAfDが支持を伸ばしているのである。

 いまドイツでは、二つの大きな変化が同時に進んでいる。

 一つは、軍事面でのドイツの復活である。

 もう一つは、それを進める政治の足元が崩れ始めていることである。

 この二つを同時に見なければ、現在のドイツで何が起きているのかは分からない。

リトアニアに現れたドイツ軍旅団

 ドイツから約1000キロ離れたバルト三国のリトアニアでは、まったく別の光景が広がっている。

 ドイツ連邦軍の戦車や装甲車が走り、兵士たちが訓練を繰り返している。

 ドイツはここに、約4800人の兵士と約200人の文民要員からなる旅団を恒久的に展開しようとしている。

 ドイツ連邦軍が、旅団規模の戦闘部隊を国外に恒久駐留させるのは初めてである。

 しかも、その場所はロシアの飛び地カリーニングラードと、ロシアの同盟国ベラルーシに近いNATO(北大西洋条約機構)東翼だ。

 これは単なる海外派遣ではない。

 ドイツが、NATO東翼の防衛を前線で担う軍隊へと軸足を移していることを象徴している。

 2022年2月24日、ロシアがウクライナへの全面侵攻を開始した。

 その3日後、当時のオラフ・ショルツ首相は連邦議会で「Zeitenwende(時代の転換)」を宣言した。

 この言葉は、いまや現実の軍事力へ変わり始めている。

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