全国高校サッカー選手権県予選特集 シード8校を徹底紹介(1) 大分 きれいごとを捨て勝ちにいく 【大分県】

全国高校サッカー選手権大会への切符は、ただ一枚。10月17日の県予選となる大分県大会開幕を前に、シード8校を紹介する。夏の県王者、連覇を狙う強豪、頂点をうかがう実力校。それぞれが積み重ねてきた時間と最後の冬に懸ける思いに迫る。第1回は夏の県王者として挑む大分。「全国で勝つ」ための再挑戦が始まる。

 夏の県王者に慢心はない。むしろ全国で味わった痛烈な敗戦が、大分を駆り立てている。県高校総体を制して出場した全国高校総体(インターハイ)。1回戦は立正大淞南(島根)との接戦をPK戦の末に制した。しかし2回戦、後に頂点に立つ静岡学園を相手に0―8。全国トップとの距離を、これ以上ないほど鮮明なスコアで突きつけられた。

 岡松克治監督は、その敗戦から目をそらさない。「インターハイに出ること自体は大変なこと。でも、そこを目指しているわけではない。全国に出て、どれだけ勝てるかが大事」。全国出場を勲章にするつもりはない。静岡学園との試合は、自分たちに何が足りないのかを知るための授業となった。

 今の3年生には、大分中学時代に全国3位を経験した選手が多い。それでも岡松監督は過去の肩書を評価基準にはしない。「中学で全国3位になったから、そのまま高校でも強いチームになれるかといえば絶対にそんなことはない」。この3年間で伸びたか。全国で勝つための力を身につけたか。問われるのは現在の姿である。

練習前に気合いをいれる選手たち

 チームの強みはボールを保持して試合を動かせることにある。その中心を担うのが中盤の底に位置するアンカーの椎原吟峨(3年)だ。派手さこそないが、岡松監督が「サッカーを理解する力が高い」と評する司令塔。前線と最終ラインをつなぎ、ボールを引き出して攻撃のリズムを整える。

 前線には負けん気の強いFW吉良匠生(同)がいる。「点取り屋は何を言われても『俺が点を取る』というくらいでないと」。岡松監督がそう期待するストライカーがゴールを狙い、後方ではキャプテンの矢野晃也(同)のロングキックが局面を一変させる。スピードのあるサイドの選手もそろい、中央とサイド、足元と背後を使い分けられるのが今年の大分だ。

 さらに選手層にも手応えがある。相手の特徴によって先発を3、4人入れ替えられ、4バックだけでなく3バックも選択肢になる。途中出場から得点や流れの変化を期待できる選手もいる。自分たちの型だけに固執せず、相手と試合展開に応じて勝ち筋を探せることは、負ければ終わりのトーナメントで大きな武器となる。

一つ一つのプレーに強度の高さを求める

 だからこそ、岡松監督は意外な言葉を口にする。「一番難しいのは県大会だと思っている」。夏の県王者となったことで今度は追われる。相手が自陣を固めれば7割、8割とボールを保持してもゴールを奪えない時間が続くかもしれない。そこで不用意にボールを失い、カウンターやセットプレーで失点すれば、それまでの優勢は意味を失う。トーナメントには内容の採点表など存在しない。

 その現実を知るからセットプレーにもこだわる。流れの中で崩せないなら、止まったボールから1点を奪う。同時に自分たちが高さで圧倒するチームではないからこそ、不用意なファウルを避け、相手に好機を与えない。細部まで「勝つため」に逆算する。

 「きれいなサッカーをして勝とうとは思っていない」(岡松監督)。この言葉に大分の全国選手権への覚悟が凝縮されている。ボールをつなぐ美しさだけを競うのではない。必要なら布陣を変え、選手を替え、泥臭く1点を奪う。夏の全国で0―8を経験したからこそ、理想だけでは勝てないことも知った。

 目指すのは県予選突破ではない。その先の全国で勝つことである。静岡学園に突きつけられた8点差を苦い記憶で終わらせるのか。それとも成長の出発点に変えるのか。その答えを示す戦いが始まる。 (柚野真也)

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