この夏、筆者は思いがけず病院や診察室で長い時間を過ごすことになった。そのため、AI担当記者として「ChatGPT ヘルスケア」の新バージョンを検証する準備は十分にできていた。

 ChatGPT ヘルスケアは、ChatGPT内の専門的な体験で、厳しいプライバシー制限と安全対策のもと、さまざまな健康に関する質問への回答を得られるよう支援するものだ。米国では7月23日より、無料および有料の個人向けChatGPTアカウントを持つ18歳以上のユーザーに、ウェブと「iOS」で提供される。初期版は1月に一部で提供されていた。

 筆者はこの夏の初めに虫垂を切除し、術後の合併症のため数週間はかなりつらい状態が続いた。幸い、今はかなり体調がよくなっている。そして、早期アクセスでこのプログラムを試すにあたり、山ほどたまったデジタル書類が役に立つことも分かっていた。

 あらゆるAIプログラムと同じく、提供する情報が多いほど結果はよくなる。ChatGPTには「Apple ヘルスケア」のアカウントを接続できるほか、多くの医療機関の電子医療記録も連携できる。医師のメモから各種データ、「Apple Watch」や「Oura Ring」から得られる情報まで、自分の健康情報をすべてChatGPT内にまとめるという発想だ。慢性疾患などで健康記録が多い人や、複数の病院や診療所に記録が分散している人には役立つ可能性がある。

 OpenAIによると、連携した健康情報を基盤モデルや広告のトレーニングに使うことはないという。ユーザーはデータの削除を依頼でき、ChatGPT ヘルスケアが外部アカウントにアクセスできる期間を限定したり、必要に応じて各アカウントの連携を解除したりできる。

 それでも、特にセンシティブなデータを共有したくない場面は確実にある。IT企業には法執行機関に協力してきた歴史があり、一部の政府は中絶や性別適合医療のような処置を犯罪化するなど、高度に政治化された医療政策を強めている。ChatGPT ヘルスケアはHIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)に準拠していない。つまり、医者にかかる場合に得られるような守秘性はないということだ。

ChatGPT ヘルスケアを設定する

 筆者は、患者ポータルの1つをChatGPTに接続した。リストから医療機関を選び、自分のアカウントにサインインし、通常どおり2要素認証を済ませた。すると、電子医療記録からChatGPTが抽出した選択肢の中から、現在の健康状態や服用中の薬を選ぶよう求められたほか、家族の病歴についても大まかな情報を求められた。

 ChatGPTは同じ薬について一般名と処方名を別々に出すなど、重複したデータをかなり多く取り込んでいたため、結果を再確認する必要があった。それでも一連の作業は5分もかからなかった。

 OpenAIによると、毎週3億人以上がChatGPTに健康関連の質問をしているという。1月に報告した週4000万人から大きく伸びた。ただし、そうした質問の70%はヘルスケアの専用タブ以外で行われている。ChatGPT ヘルスケアを設定すると、どこで質問したかにかかわらず、チャットボットが回答にユーザーの健康情報を使ってよいかを尋ねるようになる。

 筆者がChatGPTに健康関連の質問をしたところ、回答には毎回うれしい驚きがあった。回答は明らかに筆者の医療履歴に基づいており、検査結果にも頻繁に言及していた。筆者はこれを使って、現在の回復段階に合わせた1週間の食事プランと運動メニューも考案した。一方、保険に関する質問をしようとしたところ、追加のプラグインを接続する必要があるとのことだった。

 おそらく最も心強かったのは、ChatGPTが筆者に伝えた内容が、すべて医師から聞かされていたものだった点だ。これは想定通りの挙動である。ChatGPTは診断を下したり、治療計画を作成したりするものではない。一方で、OpenAIに協力する260人超の医師のおかげで、そうした症状や状態を非常にうまく説明できる。同社によると、医師らは過去2年間で、49言語、26の診療科にまたがる70万件以上のAI回答をレビューしてきたという。

 ChatGPT ヘルスケアは、GPT-5.6シリーズを含む同社の最新モデルを採用している。5.5と5.6は、緊急の医療介入が必要な場面を見極めること、必要に応じてユーザーに追加情報を求めること、回答で踏み込みすぎないことにおいて改善されている。つまり、AIは自分の回答だけでは不十分な場面をより適切に判断し、医師に相談するよう促せるようになっている。

テクノロジーで健康不安に向き合う

 医療にテクノロジーが使われること自体は新しい話ではない。ChatGPT ヘルスケアも、保険からカルテ作成、検査室、画像診断ソフトウェアまで、AI技術が医療に導入される大きな流れに続くものだ。Microsoftは2026年に入り、「Copilot Health」という同様のツールを発表した。筆者の担当医の多くも、診察の要約をAIに作成させるために会話を録音していた。

 ただし、手術と数週間の回復期を過ごしていた間、筆者がAIチャットボットを使ったのは2回だけだ。1回は午後11時に届いた不安をあおる検査結果を理解するため。もう1回は、その検査結果について医師と話し合う診察に備えるためだ。使ったのはChatGPT ヘルスケアではなく、不安は逆に高まった。チャットボットが虚偽情報を作り出しているのではないか、あるいはRedditのようなオンライン上の真偽不明の情報源から引っ張ってきているのではないかと心配になった。

 AIは筆者を安心させようとしたが、その時に筆者が必要としていた人間による支えの代わりにはならなかった。状況に耐えることを可能にしてくれたのは人、つまり看護師、医師、友人、家族だった。

 なお、OpenAIはAIがその代替になるとは主張していない。そして、ユーザーのデータと接続された同社の専門的なヘルスケア体験は、一般的なチャットボットから大きく前進している。手術直後にChatGPT ヘルスケアが使えていたら、もう少し不安が和らいだかもしれない。しかし、多くの遠隔医療のイノベーションと同じく、ChatGPT ヘルスケアも、米国の医療制度という大きく開いた傷口に貼る新たなばんそうこうにすぎないのではないかと筆者は懸念している。

この記事は海外Ziff Davis発の記事を4Xが日本向けに編集したものです。

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