ドローンに対抗する工夫
ニコポリの街路の頭上には、FPVドローンへの対策として漁網が張り巡らされるようになった。今やヘルソンからクラマトルスクまで、前線のほとんどの都市でみられる光景だ。住民らは歩行者の安全を確保するため、道路の上に張った網を歩道にも広げる計画だと話す。
このほかにも、ドローンの脅威に対抗するためのさまざまな工夫が生まれた。ドローンの到来を市全域の住民に伝える警告アプリもその一例だ。また一部の企業や緊急対応要員は、「チュイカ」と呼ばれるドローン検知器を常備している。

ウクライナ企業が開発したドローンの脅威を検知する携帯機器「チュイカ」/BlueBird Tech
専門家らによると、これは比較的単純な携帯機器で、脅威が迫ると警告音が鳴り、アナログの無線通信で制御されるドローンの追跡にも活用できる。ただし、ドローンのルートが事前に設定されている場合や、光ファイバーケーブルでつながっている場合、デジタル信号を使っている場合は識別できない。
「何もないよりはましだが、万能ではない」と語るのは、英スコットランドにあるストラスクライド大学でレーダーシステムを研究するカーマイン・クレメンテ教授だ。機器が警告音を鳴らせば「少なくとも2分間ほどの猶予が得られ、バスから降りて十分距離を置いた場所に身を隠すことはできる」という。
機器を製造するのはウクライナの企業、ブルーバード・テックだ。米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の上級フェロー、カテリーナ・ボンダー氏によれば、軍向けというより主に民生向けに販売されている。
前線の各地で軍関係者のほか、バス会社や運転手、救急ボランティア、医師らが活用しているという。
ボンダー氏は国防イノベーションの専門家で、ウクライナ政府の顧問を務めた経歴を持つ。同氏は「民間人がだれでも標的になり得る。残念ながらロシアはこの地域で、ドローン操縦士の訓練や心理作戦の展開を目的に市民を狙っているからだ」と語った。
ニコポリにある運送会社のオーナー、ミコラ・コシェレフ氏によると、検知器は1台500ドル(約8万1000円)前後と高価で、運転手らが自分で操作するのが難しい。そのため同氏の会社では、ドローンが近くに飛来すると知らせてくれる民間のアプリ「Zello(ゼロー)」を使うことにしたという。
「(ドローンは)毎日飛んでいる。特に朝7~9時は大挙して飛ぶ」と、同氏は語る。「至近距離に来ると運転手はバスを止め、乗客は降りてその場から離れる」という。「ネットがつながらない地区では、バス運転手たちがトランシーバーでドローンの位置を伝え合っている」
同氏は「人々の安全を守るには、ただ気をつけるしかない」と述べ、公共交通機関を狙った攻撃が増えて、運転手たちはおびえながら仕事に出ることも多いと訴えた。「ずっと前からこの商売をしているが、こんなことになるとは想像もしていなかった。乗客の数は全体に減っているものの、みんな以前より運転手を信頼し、好意的になっている」
地元のラジオ局「ラジオニコポリ」は局のアプリに、ドローンを見つけた人がだれでもすぐ局に通報できる機能を追加した。ドローンの位置に関する情報があればいつでも、音楽の途中でアナウンサーが割って入る。CNN取材班が聴いている間にも、ひとつの曲目が3回中断された。
