更迭されたウクライナのミハイロ・フェドロフ前国防相は、ドローン戦を強力に推進してきた人物だ。 Pierre Crom/Getty Images改革派として知られるウクライナのミハイロ・フェドロフ国防相の解任は、同氏の革新的な手法を高く評価してきた地元兵器メーカー各社に大きな衝撃を与えた。フェドロフ氏はドローン戦を強力に推し進めただけでなく、軍の抜本的な改革や防衛産業の刷新にも取り組んでいたからだ。彼の更迭について、業界関係者はウクライナの戦争遂行能力に対する潜在的な影響を懸念していると語った。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelenskyy)大統領が改革派の国防相を突然解任したことは国内に大きな衝撃を与えた。ウクライナが戦場で勢いを増しつつある矢先だっただけに、不安と動揺が広がった。

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ウクライナの防衛産業関係者は、35歳のミハイロ・フェドロフ(Mykhailo Fedorov)氏の就任からわずか半年での更迭について、同国が誇る軍事テクノロジーセクターにとって大きな痛手だと語り、今後深刻な問題が生じかねないとの懸念を示した。
身元を明かさずアントン(Anton)とだけ名乗ることを条件に取材に応じたウクライナの防衛テック企業関係者は、フェドロフ氏について「イノベーションを推進し、先見性のある目標を掲げ、そしてゼレンスキー大統領にとって交渉の切り札となるような、非常に大胆で実践的な作戦を牽引していた」と語った。
アントン氏によると、フェドロフ氏はウクライナの兵器開発や戦術、軍事ドクトリンを抜本的に刷新する取り組みにおいて、受け身ではなく先手を打つ姿勢を貫いていたという。
「彼は今日必要なことに応え、不足している部分を埋めながら、同時に明日も通用する力と優位性を築くことで、我々の勝利を確実なものにしようとしていた」
消耗戦に挑んだ「シリコンバレー流」アプローチ
2026年7月16日、ウクライナ・キーウで記者会見を行うウクライナのミハイロ・フェドロフ前国防相。Danylo Antoniuk/Ukrinform/Sipa USA via Reuters Connect
かつてウクライナのデジタル変革相を務め、戦争に対するシリコンバレー流のアプローチで知られるフェドロフ氏は、2026年1月にゼレンスキー大統領から国防省のトップに任命された。
フェドロフ氏は就任後直ちに、ウクライナ軍の抜本的な改革に着手し、ドローン運用の強化や契約制度の見直しを進めた。また、防衛産業の改革にも取り組み、開発力の強化と、調達プロセスの透明性・効率性の向上を目指した。
ロシアによる侵攻は、ウクライナをロボティクスとドローン技術革新の中心地へと変貌させた。現在、数百社に上る企業が、ドローンから電子戦装備に至るまで、軍向けの新技術の開発を進めており、その多くは将来的な輸出も視野に入れている。
アントン氏によれば、フェドロフ氏の在任中、ウクライナ企業は政府との間で、格段に透明性の高い調達プロセスの恩恵を受けていたという。同氏は、国防省との協力を「プロフェッショナルで、非常に生産的な」対話だったと振り返り、「以前には想像すらできなかったことだ」と語った。
同氏は、フェドロフ氏が防衛産業を変革し、自律化が進む戦場の変化に対応できる体制を築いたと述べた。
2026年1月以降、ウクライナ軍はロシアの石油関連施設に対する長距離ドローン攻撃を大幅に強化するとともに、中距離ドローンを用いてロシア軍の後方兵站に打撃を与えてきた。この2つの作戦は、ウクライナ政府に楽観的な空気をもたらし、戦場におけるロシアの勢いをくじく一方で、自軍の勢いに弾みをつけている。
ウクライナの防衛企業各社は、より透明性の高い調達プロセスを築いたフェドロフ氏の手腕を高く評価していた。 Paula Bronstein/Getty Images
防衛メーカー各社は、ここ数カ月間のウクライナの勝利を、フェドロフ氏とそのチームが推し進めたドローン重視のアプローチの成果だとみている。
ロボットシステムメーカー、アーク・ロボティクス(Ark Robotics)のCEOは、「迅速な実戦投入、効率化された調達、そして戦場からの継続的なフィードバックを後押しする政策が整っていたからこそ、技術を急速に進歩させることができた」と語った。
イノベーションが鈍化する懸念
フェドロフ氏が重視した急速な技術革新と分散型のイノベーションは、オレクサンドル・シルスキー(Oleksandr Syrskyi)総司令官率いる軍の、より伝統的な指揮系統と衝突することもあった。ゼレンスキー大統領も、両者の間の溝が問題になっていたと述べている。
ゼレンスキー大統領は7月16日の大規模な内閣改造で、フェドロフ氏を政権から外した。フェドロフ氏は自身が追い出されたと語っており、政府顧問職を打診されたが辞退したという。
この解任劇は、ウクライナの市民や兵士たちの間に混乱と怒りを引き起こしただけではない。防衛産業内でも、今後の調達や製造の優先順位がどうなるのかをめぐって不安が高まっている。
フェドロフ氏は、旧ソ連式のアプローチを好むシルスキー氏(右)と対立した。 Danylo Antoniuk/ Ukrinform/Future Publishing via Getty Images
「国防相としてのフェドロフ氏は、実際に機能し、成果を上げた装備だけが前線に届く仕組みを作り上げた」
あるウクライナのメーカー関係者はそう語り、こう続けた。
「彼は競争環境を生み出したのだ。メーカー各社は品質で競い合い、価格を抑えながらも前線の本当のニーズに応えるようになった」
そして「前時代的なトップダウン型の管理」へと逆戻りしてしまうのではないかと危惧していると語った。
