土田陽介のユーラシアモニター
【土田陽介のユーラシアモニター】EU離脱が開けた英国政治のパンドラの箱、失われた成長期待と長期停滞の現実
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土田 陽介
三菱UFJリサーチ&コンサルティング・主任研究員
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2026.6.23(火)
辞任を表明した英国のスターマー首相。労働党政権になり、労働や環境の分野を中心に規制はむしろ強化されている(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
英国で欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う国民投票が行われたのは、2016年6月23日のことだった。日本でもセンセーショナルに伝えられたこの国民投票から、今年でもう10年が経過したことになるわけだが、このEU離脱は英国にいったいどのような影響をもたらしたのだろうか。経済と政治の両面から議論してみたい。
英国がEUを実際に離脱したのは2020年2月1日のことだ。その年末に移行期間を終えたため、翌2021年より英国を取り巻く国際経済環境は大きく変化した。そのため、2016年から2020年までの5年間を前半と、2021年から2025年までを後半として、実質GDP(国内総生産)と消費者物価の関係についてEUと比較してみよう。
離脱交渉が行われた前半(プロットは▲)においては、英国とEUの実質GDPの前年比成長率と消費者物価の前年比変化率は、弱い正の相関を描いていた(図表1と2)。英国の相関は0.0323であり、EUは0.0426である。好景気であればインフレが加速する、あるいは不景気であればインフレは鈍化するので、この関係は当然といっていい。
【図表1 英国の実質GDPと消費者物価の関係】 (出所)英国立統計局(ONS)
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他方、離脱後の後半(プロットは■)になると、実質GDPと消費者物価の関係は負の相関に一転する。スタグフレーション(景気停滞と物価高進の併存)に陥ったためだが、英国が▲0.1である一方、EUが▲0.0394と、英国の方がより傾きが急であり、スタグフレーションが厳しかったこと、つまり経済が厳しかったことが分かる。
【図表2 EUの実質GDPと消費者物価の関係】(出所)英国立統計局(ONS)
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いわゆるブレグジッター(離脱支持者)は、EUから離脱すれば英国は政策自主権を取り戻し、経済成長を加速させると主張していた。英国のEU離脱はEUにこそ強い悪影響を与えるといういささか感情的な主張もあったが、英国の経済構造を正しく理解していれば、そうした見解はまずなかった。なぜならば、英国は輸入超過の経済だからだ。
