今年2月末のイスラエルとアメリカによるイラン攻撃以降、中東各地で混乱が広がっている。中でもレバノンでは3月上旬からのイスラエルの攻撃を受け、すでに2500人以上の死者が出ている。イスラエルがレバノンを攻撃する目的は、同国の政治・武装組織であるヒズボラの壊滅にある。ヒズボラが、イスラエルが敵視するイラン政府やパレスチナのハマスと密接な関係を持っているためだ。ヒズボラとはレバノンの人々にとってどんな組織なのか。戦火の渦中にあるレバノンを訪れ、3月中旬から1カ月にわたり取材を行った。各地の声から浮かび上がったのはヒズボラへの人々の賛否とジレンマだった。(文・写真:ライター・伊藤めぐみ/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
首都にあふれる避難民とヒズボラへの賛否両論
レバノンの首都ベイルートには、多くの避難民が押し寄せ、テントが立ち並んでいた。3月中旬、春先の雨が続く中、大家族が小さなテントで雨をしのぎながら生活している。
「雨が降ると、ただ濡れているしかありません」
避難民の女性はそう語る。
3月上旬からのイスラエル軍の攻撃により、レバノンでは約120万人が家を追われた。ベイルート中心部は比較的安全とされるが、ヒズボラ関係者を狙った精密攻撃や、建物全体を標的とした空爆も発生している。ベイルート上空では、イスラエル軍の監視ドローンが常に飛行し、不快な機械音が鳴りやまない。また、「ソニックブーム」と呼ばれる、爆発音に似た大音響を時に鳴らすことで人々に恐怖を与える心理戦も展開されている。
先の見えない状況ながら、南部から避難してきたという23歳のハウラは、強い口調でこう語る。
「故郷の家が壊れたかどうかは問題ではありません。避難生活が大変だとも思いません。大切なのはヒズボラの“抵抗”です」
レバノンは多様な宗教宗派から成る国家である。人口は約580万人。イスラム教スンニ派、同シーア派、キリスト教徒がそれぞれ3分の1程度を占め、さらにその他少数派も存在する。居住地域も宗派ごとに分かれていることが多く、それによって立場や考え方も異なることが多い。
今回、イスラエルの攻撃は主にシーア派地域に集中しており、避難民の多くもシーア派である。シーア派は、レバノン南部、北東部やベイルート南郊に多く暮らしている。
そんなシーア派の人たちに支えられているのがヒズボラだ。ヒズボラは、レバノンでは国会に議席を持つ合法的な政党でもある。ただし、武装組織でもある。重要なのは、レバノン正規軍とは異なる独自の組織であることだ。
ヒズボラとは何か。尋ねると、南部出身の避難民の男性たちは次のように述べた。
「レバノン政府は私たちの政府である。ただ私たちを守ってくれるのはヒズボラ。政府は政治をするが、守れるのはヒズボラ」
「イスラエルはこれまでの戦争でも停戦違反してばかり。誰もそれを止めていない。レバノン政府はいつもヒズボラから武器を取り上げたがっているが、自分は命を失うことになっても反対する」
