
京都府のシティホテルとビジネスホテルについて、2026年9月の推定成約ADR(確定値)が出そろった。ビジネスホテル(N=327施設)は¥11,701で前年同月(¥11,992・N=319)比−2.4%にとどまり、8月の−15.6%から前年差が13pt縮んでいる。一方のシティホテル(N=61施設)は¥20,179で前年同月(¥23,624・N=58)比−14.6%と、8月の−10.2%から逆に4pt広がった。6〜8月は両業態がそろって2桁のマイナスを刻んでいたが、9月に入って動きが分かれた格好だ。本稿では確定月同士の前年同月比を1〜9月まで並べて業態差がどこで生まれたのかを読み解き、あわせて紅葉繁忙期(11月)の予約進捗を推定OCC(OTA掲載在庫ベース)で確認したうえで、値付け前のRM論点を整理する。
対象: 京都府のビジネスホテル N=327施設・シティホテル N=61施設(推定成約ADR・2026年9月確定値の対象施設数)。本記事の価格指標は推定成約ADR(OTA等の販売データから推定される成約価格水準・税抜相当)、稼働率はOTA掲載在庫ベースの推定値。いずれも定義は記事末尾。データ時点: 2026年10月27日。
本記事のデータについて
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)
Key Takeaways
— 京都府の2026年9月確定の推定成約ADRは、ビジネスホテル−2.4%(¥11,701・N=327)、シティホテル−14.6%(¥20,179・N=61)。8月(−15.6%/−10.2%)から業態の動きが逆になった。
— 1〜9月の単純平均の前年比はビジネス−2.2%に対しシティ−7.2%。シティは6月から4か月連続の2桁減で、水準そのものが切り下がっている。
— シティの対ビジネス倍率は2025年9月1.97倍→2026年9月1.72倍。主要6都道府県の比較では、東京都(2.10→1.84倍)と並ぶ最大級の縮小幅。
— 紅葉期の11月21日(土)は45日前時点で推定OCCがビジネス93.3%・シティ95.4%(2026年10月26日観測)。23日(月・祝)は直近でも83.3%・85.3%にとどまる。
— 11月の確定値が9月と同じ前年比で着地すると、シティの対ビジネス倍率は1.29倍まで縮む計算になる(2025年11月は1.48倍)。紅葉期の値付けでは、業態間の価格差がこの先どこまで縮むかを確認しておきたい。
1〜9月の前年同月比 — ビジネスは春にプラス、シティは6月から4か月連続の2桁減
まずは確定月同士の前年同月比を2026年1月から9月まで並べる。表1は京都府のビジネスホテルとシティホテルについて、各月の推定成約ADRと前年同月の確定値、その差を示したものだ。対象施設数(N=)は月ごとに変動するため、各セルに併記している。
表1 京都府 推定成約ADR(税抜相当・確定値同士)の前年同月比。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
宿泊月ビジネスホテルシティホテル
2026年2025年前年比2026年2025年前年比
1月¥9,773
N=319¥10,148
N=312-3.7%¥18,432
N=57¥20,233
N=55-8.9%
2月¥9,641
N=319¥9,941
N=313-3.0%¥18,660
N=56¥18,724
N=57-0.3%
3月¥16,969
N=329¥15,904
N=318+6.7%¥26,774
N=58¥26,141
N=57+2.4%
4月¥20,308
N=328¥20,038
N=318+1.3%¥29,986
N=58¥32,625
N=57-8.1%
5月¥15,278
N=329¥13,820
N=320+10.5%¥25,867
N=57¥24,956
N=57+3.7%
6月¥9,616
N=324¥10,659
N=319-9.8%¥17,738
N=57¥20,768
N=58-14.6%
7月¥10,230
N=325¥11,752
N=318-13.0%¥17,420
N=58¥20,926
N=58-16.8%
8月¥9,993
N=325¥11,846
N=318-15.6%¥19,662
N=59¥21,892
N=58-10.2%
9月¥11,701
N=327¥11,992
N=319-2.4%¥20,179
N=61¥23,624
N=58-14.6%
ビジネスホテルは年初こそ1月−3.7%、2月−3.0%と小幅なマイナスで始まったが、3月+6.7%、4月+1.3%、5月+10.5%と春の3か月はいずれも前年を上回っていた。流れが変わったのは6月で、−9.8%から7月−13.0%、8月−15.6%と月を追うごとに前年差が深くなり、9月の−2.4%でようやく一桁台に戻している。1〜9月の単純平均で見ると2025年の¥12,900に対し2026年は¥12,612で−2.2%にとどまり、夏場の落ち込みを春の上振れが相殺した1年だったと読める。
これに対しシティホテルは、2月−0.3%、3月+2.4%、5月+3.7%と前年並みを保った月はあるものの、1月−8.9%、4月−8.1%と年前半から振れ幅が大きく、6月−14.6%、7月−16.8%、8月−10.2%、9月−14.6%と、6月以降は4か月連続で2桁のマイナスが続いている。1〜9月の単純平均は2025年の¥23,321に対し2026年は¥21,635で−7.2%と、ビジネスホテルの3倍以上の下げ幅になった。ビジネスが「夏の一時的な谷」であったのに対し、シティは「初夏から続く水準の切り下がり」と性格が異なる点が、今回の確定値から読み取れる第一の論点である。この6〜8月の二桁減が施設層のどこで起きたか、二桁下落局面での価格レンジと下限の置き方は、京都の推定成約ADR、確定6〜8月は前年比二桁減で整理している。
図1 京都府ビジネスホテルの推定成約ADR(税抜相当・月次)。2025年・2026年1〜9月は確定値、2026年10〜12月は現時点の販売状況に基づく推定(点線・変動し得る)。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
図2 京都府シティホテルの推定成約ADR(税抜相当・月次)。2025年・2026年1〜9月は確定値、2026年10〜12月は現時点の販売状況に基づく推定(点線・変動し得る)。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
図1と図2を年重ねで眺めると、ビジネスホテルは2026年の線が3〜5月で2025年を上回り、6〜8月で下にもぐり、9月でほぼ重なる。シティホテルは2026年の線が年間を通じて2025年の下を走り、とくに6月以降は両線の間隔が開いたままだ。同じ京都府で同じ月に観測した値でありながら、業態によって前年との位置関係が異なる以上、「京都の単価が下がった」と一括りにするより、業態ごとの需要の受け止め方に差があったと考えるほうが実態に近い。春まで前年を上回っていた京都が6月を境に反転した経緯については、京都のADRはなぜ初夏に折れたのかが1〜7月の確定値で稼働や予約進捗とあわせて読み解いている。
9月に分かれた理由 — 5連休の集中と「シティの対ビジネス倍率」の縮小
9月の業態差を考えるうえで手がかりになるのが、同月の推定OCC(OTA掲載在庫ベース)の日別の形である。2026年9月の京都府ビジネスホテル(対象189〜201施設・客室19,544〜20,010室、主要予約サイト掲載ベース)は月平均84.8%で、9月19日(土)95.5%、20日(日)100.0%(OTA掲載残室は約2万室中2室・満室施設98.3%で、販売停止に近い水準)、21日(月・敬老の日)99.9%、22日(火・国民の休日)92.3%と、19日から23日まで続いた5連休に需要が集中した。シティホテル(対象34〜37施設・客室4,987〜5,084室)も月平均85.3%、20日(日)99.8%、21日(月)99.8%、22日(火)93.9%と、連休の山の形は両業態でほぼ同じだった。
曜日別の平均でも、ビジネスは土曜89.6%・月曜86.7%・日曜82.1%、シティは土曜89.7%・月曜87.4%・日曜85.0%と並び、稼働面で業態差はほとんど見られない。それでもADRの前年差が片方だけ縮んだということは、連休に集中した需要を価格に反映できた度合いが業態で違っていた、と解釈するのが自然だろう。ビジネスホテルは客室単価の絶対水準が低い分、連休の需要圧が前年差の縮小として表れやすく、シティホテルは前年9月の水準(¥23,624)そのものが高かったため、同じ需要の山でも前年差を埋めきれなかったと考えられる。
この関係は「シティの対ビジネス倍率」で見ると分かりやすい。2025年9月のシティ¥23,624はビジネス¥11,992の1.97倍であったが、2026年9月はシティ¥20,179がビジネス¥11,701の1.72倍まで縮んでいる。8月は2025年が1.85倍、2026年が1.97倍と逆に開いていたので、9月の1か月で両業態の相対価格が入れ替わるように動いたことになる。シティホテルの運営者にとっては、ビジネスホテルとの価格差が狭まった状態で紅葉期を迎えるという意味で、単なる前年比以上に注意したい指標といえる。
前年同月比の補助線として、上場ホテルリートが公表する9月の運営実績を参照値として並べておく。いちごホテルリート投資法人(3463)の2026年9月実績は25ホテル合計(全館閉館中等を除く)でADR¥11,937・稼働率87.2%・RevPAR¥10,414、前年同月比はADR+16.3%・稼働率+2.0pt(出典:同社 月次運営実績 2026年9月)、ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985)の変動賃料等導入29ホテル合計はADR¥20,468・稼働率85.6%・RevPAR¥17,519、前年同月比はADR+2.3%・稼働率−0.6pt(出典:同社 運営実績)だった。いずれも全国ポートフォリオの公表値で京都府に限った数字ではなく、集計基準も本稿の推定成約ADRとは異なるため水準の突合はしないが、全国の公表実績がADRで前年並みから増加を示す同じ9月に、京都府の確定値が両業態ともマイナスだったという対比は、今回の下振れが全国的な潮流というより京都固有の需給による部分がある可能性を示している(ただし後述の表4のとおり、シティホテルの前年割れは東京都・兵庫県でも起きている)。同じ9月のビジネスホテルを47都道府県で横断したビジネスホテルの推定成約ADR、2026年9月は44都道府県が前年超え・中央値+7.9%でも、京都はマイナス側に残った3府県の一つとして位置づけられており、暦要因と実力を分けて読む枠組みの参考になる。
10〜11月の参考水準と紅葉期の予約進捗 — 11月21日(土)はすでに9割超
ここからは未確定の月に移る。表2は2026年10月・11月の推定成約ADRの現時点の値を、前年の確定値と並べたものだ。ただし10月・11月の値は現時点の販売状況に基づく推定であり、確定値と集計基準が異なるため前年比は計算していない。確定値との単純比較は月末の確定を待つ必要があり、ここでは参考水準としてのみ扱う。
表2 2026年10・11月は現時点の販売状況に基づく推定値(変動し得る)、2025年は確定値。基準が異なるため前年比は算出していない。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
宿泊月ビジネス 2026年
現時点推定ビジネス 2025年
確定値シティ 2026年
現時点推定シティ 2025年
確定値
10月¥20,762(N=320)¥18,068(N=319)¥31,390(N=63)¥29,248(N=58)
11月¥24,716(N=321)¥21,610(N=314)¥35,474(N=64)¥31,958(N=58)
10月の稼働を先に確認しておくと、2026年10月1日〜27日の推定OCCはビジネスホテル(対象188〜199施設・客室18,377〜19,462室)が平均93.7%、シティホテル(対象37〜38施設・客室5,084〜5,621室)が平均92.0%と、9月の84〜85%台から水準を上げている。日別では10月10日(土)がビジネス99.7%・シティ99.2%、10月21日(水)が99.1%・98.2%と、週末だけでなく平日にも天井に近い日が現れており、曜日別平均でもビジネスは水曜96.3%が土曜96.7%にほぼ並ぶ。日曜(ビジネス90.3%・シティ90.0%)と月曜(90.0%・88.1%)が相対的に低い点は9月と共通している。
そのうえで紅葉のピークにあたる11月後半の予約進捗を、ブッキングカーブ(宿泊日の45日前から直近までの観測)で確認する。表3は11月の主要な宿泊日について、45日前・30日前・直近の推定OCCを業態別に並べたものだ。対象はビジネスホテル199〜200施設・客室19,411〜19,475室、シティホテル38施設・客室5,621室(いずれも主要予約サイト掲載ベース)である。
表3 推定OCC(OTA掲載在庫ベース)。「—」は30日前の観測がまだ到来していない日。直近は2026年10月26日時点の観測。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
宿泊日ビジネスホテル 推定OCCシティホテル 推定OCC
45日前30日前直近45日前30日前直近
11/14(土)82.8%90.3%95.0%
(19日前)87.2%90.9%94.4%
(19日前)
11/21(土)93.3%98.0%98.9%
(26日前)95.4%97.7%98.3%
(26日前)
11/22(日)88.3%94.0%95.3%
(27日前)92.9%96.2%97.1%
(27日前)
11/23(月)76.9%82.5%83.3%
(28日前)82.9%84.5%85.3%
(28日前)
11/25(水)85.8%91.4%91.4%
(30日前)90.0%91.9%91.9%
(30日前)
11/28(土)83.2%—89.1%
(33日前)89.4%—91.7%
(33日前)
図3 11月21日(土)・22日(日)・23日(月・祝)のブッキングカーブ(X軸=宿泊日までの残り日数、45日前から直近まで)。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
最も進んでいるのは11月21日(土)で、ビジネスホテルは45日前の時点ですでに93.3%、30日前に98.0%、直近(26日前)には98.9%に達している。シティホテルも45日前95.4%・30日前97.7%・直近98.3%と、両業態とも45日前の段階で9割を超え、その後の上積みはビジネス5.6pt・シティ2.9ptにとどまった。翌22日(日)はビジネス88.3%→94.0%→95.3%、シティ92.9%→96.2%→97.1%と、土曜より一段低い位置から同じ傾きで積み上がっている。
対照的なのが3連休の最終日にあたる23日(月・勤労感謝の日)で、ビジネスは45日前76.9%・30日前82.5%・直近83.3%、シティは82.9%・84.5%・85.3%と、同じ連休の中で土曜(21日)との差がビジネス15.6pt・シティ13.0pt開いたままだ。連休明けに帰路につく客が多く、最終日の宿泊需要が薄くなるのは一般的な形だが、紅葉期の京都でもその構造が崩れていないことを今回のカーブは示している。
連休以外の週末では、11月14日(土)がビジネス82.8%(45日前)→90.3%(30日前)→95.0%(直近19日前)と、45日前から直近までに12.2ptを積み上げた。これは紅葉期の週末において、45日前以降にどれだけの直前需要が残っているかの実測値として使える数字である。11月28日(土)はビジネス83.2%→89.1%(直近33日前)、シティ89.4%→91.7%、11月25日(水)はビジネス85.8%→91.4%(直近30日前)、シティ90.0%→91.9%と、11月後半は平日・週末を問わず30日前の時点で9割前後に達する日が並ぶ。
主要府県との比較 — ビジネスの前年割れは京都・大阪だけ、シティは東京・兵庫も前年割れ
京都府の9月確定値を他の主要都道府県と並べると、業態ごとに京都の位置が違って見える。表4は同じ推定成約ADRの2026年9月確定値を、東京都・大阪府・兵庫県・福岡県・北海道と比べたものだ。
表4 主要6都道府県の推定成約ADR(税抜相当)2026年9月確定値と前年同月比、シティの対ビジネス倍率(2025年9月→2026年9月)。※大阪府は前年9月が大阪・関西万博の会期中で比較の基準が高い。愛知県は2026年9月19日〜10月4日のアジア競技大会で当年側が押し上げられるため除外。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成都道府県ビジネスホテルシティホテルシティの対ビジネス倍率2026年9月前年比2026年9月前年比
京都府¥11,701
N=327−2.4%¥20,179
N=61−14.6%1.97倍→1.72倍
東京都¥13,364
N=914+2.2%¥24,650
N=110−10.3%2.10倍→1.84倍
大阪府※¥8,872
N=504−34.0%¥13,077
N=97−21.8%1.24倍→1.47倍
兵庫県¥7,826
N=168+1.9%¥12,737
N=47−7.8%1.80倍→1.63倍
福岡県¥10,958
N=342+9.9%¥18,547
N=43+21.9%1.53倍→1.69倍
北海道¥10,842
N=437+8.9%¥16,485
N=75+0.1%1.65倍→1.52倍
ビジネスホテルで前年を下回ったのは6都道府県のうち京都府(−2.4%)と大阪府(−34.0%)だけで、大阪は前年9月が万博会期中だった反動が大きい。東京都+2.2%、兵庫県+1.9%、北海道+8.9%、福岡県+9.9%と他はいずれもプラスで、ビジネスホテルの前年割れについては京都固有の要因がある、という本稿の読みと整合する。
一方のシティホテルは、京都府−14.6%に対して東京都−10.3%、兵庫県−7.8%、大阪府−21.8%と、大都市圏の4都府県がそろって前年を下回った。プラスは福岡県+21.9%と北海道+0.1%にとどまる。シティホテルの単価下落は京都だけの現象ではなく、大都市のシティホテルに共通する動きの中で京都の下げ幅が大きい、と読むのが妥当だ。シティの対ビジネス倍率を見ても、京都府(1.97→1.72倍)と東京都(2.10→1.84倍)は縮小幅が0.25〜0.26倍とほぼ同じで、兵庫県(1.80→1.63倍)、北海道(1.65→1.52倍)が続く。この倍率が広がったのは大阪府(1.24→1.47倍)と福岡県(1.53→1.69倍)だけだった。
11月確定値の3シナリオと単価×稼働の感度 — 倍率はどこまで縮み得るか
表2の10・11月は現時点の推定値であり、前年比は確定を待つ必要がある。とはいえ価格カレンダーを組むには、確定値がどの範囲に着地し得るかの目安が要る。表5は、2025年11月の確定値を基準に、前年比の置き方を3通りに変えて2026年11月の到達水準を試算したものだ。
表5 2026年11月の推定成約ADR(確定値)の3シナリオ。基準は2025年11月確定値(ビジネス¥21,610・N=314、シティ¥31,958・N=58)。上振れは2026年10月27日時点の推定値(ビジネスN=321・シティN=64)がそのまま確定した場合。予測ではなく、前年比の置き方による到達水準の幅を示す試算。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成シナリオ前年比の置き方ビジネス前年比ビジネス11月シティ前年比シティ11月対ビジネス倍率
下振れ9月確定と同じ前年比−2.4%¥21,091−14.6%¥27,2921.29倍
中位1〜9月平均の前年比−2.2%¥21,135−7.2%¥29,6571.40倍
上振れ現時点推定の水準で確定+14.4%¥24,716+11.0%¥35,4741.44倍
9月と同じ前年比で着地する下振れシナリオでは、ビジネスは前年並みの¥21,091にとどまる一方、シティは¥27,292まで下がり、対ビジネス倍率は1.29倍まで縮む。2025年11月の1.48倍から0.19倍の縮小で、9月に起きた倍率の縮み(1.97→1.72倍)が紅葉期にも続くケースにあたる。上振れシナリオ(現時点推定のまま確定)でも倍率は1.44倍と前年を下回っており、11月はシティホテルの相対価格が前年より狭い範囲で推移する公算が大きい。
単価と稼働のどちらを優先するかの判断材料として、表6に単価の前年比と推定OCCの組み合わせでRevPAR指数を示した。前年並みの単価で91%を取った場合を100とすると、単価を5%下げて同じRevPARを保つには推定OCCを約4.8pt(91%→95.8%相当)上積みする必要がある。11月21日(土)のように45日前で9割を超えている日は上積みの余地が3〜6ptしかなく、値下げで稼働を買う打ち手は割に合いにくい。逆に11月23日(月・祝)のように80%台前半にとどまる日は、単価−5%で87%を取ればRevPAR指数は91と、前年並み単価・83%の91とほぼ同じで、稼働の上積みが単価の譲歩を相殺する。
表6 推定成約ADRの前年11月比(行)×推定OCC(列)でみたRevPAR指数(前年並み単価・91%=100)。算式:(1+単価変化率)×OCC÷91%×100。業態を問わず同じ比率で読める。100未満を赤字で示す。出典:ホテルバンク編集部試算単価の前年比\推定OCC(2026年11月の想定)83%87%91%95%99%
−10%8286909498
−5%87919599103
±0%9196100104109
+5%96100105110114
+10%100105110115120
京都府のビジネス・シティホテルを運営するレベニューマネージャーへ — 示唆とアクションプラン
運営目線のインサイト
1. 自館の前年比を「業態の線」と重ねて読む。 京都府のビジネスホテルは9月−2.4%、シティホテルは−14.6%が市場の確定値である。自館の9月実績がこの業態値より深いマイナスであれば市場要因では説明しきれない部分があり、浅ければ連休需要を価格に反映できたと見てよい。前年比の良し悪しを自館単独で判断するより、まず業態の線との差分を見ることが出発点になる。
2. シティホテルは「対ビジネス倍率」の縮小を警戒したい。 2025年9月に1.97倍あったシティとビジネスの価格差は2026年9月に1.72倍まで縮んだ。シティホテルの単価がビジネスホテルの上限に近づくほど、宿泊客はグレードを落として同エリアのビジネスホテルに流れやすく、逆にビジネスホテルの運営者から見れば上位業態との価格差が狭い局面は値上げの天井が近いことを意味する。両業態とも、同エリアの他業態の水準を価格設定の参照に加える余地がある。
3. 紅葉期の週末は45日前時点の進捗が勝負になっている。 11月21日(土)は45日前に両業態とも9割を超え、その後の上積みは3〜6pt程度だった。この形は、45日前の時点で高稼働に達していれば直前の値上げ余地が残っている一方、45日前に8割前後にとどまる日(11月14日のように直近までに12pt積み上がる日)では、直前需要を取り込む価格の置き方が重要になることを示している。
4. 連休最終日と日曜・月曜は構造的に薄い。 11月23日(月・祝)は直近でもビジネス83.3%・シティ85.3%と、同じ連休の土曜より13〜16pt低い。10月の曜日別平均でも日曜・月曜は88〜90%で他曜日より低く、紅葉期であってもこの型は変わっていない。連泊条件や最終日を含むプランの組み方で、薄い夜に需要を寄せる設計を検討したい。
以上を時間軸に沿ったアクションプランに落とすと、次のようになる。
表7 時間軸別アクションプラン。アクションプランの数値はいずれも本稿で提示した市場集計値。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
時間軸打ち手判断トリガー(本稿の数値)狙い
今日〜今週9月確定値の自館前年比を業態値と突き合わせ、差分の要因(連休日の価格・客室タイプ構成)を分解する自館の9月前年比がビジネス−2.4%/シティ−14.6%より深い場合市場要因と自館要因の切り分け
今日〜今週11月21日(土)・22日(日)の残り在庫を確認し、直前販売分の価格を見直す市場の直近推定OCCが21日98.9%/98.3%、22日95.3%/97.1%(ビジネス/シティ)に達しているのに自館の進捗がこれを下回る場合ピーク日の取りこぼし防止
2週間以内11月23日(月・祝)を含む連泊プランや、日曜・月曜泊を軸にした滞在提案を用意する23日の市場推定OCCが直近でビジネス83.3%/シティ85.3%と、土曜より13〜16pt低い状態が続いている場合薄い夜への需要の寄せ
2週間以内11月28日(土)・12月5日(土)など30日前を迎える週末の価格を、45日前→30日前の上積み幅を見ながら段階的に調整する11月14日(土)が45日前82.8%から直近95.0%まで12.2pt積み上がった実績を目安に、自館の同時点の進捗がこれより遅い場合直前需要の価格への反映
来月に向けてシティホテルはビジネスホテルの市場水準との倍率を定点で追い、自館の価格帯が上位業態として成立しているかを点検する9月の対ビジネス倍率1.72倍(前年同月1.97倍)を基準に、自館の倍率がこれを下回って推移している場合業態間の価格ポジションの維持
来月に向けて10月・11月の確定値が出た時点で前年比を再計算し、12月以降の価格カレンダーに反映する現時点推定のビジネス11月¥24,716/シティ¥35,474は参考水準にとどめ、確定後に前年確定値(¥21,610/¥31,958)と比較する確定値ベースの判断サイクルの維持
まとめ — 京都の秋を読む3つの物差し
今回の確定9月を一言でいえば、ビジネスホテルは夏の谷から前年並みに戻り、シティホテルは6月から続く水準の切り下がりが9月も解消されなかった月である。この先の判断に使える物差しを3点に整理しておく。
第一に、前年同月比は確定月同士で、業態別に読む。 同じ京都府・同じ9月でもビジネス−2.4%とシティ−14.6%では意味が異なり、自館の前年比はこの業態の線との差分で評価したい。第二に、業態間の倍率を定点で持つ。 シティの対ビジネス倍率が1.97倍から1.72倍に縮んだ事実は、価格差の天井と床の両方を示す指標として、両業態の運営者が共有できる。第三に、紅葉期の週末は45日前時点の進捗で型が決まる。 11月21日(土)のように45日前で9割を超える日と、11月14日(土)のように直近までに12pt積み上がる日では、同じ週末でも価格の置き方が違ってよい。確定値と進捗の両方を手元に置き、10月・11月の確定を待って前年比を更新していく運用が、京都の秋を安定して読む近道になるだろう。
よくある質問
Q. 京都府のビジネスホテルの推定成約ADRは2026年9月にどうなった?
A. 2026年9月の確定値は¥11,701(N=327施設)で、前年同月の¥11,992から−2.4%でした。8月の−15.6%から前年差が13pt縮み、19〜23日の5連休に需要が集中したことが下支えになりました。
Q. 京都府のシティホテルの前年割れはいつから続いている?
A. 推定成約ADRの前年同月比は2026年6月−14.6%、7月−16.8%、8月−10.2%、9月−14.6%と、6月から4か月連続の2桁減です。1〜9月の単純平均でも前年比−7.2%で、ビジネスホテル(−2.2%)の3倍以上の下げ幅です。
Q. シティホテルの単価下落は京都だけの現象?
A. いいえ。2026年9月確定値の前年比は東京都−10.3%、兵庫県−7.8%、大阪府−21.8%(前年が万博会期中)と、大都市圏のシティホテルはそろって前年を下回りました。京都府(−14.6%)はその中で下げ幅が大きい部類です。ビジネスホテルの前年割れは主要6都道府県では京都府と大阪府だけでした。
Q. 2026年11月の紅葉期、京都のホテルの予約はどこまで進んでいる?
A. 2026年10月26日時点の推定OCC(OTA掲載在庫ベース)で、11月21日(土)はビジネス98.9%・シティ98.3%、22日(日)は95.3%・97.1%に達しています。3連休最終日の23日(月・祝)は83.3%・85.3%と、土曜より13〜16pt低い水準です。
Q. 10・11月の推定成約ADRで前年比を出さないのはなぜ?
A. 2026年10・11月の値は現時点の販売状況に基づく推定で、確定値とは集計基準が異なるためです。本稿では参考水準(2026年10月27日時点でビジネス11月¥24,716・シティ¥35,474)として示し、前年比は月末の確定を待って確定値同士で比較します。
データについて
表8 本稿の指標定義と対象施設数。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
項目定義・注記
推定OCC(OTA掲載在庫ベース)OTA掲載在庫ベース稼働率 = 100 − 100 × OTA掲載残室数 ÷ 総客室数。対象は総客室の30%以上をOTAに掲載する施設で構成した固定コホート(各宿泊日で同じ施設集合。対象施設数がその施設数)。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、実客室稼働率とは定義が異なる(掲載外の客室を消化済み側に数えるため高めに出る)。本稿の対象月は2026年9月(9月1〜30日)・2026年10月(10月1〜27日)、11月は宿泊日別の進捗断面。
ブッキングカーブ宿泊日の45日前から直近までの観測に基づく。定点は45日前・30日前・直近の3点で、直近は2026年10月26日時点の観測。
推定成約ADROTA等の販売データ(最安プラン水準×業態別係数・複数チャネルのアンサンブル)から推定した成約価格水準(税抜相当)。過去月は確定値、現在・未来月は現時点の販売状況に基づく推定値。公表運営実績との照合で誤差中央値6.6%。月次が正準であり、日次・曜日別の価格は扱っていない。
対象施設数(N=)推定成約ADR: 京都府ビジネスホテル 2026年9月 N=327(2025年9月 N=319)、シティホテル 2026年9月 N=61(2025年9月 N=58)。他の月のNは表1・表2に併記。推定OCC: ビジネスホテル 2026年9月 189〜201施設・19,544〜20,010室、10月 188〜199施設・18,377〜19,462室、11月断面 199〜200施設・19,411〜19,475室/シティホテル 9月 34〜37施設・4,987〜5,084室、10月 37〜38施設・5,084〜5,621室、11月断面 38施設・5,621室(いずれも主要予約サイト掲載ベース・宿泊日により変動)。
REIT公表実績各投資法人の公表値をそのまま引用(全国ポートフォリオ・京都府限定ではない)。集計基準が本稿の推定成約ADRと異なるため水準の突合は行っていない。
データ時点データ時点: 2026年10月27日。販売状況・在庫は日々変動するため、本記事の数値は取得時点のスナップショットである。
参考資料・出典一覧
■ データソース
推定成約ADRはメトロエンジンリサーチの都道府県×業態別の月次集計(ビジネスホテル・シティホテル、2025年1月〜2026年12月、確定値は2026年9月まで)。推定OCCとブッキングカーブは同社のOTA掲載在庫ベースの固定コホート集計(京都府・2026年9月1日〜10月27日の日次、11月14日〜12月5日の宿泊日別に45日前〜2026年10月26日の観測)。主要府県比較(表4)は同じ月次集計を東京都・大阪府・兵庫県・福岡県・北海道について取得した。データ時点は2026年10月27日。
■ 試算前提
表5は2025年11月確定値(ビジネス¥21,610・シティ¥31,958)に、9月確定の前年比(−2.4%/−14.6%)、1〜9月単純平均の前年比(−2.2%/−7.2%)、2026年10月27日時点推定値の水準(+14.4%/+11.0%相当)を当てた3通り。表6のRevPAR指数は(1+単価の前年比)×推定OCC÷91%×100で、基準の91%は11月後半の主要宿泊日の水準を目安に置いた想定値。いずれも予測ではなく、置き方による幅を示す試算である。
■ 限界・留意点
推定成約ADRは販売データからの推定値で、公表運営実績との照合で誤差中央値は6.6%。月次・都道府県×業態の中央値水準であり、個別施設の実績とは一致しない。推定OCCはOTA掲載在庫ベースで、掲載外の客室を消化済み側に数えるため実客室稼働率より高めに出る。100.0%前後の日は掲載残室がほぼ尽きた販売停止に近い状態を表す。上場REITの公表実績は全国ポートフォリオの値で、集計基準も異なるため水準の比較には使っていない。
■ 市場データ
