【StraightTalk】元外交官のジョシュア・ウォーカーが語る、ルムズ海峡、イスラエル、米国政治の現在地
ホワイトハウスを訪れたイスラエルのネタニヤフ首相(写真:UPI/アフロ)
イラン戦争から脱出する糸口が見出せないアメリカだが、11月には中間選挙が控えている。トランプ政権に対する反動で民主党の急進左派勢力が支持を集めているが、アメリカはどうなっていくのか。ジャパン・ソサエティー理事長兼CEOのジョシュア・ウォーカー氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)
覚書は交渉の出発点
──アメリカとイランは、6月18日に戦闘終結や相互の武力行使停止などを定めた覚書(MOU)に署名しましたが、6月25日に、イランがホルムズ海峡を航行中の貨物船をドローン攻撃して戦闘が再開されてしまいました。
ジョシュア・ウォーカー氏(以下、ウォーカー):イランは極めて特殊な国ですが、トランプ大統領もかつてないタイプのリーダーです。2つの特異点を合わせて外交的な合意を成立させたとしても、そもそも特殊な両者ですから、事態が悪化したり激化したりするリスクは常にあります。
もう一つ異例なのは、アメリカが圧力やミサイル攻撃を既にやり尽くしてしまった印象があるということです。駆け引きの材料はもはや少なく、残された大掛かりな選択肢は軍事侵攻(地上戦)ですが、政治的な理由から実行できるとは思えません。
アメリカもイランも本心では地域全体を巻き込む全面戦争を望んではいないし、市場や同盟国の動向にも注意を払っています。対話の窓口がまだ開かれていることは大きな救いで、双方が緊張を高めつつも一線を越えることはないという外交的な膠着状態に陥っています。
──覚書(MOU)はかなりイランに譲歩した内容に見えました。
ウォーカー:軍事的な対立という枠組みの中での交渉ですから、覚書は最終的な合意ではありません。むしろ交渉の出発点だと思います。今後の交渉では双方が妥協し合うことになるでしょう。
確かにアメリカはある程度の譲歩を見せ、同時にイランの行動変容に期待しましたが、実際にはそうならず、再び対立に戻ってしまった。書面上の合意が、必ずしも戦略的な信頼関係を生むわけではないということです。
