DS N°8が提供する価値とは?
DS N°8 ETOILE 車両本体価格:1005万円(試乗車1083万円)一充電走行距離(WLTCモード):750km
ステランティスのフレンチ・ラグジュアリーブランド「DSオートモービル」が展開する新たなフラッグシップモデル「DS N°8」に乗ってみた。
ディーエス・ナンバーエイトと読むこのモデルはDSのトップモデルで、フランスでは、マクロン大統領が特別仕様の「PRESIDENTIAL DS N°8」に乗って公式行事に登場したことでも注目を集めた。
DS N°8はフラッグシップモデルとはいえ、いわゆるプレミアムブランドのようなイメージ展開はしておらず、ラグジュアリーを追求したモデルに位置付けている。それは「フレンチ・ラグジュアリー」といった世界観の中にいる。
単に高価で豪華なものではなく、それを彩る卓越した職人技にこだわり、さらに歴史や文化を強く意識した、アートに寄り添ったものづくりの世界観ということだ。
考えてみれば、たしかにエルメスは馬具工房、ルイ・ヴィトンは旅行用トランクの製造を原点とし、素材を扱う技術と職人の手仕事によって価値を高めてきた。
DSオートモービルは、そうしたラグジュアリーを強く意識したモデルというわけだ。
名前も「N°8」だ。香水で有名なシャネルN°5とイメージが繋がってくる。マリリン・モンローが「夜寝る時に何を着ているか?」という質問に「シャネルN°5を数滴だけ」と答えたエピソードは有名だ。
ステアリングホイールのスポークは「X」字型。
そうした背景を脳内に押し込み、このDS N°8を眺めてみると、細部にわたるこだわりが見えてくる。ドアを開けた瞬間、タンカラーの高級ナッパレザーシートで覆い尽くされたインテリアに、「X」型のステアリングが目に飛び込んでくる。センターコンソールには光が拡散するようなデザインが施され、スピーカーが埋め込まれたドアパネルまでデザインが刻まれている。
DSオートモビルの最上級モデルらしいインテリア。2024年12月に発表、2025年の後半に欧州でデリバリーが開始された。
ステアリングのXデザインをさらによく見ると、内側は「クル・ド・パリ」が刻まれている。小さな四角錐(ピラミッド型)形状のスタッズが規則正しく並んだ模様をアイコンとしたデザインだ。これは、いわゆるフランスの高級モノづくり技法のひとつであり、匠の技が随所に散りばめられているのだ。
このX型デザインで運転しにくくないのか?と気になるかもしれないが、もちろん、握りにくさはまったくなく、新たなドライビングプレジャーさえ感じられる。
ただ、そうした疑問はどの価値観から湧き出てくるのだろうか。固定観念がもたらす価値観ではないのか。T字型が正しいということか。保守的な思考が残念な部分に思えてくる。
ルーフは前面ガラスルーフ
ルーフは全面ガラスルーフになっているが、放射状に広がるラインが描かれている。こうしたデザインをすることで、他とは一味ちがった高級感や満足感、ブランド力を感じさせている。
一方で環境にも配慮しながら、ラグジュアリーを追求している。センターコンソールは2段構造で、浮遊感のあるデザインになっているが、再生したアルカンターラ素材を使用し、ナッパレザー、ブラッシュドアルミと組み合わせてゴージャスさを生み出している。シートやインパネにはリサイクルされたファグリックやプラスチックを使った仕様もあり、またクロムパーツの使用を避け、塗装仕上げを採用するなども行なっているのだ。


ブドウ畑や丘陵地帯に広がる小麦畑などの景色は似合う
さて、メカニカルな部分では、ステラ・ミディアム(STLA Medium)というステランティス・グループが開発したプラットフォームを採用したバッテリーEVになっている。97.2kWhの大容量バッテリーを搭載し、WLTPモードで航続距離は750kmとクラストップレベルだ。実際の走行でも都内から横浜、そして栃木の佐野周辺をドライブして都内に戻ってもまだ200kmほど走行可能距離が残るほどで、一日中走り回っても電欠するような場面はないだろう。
モーターを前後に搭載したAWDで、回生ブレーキは3段階で変更できる。またワンペダル走行も可能で、フォーミュラEに長く参戦した経験がフィードバックされた制御だ。モーターのレスポンスは言うまでもなくリニアであり、アクセル操作に対して忠実に反応する。
日本らしい風景をバックにしてみる。
やはりこちら背景のほうがしっくりくる。全長×全幅×全高:4845mm×1900mm×1585mm ホイールベース:2905mm トレッド:F1635mm/R1635mm 最小回転半径:5.9m 試乗車はオプションの255/40R21サイズのグッドイヤー・イーグルF1アシメトリック6を装着
ボディフォルムは低いルーフラインを持つSUVクーペデザインだ。オプションでボンネットフードをブラックにした試乗車は、その存在感の強さと豪華さが伝わってくる。日本の原風景的な景色に置いてみると、なんとも違和感があり景色に溶け込まない。
一方、石造りの建物の前に止めてみれば、すんなりと違和感なく景色に溶け込んでいく。この感覚もフレンチ・ラグジュアリーなのだろうか。ブドウ畑や丘陵地帯に広がる小麦畑などの景色は似合うのだろう、でもお米のたんぼは似合わないし、ビニールハウスも似合わない摩訶不思議。
急速充電はもちろんCHAdeMOに対応。最大充電能力は、本国仕様では160kW。日本では急速充電器側の性能もあって、130kW程度と見込まれている。
そうしたイメージを感じさせてしまうデザイン力を痛感する。今の時代、SDVやフィジカルAIによってクルマの価値が大きく変化していくなかで、デザインによる満足感を作り出せるモデルは少ない。あのフェラーリでさえルーチェでは賛否があるほどで、視覚からくる価値創造の難しさを思い知らされるモデルなのだ。




DS N°8 ETOILE
全長×全幅×全高:4845mm×1900mm×1585mm
ホイールベース:2905mm
車重:2300kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rマルチリンク式
駆動方式:AWD
駆動モーター
形式:交流同期モーター
フロント
最高出力:207kW(281.4ps)/7500rpm
最大トルク:343Nm/250-5300rpm
リヤ
最高出力:83kW(112.8ps)/14000rpm
最大トルク:166Nm/0-4735rpm
システム最高出力:257kW(350ps)
バッテリー容量:97.2kWh
総電圧:400V
交流電力量消費率WLTCモード:114Wh/km
市街地モード 151kW/km
郊外モード 153kW/km
高速道路モード 163kW/km
一充電走行距離(WLTCモード):750km
車両本体価格:1005万円
