記事のポイント

OpenAIは厳格なEU法をクリアするため、明示的な同意を得たユーザーにのみターゲティング広告を配信し、非同意者には会話の文脈に連動する広告を出す二段構えの戦略をとる。

米国での成功パターンを踏襲して英国でも代理店などを巻き込んだ配信実験を開始し、現地の広告主のあいだでは参入への激しい争奪戦が起きている。

毎日のようにシステムを更新し「文脈の指示機能」などを追加している背景には、近い将来の株式公開(IPO)や将来的な巨額の売上目標がある。

OpenAIがヨーロッパでChatGPTに広告を表示するための基盤整備を開始してから数週間。現在、特にそれらの広告がヨーロッパのプライバシー法にどう準拠するかについて、具体的な枠組みの構築が始まっている。

OpenAIは、6月2日に追加されたEU広告ポリシーの最新版で、明示的に同意したユーザーに対してのみ広告を配信すると述べている。また、個人データを処理するための法的根拠として、「正当な利益」に依存するのではなく、ユーザーの「同意」を根拠とするとしている。正当な利益とは、ユーザーに直接確認することなくターゲティング広告を配信するため、一部の企業が用いている広範で議論の多い根拠のことだ。

EUの一般データ保護規則(GDPR)では、この区別が重要となる。なぜなら、同意にはユーザーによる明確かつ積極的な意思表示が必要で、いつでも撤回できると定められているためだ。

「Free(無料版)とGo(有料版)のユーザーに表示される広告をパーソナライズする際、ユーザーに同意を求める」とポリシーには記載されている。

ポリシーによれば、ユーザーがこれらのアプリでのデータ利用に同意した場合、過去のチャット、メモリ、広告履歴、広告主から提供されたデータに基づき、パーソナライズされた広告が表示される。一方で、データ利用に同意しない場合は、一般的な広告が表示される。これには、位置情報や日時など、ChatGPTで行われている会話の文脈のような「限定的な情報」のみが使用される。つまり、厳密にパーソナライズされた広告ではなく、コンテクスト(文脈)に応じた広告が表示されることになる。

英国での広告配信テスト開始と米国ツールの活用

このポリシー更新は、英国でChatGPTの広告が表示され始めたことを受けて行われたが、依然としていくつかの注意点がある。

OpenAIのグローバル広告責任者であるデイブ・ドゥーガン氏は6月6日にLinkedInで、「昨夜、英国でChatGPT広告を開始した。ザランド(Zalando)の(AI・データ・プラットフォーム担当ディレクター)アレハンドロ・サウセド氏とそのチームなど、業界屈指の人材と協力できることを誇りに思う!」と述べている。電通もその後、自社のクライアントが英国の広告パイロットプログラムに参加していることを認めた。

今回の試験運用は、2月に米国でプログラムが開始された時の状況をほうふつとさせる。当時、広告管理ツールが数週間利用できなかったため、広告主はOpenAIの担当者を通じて広告を購入していた。しかし、広告管理ツールが公開されると、広告主はセルフサービスプラットフォームを通じて直接広告を購入できるようになった。この機能は英国にはまだ導入されていない。現時点では、米国のユーザーのみが広告管理ツールで広告を購入できる。

英国での展開は、米国での2月の戦略を踏襲している。まずOpenAIの担当者を通じて広告枠を販売し、その後セルフサービスに切り替えるというものだ。広告管理ツールは依然として米国限定だが、米国の広告主はツールを使って英国の広告枠を購入できる。Digidayが検証したスクリーンショットや動画によれば、過去3日間、広告管理ツールに英国が選択肢として表示されている。

スレッド(Thrad)のCEOアンドレア・トルテラ氏は、「6月2日に英国が選択肢として追加されていることに気づいた。ごく最近のことだが、このパイロットプログラムがいかに迅速に進められているかがわかる」と述べている。

広告主の急ピッチな準備とターゲティング機能の進化

そう感じているのはトルテラ氏だけではない。アドセナ(Adthena)のCMOアシュリー・フレッチャー氏によれば、このポリシー更新をきっかけに、英国の広告主は「大慌て」で準備を進めているという。フレッチャー氏のチームは2月から広告主をパイロットプログラムに参加させてきた。

「英国のエージェンシーパートナーからは、一部のキャンペーンはまもなく英国で開始されるが、ほかのキャンペーンについては、今後7日以内に開始される予定だと聞いている」とフレッチャー氏は述べている。

ヨーロッパへの進出は、OpenAIがほぼ毎日のように機能を追加し、試験運用を拡大していることを示す、ほんの一例にすぎない。

米国のユーザーは、広告管理ツールでキャンペーンに「1日当たりの予算」を設定できるほか、オプションとして「コンテキストヒント」を設定できるようになった。これは、広告主が自社の製品やサービスが関連すると考える会話、トピック、キーワードを記入できる欄で、OpenAIが適切なユーザーをターゲティングする機能を支援するものだ。

OpenAIにとって、適切な広告戦略は極めて重要だ。同社が株式公開(IPO)を実現するには黒字化への道筋が必要であり、広告販売で稼ぐ以上に効果的な方法はほとんどない。すでに、年末までに25億ドル(約4000億円)の広告収入を見込んでおり、2030年までには1020億ドル(約16兆3400億円)に跳ね上がると予測している。

OpenAIにコメントを求めたが、回答は得られなかった。

[原文:ChatGPT ads land in U.K. as OpenAI outlines EU privacy rules]

Krystal Scanlon(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:京岡栄作)

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