世田谷美術館(東京都世田谷区)で、「ふたりのアフリカ、手仕事の宇宙―人類学者・川田順造と陶芸作家・小川待子のコレクション」が7月11日から開催されます。

本展では、人類学者・川田順造と陶芸作家・小川待子が、1970年代の西アフリカでの調査と生活のなかで主に集めた手仕事のコレクションが披露されます。ひょうたんを活かした器や儀礼用の楽器、草編みのかご、染織、土器、木彫、絵画など約350件をとおして、サバンナの暮らしに根ざした精緻でダイナミックな造形の世界が楽しめます。

ヨーロッパ・西アフリカ・日本という3つの異なる視座から文化を見つめ、口頭伝承が豊かに息づく社会を調査するかたわら、人々の暮らしの道具からうかがえる世界観を洞察した人類学者・川田順造(1934-2024)。1970年代、夫の川田の調査助手として西アフリカのサバンナの国・ブルキナファソで3年半生活し、帰国後は独自の「うつわ」の制作により国内外で高く評価されてきた陶芸作家・小川待子(1946-)。ふたりが主に現地調査のなかで集め、日本に持ち帰ったさまざまな手仕事は、1980年代にその一部が公開されて以来、長らく展観の機会がありませんでした。

本展では、エッセイの名手でもあった川田の『サバンナの博物誌』などに記された言葉を手がかりに、600件をはるかに超える夫妻のユニークなコレクションから約350件を選りすぐって展示されます。

川田順造・小川待子邸 撮影:渞忠之

ふたりのアフリカ、手仕事の宇宙
―人類学者・川田順造と陶芸作家・小川待子のコレクション

会場:世田谷美術館(東京都世田谷区砧公園1-2)

会期:2026年7月11日(土)~9月6日(日)

開館時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)

休館日:月曜日 ※ただし、7月20日(月・祝)は開館、翌21日(火)は休館

観覧料:一般1,400円、65歳以上1,200円、大高生800円、中小生500円
※未就学児は無料
※障害者の方は500円。ただし小中高大専門学校生の障害者の方は無料
介助者(当該障害者1名につき1名)は無料
※高校生、大学生、専門学校生、65歳以上の方、各種手帳をお持ちの方は、要証明書類提示

アクセス:東急田園都市線「用賀」駅から徒歩15分(または用賀駅からバス)

詳細は、世田谷美術館公式サイトまで。

展覧会の見どころ
1. 西アフリカのさまざまな手仕事を一望できる機会

アフリカの染織やアートに注目する展覧会が開かれる一方、アフリカの手仕事を生活文化として横断的に捉える機会は、近年あまりありませんでした。本展は、ひょうたんの器、草編みのかご、素焼きの壺、多彩な布、そして木彫の仮面や椅子などを一堂に展観し、その手仕事の広がりを見渡すことができます。

《儀礼用仮面》ブルキナファソ 1970年代収集 川田順造・小川待子コレクション 撮影:渞忠之
2. 人類学者・川田順造がのこした珠玉の言葉と写真

会場では、エッセイの名手でもあった川田の『サバンナの博物誌』(1979年)などから抜粋した言葉のほか、川田がフィールドで撮った珠玉のモノクロ写真を厳選し、パネル等で紹介されます。川田の言葉とまなざしを手がかりにしながら、サバンナの手仕事にふれる構成になっています。

3. 最終章は、アーティストの小川待子によるディレクション

1970年代の収集を核としつつ、1980年代以降も少しずつ増え続けたアフリカの手仕事、また交流のあるアフリカの作家の作品は、長年にわたり川田と小川の暮らしを彩ってきました。展覧会の最終章となる「海の見える家――ふたりのアフリカ」では、小川待子が空間のディレクションに関わります。自宅の再現ではなく、再解釈としての、あらたなイマジネーションの場が生まれます。小川の近作も2点、さりげなく登場する予定です。

川田順造・小川待子邸 撮影:渞忠之
展示構成
イントロダクション: いろどる――赤、白、黒

アフリカに限らず、世界各地の文化で重要な位置を占める色、赤と白と黒。 本展のイントロダクションでは、おもにサバンナの土や草木などによってこれらの色を与えられた草編みや革の小物、布などが紹介されます。

《赤腰布》ブルキナファソ 1970年代収集 川田順造・小川待子コレクション 撮影:渞忠之
1. アフリカとの出会い

第1章では、1960年代の川田順造とアフリカとの出会いや、妻となった小川待子とともに訪れた北アフリカ・チュニジアを起点とする「マグレブ」への旅に着目します。小川が旅先で描きとめ、のちに川田の雑誌連載「マグレブ紀行」の挿絵にもなった、みずみずしいスケッチが初公開されます。

2. サバンナに暮らす

1972年からの3年半、川田と小川は、他に日本人が住んでいなかった西アフリカのサバンナの国、オート・ヴォルタ(現・ブルキナファソ)に暮らし、草編みや土器づくりなど、生活に根ざしたさまざまなものづくりの技術を調査する日々を過ごします。第2章では、「ひょうたんの器」、「草を編む」、「土器をつくる」、「火の熱さ」の4セクションに分けて、大小さまざまなひょうたんの器、口頭伝承で重要な役割を果たす太鼓、草編みのかごやうちわ、素焼きの壺、真鍮のブレスレットなどが展示されます。

《繕い入り鉢》ブルキナファソ 1970年代収集 川田順造・小川待子コレクション 撮影:渞忠之
《平底かご》ブルキナファソ 1970年代収集 川田順造・小川待子コレクション 撮影:渞忠之
《壺》ブルキナファソ 1970年代収集 川田順造・小川待子コレクション 撮影:渞忠之
《男子成人儀礼用楽器》マリ 1970年代収集 川田順造・小川待子コレクション 撮影:渞忠之
3. アフリカの色とかたち

第3章は「布」、「革」、「ビーズ」のセクションから構成されます。手織りの木綿帯を継ぎ合わせ、藍などで染めたブルキナファソの布、マリの泥染めなど、さまざまな表情を見せる西アフリカのダイナミックな染織のほか、クッションなどの革製品、またヨーロッパ人が奴隷貿易の際に使用したことに始まり、やがて西アフリカ現地でも生産されるようになったビーズが一同に会します。

《藍染め腰布継ぎ合わせ》ナイジェリア 1970-80年代収集 川田順造・小川待子コレクション 撮影:渞忠之
4. 海の見える家――ふたりのアフリカ

1980年代末、川田と小川は海の見える高台に家を建てます。それは、ふたりがアフリカで集めて持ち帰ったものとともに暮らす、イマジネーションをかきたてる空間となりました。気の向くまま空間に手を入れ、魅力的に変貌させてきたのは、小川の眼と手です。

第4章「海の見える家――ふたりのアフリカ」は、川田と小川の自宅を彩る、気迫みなぎる儀礼用の仮面をはじめ、ユニークなかたちの椅子や子ども用の木彫り人形、太鼓や弓矢、さらには絵画作品など、100を超えるものたちによって構成されます。 長い時間にわたって育まれてきたサバンナの手仕事の小宇宙が、垣間見えることでしょう。

《動物型椅子》ブルキナファソ 1970年代収集 川田順造・小川待子コレクション 撮影:渞忠之

1970年代、まだ日本人がほとんど足を踏み入れていなかった西アフリカのサバンナの地で、人類学者・川田順造と陶芸作家・小川待子のふたりが、日々の営みのなかに見出した圧倒的な手仕事の数々。それらは単なる記録や民俗資料にとどまらず、今なお強烈な造形的魅力と、サバンナに生きた人々の息づかいを伝え続けています。1980年代を最後に、長らく一堂に会する機会のなかった600件を超える膨大なコレクションから、選び抜かれた約350件が再び光を浴びる本展は、失われつつある「手でつくること」の原点や、モノに宿る豊かな精神世界を五感で追体験できる貴重な空間となるでしょう。暮らしと芸術が地続きにあったアフリカのダイナミックな小宇宙を、ぜひこの夏、その目で確かめてみてはいかがでしょうか。(美術展ナビ)

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