けがさえも「いい記憶」。最後の鈴鹿で示した、461日の意味

NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26ディビジョン1 第18節(リーグ戦)カンファレンスB2026年5月9日(土)17:10 三重交通G スポーツの杜 鈴鹿 (三重県)三重ホンダヒート 38-26 トヨタヴェルブリッツ

けがさえも「いい記憶」。最後の鈴鹿で示した、461日の意味

【🄫ジャパンラグビー リーグワン】

80分の経過を告げるホーンが響く。トヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)のマーク・テレアがボールをこぼした瞬間、レフリーがノックフォワードのジェスチャーを示し、試合終了のホイッスルを鳴らした。

スコアは38対26。65年間を過ごした鈴鹿を本拠地として戦うラストゲームを、三重ホンダヒート(以下、三重H)は勝利で締めくくった。

「さまざまなファンの方々が、これまで三重Hを支えてくれました。最後の試合でトヨタVを相手に勝利を収められたことは、本当にうれしいです」

セレモニーを終えた北條拓郎は、静かな微笑みを浮かべた。天理大学から2024年に加入した北條は、初年度から出場機会を獲得し、昨季はバックスリーダーも任された。しかし昨年2月と11月、二度にわたって左足首を骨折。461日もの間、公式戦のグラウンドから離れた。

鈴鹿での最大の思い出について聞くと、北條は「けが……になっちゃいますね」と苦笑する。しかし、その直後に「でも、それは良い記憶なんです」と続けた。

「さまざまな方と話す機会ができましたし、いろいろなことを学ぶチャンスにもなりました。ある意味、すごく有意義な時間だったんです」一度目の骨折時には精神的にも落ち込み、試合を見ることすらできなかった。しかし、中尾隼太ら同僚の支えもあり、少しずつ前を向けるようになった。そして二度目の離脱時には「まったくメンタルが揺らがなかった」という。

第16節、いきなり先発で復帰を果たすと、その後も2試合連続のスタメン出場。この日もけがの影響を感じさせず、前半19分には混戦のスキを狙ってトライも奪取。心身ともに成長した姿を示した。

試合終了後、三重交通G スポーツの杜 鈴鹿の夜空に無数の花火が咲き乱れた。HEATER(ファンの愛称)とともにその光景を目に焼き付けた北條は、鈴鹿で受けてきた熱いサポートへの思いを口にする。

「勝利で感謝の気持ちを伝えられたことは本当に良かったです。宇都宮に移転したあとも、鈴鹿のファンの応援は絶対に届くと思っています。引き続き、一緒に戦ってくれたらとてもうれしいです」

チームは来季に向けて栃木県の宇都宮市に本拠地を移す。新たな生活に向けて、北條は満面の笑顔で意気込みを語った。

「バイクが好きなので、宇都宮のいろいろなところを走りたいです。栃木の方々がとてもウェルカムな状況を作ってくださっていますし、ラグビーもより一層頑張ります!」

順調なデビューとけがでの苦難、そして成長と復活。鈴鹿で積み上げた経験を胸に、北條は宇都宮で始まる新たなレースへ走り出す。

(籠信明)

【🄫ジャパンラグビー リーグワン】

三重ホンダヒート

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三重ホンダヒート キアラン・クローリー ヘッドコーチ

「前半と後半で、まったく異なる展開になった試合でした。前半はわれわれがいい形でプレーできていましたが、後半はトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)さんにボールを保持され、モメンタムを失い、自陣から脱出できない時間帯が続きました。

ただ、その中で見せた守備への努力は最高でした。われわれは140回以上のタックルを成功させましたし、相手は67回程度でした。仲間のために体を張ってプレーする姿勢を体現してくれたと思います。

プレーオフトーナメント進出まであと5ポイント届かなかったことに悔しさはありますが、ディビジョン1でクラブ史上最高となる8位という結果を残せたこと、そしてそのためにチーム全員が見せてくれたパフォーマンスを誇りに思っています」

──2026-27シーズンの優勝という目標に向けて必要になるのはどんなものでしょうか?

「今季だけでなく、この数年間でチームは本当に成長を見せてきました。ただ、成功には時間が掛かるものです。埼玉パナソニックワイルドナイツさん、クボタスピアーズ船橋・東京ベイさん、コベルコ神戸スティーラーズさんにも、長くクラブに在籍している方々がいます。そういった存在がチームの核になっていくものです。

来季について言えば、残念ながら私はここにはいません。チームに残るみなさん、そして新たに加わる方々が目標を設定していくことになります。ただ、宇都宮へ移転したあとも、さらに積み上げていける土台はできていますし、とてもいい立ち位置にいると思います。

私から言えるのは、今夜のパフォーマンスが本当に素晴らしかったということです。そして、これまでずっと応援してくださった鈴鹿のみなさんに感謝を伝えたいと思います。

まだ公式発表はされていませんが、私は退団します。三重ホンダヒート(以下、三重H)さんからは、契約を更新しないこと、来季からは違った方向性で進むことを伝えられています。残念ではありますが、人生とはそういうものです。

最後なので、私から一言伝えさせてください。3年間、本当にありがとうございました。皆さまのサポートに心から感謝を申し上げます」

三重ホンダヒート ワイマナ・カパ キャプテン

「試合については、ヘッドコーチと同じような印象です。試合の立ち上がりや前半はとても良かったと思います。特に最初の30分間は遂行力の部分で非常にいい形を出せていました。それは選手たちの努力が素晴らしかったからだと感じています。後半は思うようにいかない部分もありましたが、前半で積み上げたものがあったおかげで、うまくリードを保つことができました。

残念ながら目標にはあと一歩届きませんでしたが、65名以上の選手全員でつかみ取ったシーズン最終戦だったと思いますし、とても誇りに感じています。

三重のファンのみなさんには、心の底から感謝を申し上げたいです。65年間、本当にありがとうございました。栃木へ移転したあとも、三重県と鈴鹿市はわれわれの原点であり続けます。これまで支えてくださったからこそ、栃木でも頑張ることができます。移転後も、三重のみなさんを代表するようなプレーを見せていきたいと思います」

──退団が決まった16名の選手に伝えたいのはどんな言葉ですか?

「先ほども言ったとおり、本当に誇りに思っています。それぞれの存在があったからこそのシーズンでしたし、彼らがいなければいまのわれわれはありませんでした。

どのチームでも、この時期は契約に関する話が進むタイミングであり、それぞれ苦しい思いも抱えていると思います。ただ、ここまで来ることができたのは、みんながいてくれたからこそです。これからどんな道に進んだとしても、それぞれの成功を願っています」

トヨタヴェルブリッツ

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トヨタヴェルブリッツ スティーブ・ハンセン ヘッドコーチ

「非常に難しく、そして残念な試合でした。特に前半は、われわれの選手に申し訳なく感じるような判定が多くありました。私が日本で残念に感じていることの一つが、レフリングの基準です。この国でより良いラグビーを作っていくためには、そのシステム自体の改善と向上が必要だと思います。そして、三重Hを称賛したいです。鈴鹿を本拠地として戦う最後の試合で、非常に強いスピリットを見せていました。

われわれの選手も、後半は26-7というスコアで、強い意志を見せて盛り返そうとしてくれました。その意味では、前半と後半で内容がはっきり分かれる試合でした。ただ、オブストラクションの判定でトライが認められない場面もあり、非常にフラストレーションの溜まる内容でした。

私は今季限りでこのチームを退任する立場なので、あえて口にしています。日本ラグビーが本当に成長するためには、レフリングの改善が必要です。

その点について、リーグワン、そして日本ラグビー協会に強く求めたいです。日本の文化では、このような発言はあまり馴染みがないかもしれません。ただ、私が日本ラグビーとトヨタVの選手たちを大切に思っているからこそ、この場で発言させてもらいました」

──TMO(テレビジョンマッチオフィシャル)についても改善が必要ですか?

「世界のラグビー全体を見ても、TMOは時間を掛け過ぎていると思います。本来はミスを減らすためのシステムでしたが、その影響力が大きくなり過ぎています。もっとシンプルにする必要があると感じています。

ラグビーが非常に複雑で、レフリングが難しい競技であることは理解しています。だからこそ、双方をシンプル化する必要があります。

そして、より良い教育が、より良い結果とレフリーのパフォーマンスにつながります」

トヨタヴェルブリッツ 奥井章仁ゲームキャプテン

「非常に難しい試合でした。前半、自分たちが受けに回ってしまったことで、三重Hさんにいいプレッシャーを掛けられてしまいました。後半は『自分たちのプライドを取り戻そう』と話し合い、シンプルにラグビーを楽しんでプレーできたと思います。

ヘッドコーチも話していたように、スコアを見ても分かるとおり、前半と後半で自分たちのラグビーは大きく変わりました。後半は、トヨタVのラグビーがどういうものかを見せることができたと思いますし、それを来シーズンにもつなげていきたいです」

──初めてのゲームキャプテンでした。前半の苦しい時間帯に、どのような対応が必要だったと感じますか?

「相手が勢いをもって向かってくることは分かっていたので、それを受けるのではなく、こちらからさらに上回る勢いで仕掛けていくべきだったと思います。また、ゲームキャプテンとしては、もっとレフリーとコミュニケーションを取るべきだったと感じています。ただ、今後に向けて非常にいい経験になりました」

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