2026年5月15日 午前7時30分
【論説】福井県小浜市国富地区で国の特別天然記念物コウノトリのペアの卵がふ化し、6年連続でひなが誕生した。隣の若狭町でも3年ぶりに産卵が確認され、ひなの誕生への期待がかかる。美浜町では3月、初めての人工巣塔が設置された。コウノトリの定着・繁殖に向けた取り組みが嶺南で広がりをみせている。
国富地区は国内からコウノトリが絶滅する前の1964年に野生種が最後に繁殖した象徴的な場所として知られる。再びコウノトリが舞い降りる地域づくりを目指し2011年、住民有志が「コウノトリの郷づくり推進会(コウの会)」を結成、地元の子どもたちとビオトープの整備や生き物調査など地道な活動を続けてきた。19年に地区内に人工巣塔を設置し、21年に待望のひなが誕生した。以来6年連続で朗報が届き、今年は4羽が間もなく巣立ちを迎える。
若狭町では23年に鳥羽地区で産卵が確認されたが、ふ化には至らなかった。今年3月に町内でコウノトリのペアの飛来が目撃され、電柱の上に作られた巣から卵2個が確認された。電気事業者は巣を撤去せず見守ることにしており、間もなくふ化するとみられる。
美浜町でも近年、たびたび飛来が確認され、コウノトリの定着・繁殖への願いを込め今年初めて人工巣塔を設置した。小浜市や若狭町同様、豊かな自然が残る美浜町にも営巣や産卵の可能性は十分あるはずだ。
コウノトリの保護活動には、コウの会のような地元住民の取り組みが大事なのは言うまでもないが、それだけでは限界があるのではないか。小浜市は24年、コウノトリの定着・繁殖推進に向けた「市コウノトリビジョン」を策定した。▽コウノトリが生息できる自然環境の創出▽環境にやさしい農業の推進と農地の保全―などを基本方針に、減農薬や有機農業の推進、子どもたちへの自然環境教育の実施などに取り組むとうたっている。翌25年には同ビジョンを具体化するアクションプランをまとめ、水田ビオトープの設置面積を24年度の0・3ヘクタールから28年度までに2・7ヘクタールに拡大するなどの目標を示した。こうした行政のバックアップは地元住民たちも心強く思っていることだろう。
小浜市、若狭町、美浜町―それぞれの地域で芽生えたコウノトリ定着・繁殖推進の動きを、嶺南全体の活動に広げられないだろうか。まずは情報交換や合同の勉強会、子どもたち同士の交流でもいい。そもそもコウノトリには県境も市町の境も関係ないのだから。
