訓練で、ジャンプしてリングをくぐる技を見せる横田さんとコニー号(大阪市此花区で)
大阪府警鑑識課の横田渉さん(38)と警察犬の訓練は、ちょっと変わっている。胸の高さでリングを持ち、合図をすると、パートナーのジャーマンシェパード「コニー号」(雌、5歳)が駆けてきて、ジャンプして輪をくぐった。まるでショーのようだ。警察官になる前、水族館のイルカショー担当だったという異色の経歴を持つ横田さん。生き物に向き合ってきた経験が、1人と1頭の一体感につながっている。(鈴木彪将) 大阪市此花区にある警察犬訓練センターのグラウンド。横田さんが中腰になり、体を斜めにすると、コニー号は背中を踏み台にして高く跳ねた。「ジャンプが好きだから取り入れた。山や斜面で犬だけを先に行かせる時に活用できる」と横田さん。鑑識課の同僚は「息を合わせるために、こうしたアプローチを取るのは初めて見た」と驚いていた。 今では息ぴったりのコンビだが、出会った当初のコニー号は指示への反応が鈍く、積極性が見られなかった。それでも、イルカと接した経験から、「人間と同じで、イルカにも犬にも好き嫌いがある。動物の思いを読み取ってあげることが、良い向き合い方につながる」と考えて関係を築いてきた。◇
水族館でイルカショーを披露していた横田さん=本人提供 横田さんは香川県出身。短大を卒業後、警察官だった父親の背中を追いかけたいと思ったが、数年は大好きな生き物とふれ合う仕事に没頭しようと決め、水族館のスタッフに就いた。スキューバダイビングショップも営んだ。 イルカショーでは、イルカの気分が乗っているかどうかを気にかけた。ご褒美に使ったのは好物のイカ。見えるように手に持って動きを指示すると、パフォーマンスが良くなったという。「好きなもので楽しませてから、気の進まない芸にチャレンジして、頑張った後はまた楽しいことをする、というふうに工夫していた」 2009年に府警に入り、23年から警察犬係を務めている。 コニー号が訓練センターで跳びはねている姿を見て、ジャンプが好きだと気づいた。おもちゃ店で買ったフラフープをリングにして、訓練にジャンプを取り入れると、一緒にいて楽しいと感じてもらえたようで、コニー号の表情が明るくなった。 心を通わせてきた成果が出始めている。2月上旬の夜、大阪狭山市で高齢男性が行方不明になり、犬を連れて出動した。コニー号は、人の気配が感じられない田舎道を進む。「信じよう」。約500メートル離れた路上で、立ちすくむ男性を見つけた。認知症があり、家を探してさまよっていたらしい。「帰れなくなった」と涙を流す男性を見て、「よかった」と思った。「人の感覚では思いつかない方向だった。コニーと一緒に見つけられて、2倍の喜びです」◇ 警察組織では、警察犬と担当者の理想の関係を「人犬一体」と表現する。横田さんも、少しでも理想に近づこうと、今はコニー号が苦手な屋内での行動訓練にも励んでいる。 最近、犬のおやつとして販売されている「鶏のトサカ」が好きだと気づいた。「鹿肉や牛タンを試していたけれど、意外にも安価なトサカがお気に入りだった」と笑う。新たな一面を知れば、絆も深まる。「行方不明者や容疑者の痕跡など、僕たちだからこそ見つけられるものがあるはず」。そう信じて、横田さんは今日もコニー号と駆ける。
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