猫の抜け毛は、飼い主にとって日常的な悩みだ。ブラッシングには手間がかかり、嫌がる猫も少なくない。電動ブラシも市販されているが、毛が絡まったり故障したりする懸念もある。2023年に深圳市で設立されたペット用品スタートアップ「橘猫宇宙(PawSwing)」は、猫用ハウスの入り口にブラシを取り付け、猫が出入りするたびに抜け毛を集める仕組みを考案した。
同社はこのほど、プレシリーズAで数千万元(数億円)の資金調達を実施した。香港科技大学の高秉強教授と同氏が管理する高鋒耐心基金、前海創新投資などが出資した。資金は技術開発や製品改良、特許の取得、販路拡大に充てるほか、量産と納品体制の整備にも活用するという。
猫が出入りするだけでブラッシング

同社初の製品「PawSwing Neo」は、猫用ハウスの出入り口にブラシを取り付けた抜け毛収集器だ。狭い場所に入りたがる猫の習性を利用し、出入りするたびに抜け毛をブラシで取り除いて集める。ハウスとして休んだり、餌を食べたり、爪を研いだりすることもできる。
ネット接続やセンサー、AI機能を備えたハイテクペット用品も増えるなか、Neoはモーターや電池、センサー、回路を一切搭載せず、機械構造だけで動く。創業者の田佑任氏は、ペットは自ら危険を避けることができないため、複雑な電動部が故障すればけがにつながる恐れがあると説明する。
開発チームは当初、モーターを搭載し猫の体格に合わせて通路の大きさを調整することも検討したが、最終的に見送った。代わりに、猫が自分の力で出入りする際にブラシ部分が動くようにし、体格にかかわらず、体にかかる圧力を一定に保つよう設計したという。
ブラシ部分は猫の舌の表面にある突起を参考にし、抜け毛をつかむ力や接触時の抵抗、製造方法などを調整した。同社が、ブラッシングに必要なエネルギー1ジュール当たりに取れる毛の量をテストしたところ、一般的な手動ブラシが約0.5~1.5ミリグラムなのに対し、PawSwing Neoは3~4ミリグラムに達したという。
約200ドルで販売、欧州の3000店超に展開

PawSwing Neoはまず海外のクラウドファンディングで需要を確かめ、現在は約200ドル(約3万1600円)で販売している。同社によると、返品率は全体で3%未満と、ペット用品業界の平均を大きく下回る。2026年には欧州最大のペット用品専門チェーンが同商品の取り扱いを始め、3000店以上で販売されるようになった。北米やオーストラリアでの展開も加速している。
田氏は、新しいカテゴリーの製品には比較対象がなく、当初は「単なる話題づくりではないか」と疑う声や、猫がけがをしないかと危惧する声が多かったと説明する。
価格設定にも課題があった。初代製品は価格を低めに設定したため、送料や販売プラットフォームの手数料、返品・交換費用、マーケティング費用を差し引くと、ほとんど利益が残らなかった。その後、価格を引き上げたところ、かえって販売が伸びたという。田氏は、材料費や製造コストだけでなく、販売にかかる一連の費用を考慮する必要があると述べる。
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同氏によれば、海外では消費の約85%をオフライン(店舗)が占めているため、まず売れ筋商品で大手チェーンへの販路を開拓し、その販売網を活用して後続の商品を展開する方針だ。
今後はセンサーや視覚認識機能を備えたバージョンも投入する計画だが、センサーが故障しても機械構造によって安全性を確保できる設計を貫くという。26年末に新製品を発売し、27年には第2世代のフラッグシップモデルを投入する予定だ。
*1ドル=約158円で計算しています。
(36Kr Japan編集部)