
ホテル用地の取得が難しくなっている沖縄本島中南部で、まとまった面積が新たに市場へ出てくる経路はほぼ一つしかない。駐留軍用地の返還跡地である。2013年の「沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画」により、嘉手納飛行場以南で1,000ヘクタール以上の返還が予定されている(内閣府)。本稿では、この返還跡地を「沖縄の需給」ではなく「用地はどこから出るか」という一次供給ルートとして読み解き、跡地を抱える浦添市・宜野湾市の客室ストックが現時点でどれだけ薄いかを実データで定量化する。
本記事における指標の定義
ADR(平均客室単価):各施設がOTA等で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値、REIT月次公表値との整合性検証で概ね数pt程度の精度を確認済)。本稿では県単位(マクロ)のみで用い、市町村単位・個別施設のOCCは算出していません。
掲載価格:言及する箇所は2名1室利用時の1室あたり料金(税込)・全プラン平均です。
客室ストック:メトロエンジンリサーチが把握する範囲での運営中施設の登録客室数合計(2026年9月時点)。OTA未掲載の小規模宿を含む一方、全数調査ではありません。
Key Takeaways
— 嘉手納飛行場以南で1,000ha超の返還が予定されており、稠密な中南部でまとまった用地が新規に出てくる経路は事実上これ1本に集約される。
— 跡地を抱える浦添市はホテル業態4軒43室、宜野湾市は7軒583室。那覇市16,614室に対して149分の1・23分の1で、人口10万人規模の市としては極端に薄い。
— 薄さの原因は需要ではなく用地。浦添市は市域の約14%が牧港補給地区、宜野湾市は約25%が普天間飛行場で、海側と幹線沿いという最も値の出る立地が基地・港湾用地だった。
— 需要側は整っている。県全体の推定稼働率は2026年7月で91.0%(1,083施設・51,693室)、推定成約ADRの夏季ピークは2年で約11,700円→約13,700円へ切り上がった。
— 取得できる時期は返還日ではない。西普天間住宅地区の実測では返還から中核施設稼働まで約10年。地価は先行しており浦添市商業地+7.14%・宜野湾市+8.89%と、待つほど取得コストは上がる。
既刊との線引き — 本稿が扱うのは「量」でも「都心」でも「離島」でもない
沖縄のホテル市場については、当メディアでも複数の切り口で扱ってきた。混同を避けるため、本稿の位置づけを先に明示しておく。
用地を探すデベロッパー、跡地開発に参画する事業会社、沖縄案件を審査する地銀・ファンドにとって、問いは「沖縄に部屋が足りているか」ではない。「まとまった土地がいつ、どこから、どういう条件で出てくるか」である。中南部の市街地はすでに稠密で、数ヘクタール単位の更地はほとんど流通しない。だからこそ返還跡地が一次供給ルートとして効いてくる。
返還跡地という一次供給 — 公表値で確認できる4つの受け皿
中南部の返還跡地のうち、面積・時期・跡地利用の方向性が公的資料で確認できる主要案件を整理する。以下はいずれも国・県・市の公表資料に記載された数値をそのまま引いたもので、推測値は含まない。
表2:沖縄本島中南部の主要な返還跡地(面積・現況)
施設・地区所在面積現況・見通し
嘉手納飛行場以南(統合計画・合計)中南部1,000ha以上2013年公表の統合計画に基づく返還予定(内閣府)
キャンプ瑞慶覧・西普天間住宅地区宜野湾市約51ha2015年3月返還・2018年3月引渡し。跡地は沖縄健康医療拠点/商業ゾーン/総合公園。琉球大学病院は2025年1月開院、医学部は2025年4月開学(宜野湾市)
牧港補給地区(キャンプ・キンザー)浦添市市域の約14%2024年に「牧港補給地区跡地利用計画」を策定。国道58号沿いの一部は返還済み(浦添市)
那覇港湾施設(那覇軍港)那覇市56.8ha浦添ふ頭地区の約49haの代替施設へ機能移設後に返還(沖縄県)
普天間飛行場宜野湾市480.6ha市面積の約25%を占める。返還は代替施設の移設が前提(宜野湾市)
出典:内閣府「駐留軍用地跡地利用の推進」、宜野湾市、浦添市、沖縄県の各公表資料よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成
ここから読み取れる論点は3つある。第一に、すでに「実装済み」の先行モデルが存在すること。西普天間住宅地区は2015年に返還され2018年に引き渡され、2025年には琉球大学病院が開院し医学部が開学した。返還から利用開始まで約10年という実績値がここにある。第二に、浦添市は市域の約14%という規模の跡地を単一自治体で抱えていること。跡地利用計画は2024年に策定済みで、行政側の準備は先に進んでいる。第三に、那覇港湾施設の返還は浦添ふ頭地区への移設と一体であり、那覇と浦添の西海岸が同じ一つの事業として動く構図になっていることだ。跡地そのものを開発案件としてどう収益化するかという視点は、中部の事例を扱った沖縄本島中部 米軍跡地ホテル開発の全貌で別途整理している。
用地取得の観点で最も重要なのは、これらの跡地の多くが民有地だという点である。浦添市の跡地利用計画が対象とする牧港補給地区は、返還後に地権者との調整・区画整理を経て土地が動く。つまり返還日がそのまま取得可能日ではない。西普天間の「返還2015年→引渡し2018年→施設開院2025年」というタイムラインは、その現実的なリードタイムを示す唯一の実測サンプルである。所有ではなく借地で事業を組み立てる選択肢については、9市場で上限地代を逆算した別稿が判断材料になる。
跡地を抱える2市の客室ストックは、那覇の1/23と1/149
では、その跡地の足元にどれだけの客室があるのか。メトロエンジンリサーチが把握する範囲で、沖縄本島中南部の自治体別に運営中施設の客室ストックを集計した(2026年9月時点)。
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(沖縄本島中南部12市町村・運営中施設 N=456軒、2026年9月時点)
表3:沖縄本島中南部12市町村の客室ストック(2026年9月時点、N=456軒)
自治体全業態 軒数全業態 客室数ホテル業態のみ 軒数/客室数返還跡地
那覇市22716,614110軒/14,059室那覇港湾施設
北谷町542,05121軒/1,850室キャンプ瑞慶覧の一部
沖縄市4081914軒/682室—
宜野湾市227157軒/583室西普天間住宅地区/普天間飛行場
糸満市206115軒/532室—
うるま市484458軒/316室—
北中城村53654軒/365室キャンプ瑞慶覧の一部
南城市212112軒/145室—
豊見城市31691軒/168室—
浦添市141114軒/43室牧港補給地区/浦添ふ頭
中城村1240軒/0室陸軍貯油施設の一部
西原町190軒/0室—
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(運営中施設のマスター集計、2026年9月時点)。「ホテル業態のみ」はビジネスホテル・シティホテル・リゾートホテルの合計。返還跡地欄は内閣府・沖縄県・各市の公表資料に基づく
数字は明快である。浦添市の客室ストックは全業態14軒111室、ホテル業態に限れば4軒43室。那覇市の16,614室に対して149分の1、隣接する宜野湾市の715室と比べても6分の1にとどまる。宜野湾市も全業態22軒715室、ホテル業態7軒583室で、那覇市の23分の1である。人口10万人規模の市としては、いずれも極めて薄い。
なお、テーマの起点となった「浦添7軒・宜野湾12軒」という数字については自前で再集計した結果、母集団の取り方で値が変わることを確認した。OTA上で価格が継続的に観測される施設に限ると2026年7月時点で浦添市7施設・宜野湾市16施設、施設マスター上の運営中施設では浦添市14軒・宜野湾市22軒、ホテル業態に絞れば浦添市4軒・宜野湾市7軒となる。本稿では最も保守的かつ用途が明確な「ホテル業態」と、比較可能性の高い「全業態」の2系列を併記した。どの基準で数えても、この2市が中南部で最も客室の薄いエリアであるという結論は変わらない。
この薄さには理由がある。浦添市は市域の約14%を牧港補給地区が占め、西海岸は那覇港湾施設の移設先である浦添ふ頭地区にあたる。つまりホテル立地として最も価値の出る海側と幹線沿いが、そのまま基地・港湾用地だった。宜野湾市も市面積の約25%を普天間飛行場が占める。客室が少ないのは需要が無いからではなく、供給できる土地が構造的に無かったからである。逆に言えば、返還が進めば供給余地はここから生まれる。
県全体の稼働率は7月91.0% — 需要側は跡地開発を待っている
用地の話をする前に、需要側の水準を確認しておく。沖縄県全体の推定成約ADRを年次オーバーレイで見ると、夏季ピークの水準が年を追って切り上がっている。2024年7月は約11,700円、2025年7月は約12,800円、2026年7月は約13,700円である。
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(沖縄県・推定成約ADR、対象施設 N=481〜508施設/月、2024年7月〜2026年8月の確定月)
稼働率も高い。2026年7月の沖縄県の稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)は全施設で91.0%(1,083施設・51,693室)、6月は87.3%、8月は87.8%だった。業態別では、シティホテル93.4%、リゾートホテル91.7%、ビジネスホテル91.6%と、いずれも90%台に乗っている。
表4:沖縄県の業態別 推定稼働率(2026年7月・OTA掲載在庫ベース)
業態施設数客室数推定稼働率
全施設1,08351,69391.0%
シティホテル132,89593.4%
リゾートホテル23124,98591.7%
ビジネスホテル17716,59691.6%
デラックス786983.4%
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(沖縄県・2026年7月、OTA掲載在庫ベースの推定稼働率)。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります
価格帯マップ — 宜野湾は北谷と那覇の中間、浦添は測るサンプルすら足りない
次に、跡地を抱えるエリアが現時点でどの価格帯に位置しているかを見る。直近12ヶ月(2025年9月〜2026年8月)の推定成約ADRの平均は以下のとおりである。
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定成約ADR・直近12ヶ月=2025年9月〜2026年8月の平均。対象施設数は棒内に表示)
宜野湾市は約13,700円(N=5施設)で、北谷町の約15,700円(N=23〜25施設)と那覇市の約10,100円(N=136〜141施設)の中間に位置する。西海岸リゾートの代表格である恩納村は約20,500円(N=38〜42施設)で、宜野湾市の1.5倍である。
ここで注意すべきなのは、浦添市の推定成約ADRは対象施設がわずか1〜2施設しかなく、指標として安定しない点である。参考値としては直近12ヶ月平均で約12,200円だが、1施設の価格改定がそのままエリア値を動かす水準であり、投資判断の根拠として使える精度ではない。これ自体が本稿の論点を裏づけている。浦添市は「価格指数を作れるほどの母集団すら存在しないマーケット」なのである。市場が薄いのではなく、市場がまだ立ち上がっていない。
地図で見る — 跡地と既存客室の位置関係
浦添市・宜野湾市の既存宿泊施設と、返還跡地の位置関係を地図上に重ねた。円の大きさは客室数を表す。宜野湾市の客室が西海岸の宜野湾コンベンションエリアに集中し、浦添市は国道58号沿いに小規模施設が点在するのみであることが視覚的に確認できる。
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(施設位置・客室数)、内閣府・沖縄県・各市公表資料(跡地位置)
宜野湾市の客室583室(ホテル業態)のうち、上位2施設だけで480室を占める。西普天間住宅地区は市の東側内陸に位置し、琉球大学病院という新たな需要発生源が2025年1月に稼働した。医療機関の周辺には患者家族・医療従事者・学会参加者という滞在需要が生まれるが、宜野湾市の現状の客室ストックは西海岸側に偏っている。医療滞在ホテルの成立条件を別稿で整理したが、西普天間はまさに「都市クリニック近接型」の条件が揃いつつあるエリアである。
浦添市は国道58号と西海岸のあいだが牧港補給地区であり、既存施設は58号の東側に押し込まれている。浦添ふ頭地区が動けば、那覇空港から車で20分圏の海側にまとまった開発用地が生まれる構図になる。
地価は先に動いている — 浦添市商業地+7.14%、宜野湾市+8.89%
用地の一次供給が視野に入る前から、この2市の地価は上昇している。2026年の公示地価では、浦添市の商業地平均は27万4,000円/㎡で前年比+7.14%、住宅地平均は16万4,416円/㎡で+5.07%。宜野湾市は市町村別の変動率が+8.89%で県内上位に位置し、住宅地の上昇率トップは宜野湾市野嵩三丁目の+18.6%だった。沖縄県全体の住宅地は+6.4%で、全国8位である。
出典:国土交通省「地価公示」(2026年)、沖縄タイムス「【沖縄の公示地価2026】地価上昇率ランキング」、土地代データ(国土交通省 地価公示をもとにした集計)
地価が先行して上がっているという事実は、用地取得コストの観点では逆風だが、市場が跡地の将来性を織り込み始めているシグナルでもある。ホテル用途で採算が成立する地価上限については別稿で9エリアの逆算を行っており、またマンション用途との用地競合も中南部では現実的な論点になる。宜野湾市の住宅地上昇率が突出しているのは、跡地が住宅・医療用途で先に評価されていることの反映と読める。ホテル用途で用地を取りにいく場合、住宅・商業との競合を前提とした事業性の組み立てが必要になる。
建築計画には浦添市に200室が1件 — 現ストックの1.8倍規模
足元の建築パイプラインを国土交通省「建築物動態統計調査」から確認すると、沖縄県内でホテル用途として登録されている計画のうち、中南部の該当は浦添市西原6丁目の1件(200室・地上17階・延床20,700㎡、2023年4月着工/2026年7月完了予定)である。
この1件が持つ意味は大きい。浦添市の現在の客室ストックは全業態で111室であり、200室の施設が1棟稼働するだけで市内の客室数は約2.8倍になる。ホテル業態に限れば43室が243室へと5.7倍である。つまり浦添市は、1棟の意思決定がマーケット構造そのものを書き換えてしまうほど薄い。先行者にとってはパイオニア・プレミアムが取れる環境である一方、2棟目・3棟目が同時期に入ると需給が一気に変わる点は織り込むべきだろう。
※調査時点での確認申請ベース。確認申請は通常、開業の1〜2年前に行われるため、今後の申請追加により件数・客室数は増加する見込みであり、現時点での確定パイプラインの下限値として参照されたい。
なお、跡地のように市街化区域の内外・用途地域の指定が開業スケジュールを左右する論点は沖縄に限らない。全国の開業案件を許認可の側から見た2026年新規開業の61%は市街化区域の外も、跡地開発のリードタイムを見積もる際の参照軸になる。
出典:国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成
事業性の感度 — リードタイム3シナリオとADR×OCC
ここまでの数値は、いずれも「いま観測できる事実」である。用地を取りにいく側が実際に判断するのは、そこから先のいつ取得できるかといくらで回るかの2点になる。以下は本稿で確認した公表値・実測値だけを前提に置いた感度整理であり、特定案件の収支予測ではない。
① リードタイム — 返還から客室供給までの3シナリオ
沖縄の跡地開発で、返還から実際の施設稼働までを通しで観測できたサンプルは西普天間住宅地区の1件しかない。2015年3月返還・2018年3月引渡し・2025年に中核施設(琉球大学病院)稼働という実測値を中位ケースに置き、上下を振ると次のようになる。
表5:リードタイム3シナリオ — 返還から用地取得・開業まで
シナリオ
前提
用地取得可能時期
開業時期の目安
楽観
跡地利用計画が策定済みで区画整理が先行し、部分返還区画から段階的に土地が動くケース。牧港補給地区の国道58号沿いはすでに一部返還済みで、この形に該当する。
返還から3〜4年返還から6〜7年
中位
西普天間住宅地区の実測どおりに進むケース。返還から引渡しまで3年、そこから基盤整備と用途配分を経て中核施設が動くまで通算約10年。
返還から5〜6年返還から9〜11年
悲観
返還そのものが代替施設の移設完了を前提とするケース。普天間飛行場と那覇港湾施設がこれにあたり、移設完了時期が確定していないため返還日自体が動く。
返還時期が未確定15年以上/判定不能
前提:西普天間住宅地区の返還・引渡し・稼働実績(宜野湾市)、牧港補給地区跡地利用計画(浦添市・2024年)、那覇港湾施設の移設経緯(沖縄県)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。実測サンプルは1件のみであり、幅の推定値である。
実務上の含意は明快である。中位ケースでも、返還予定が公表されている案件に取得段階から関与して開業までおよそ10年を見る必要がある。逆に、移設が前提となる普天間飛行場・那覇港湾施設を事業計画のタイムラインに組み込むのは現時点では成立しない。動かせるのは、跡地利用計画が策定済みで部分返還が始まっている牧港補給地区と、引渡し済みの西普天間住宅地区の残余用途枠に事実上限られる。
② ADR × OCC — 客室単価と通年稼働率で見たRevPAR感度
次に、その用地でホテルを回したときの水準を2軸で置く。単価軸は本稿で確認した実勢に合わせ、那覇市の約10,100円から恩納村の約20,500円までのレンジのうち、中南部の跡地立地が現実的に取りにいく1万円〜1万8,000円を刻んだ。稼働軸は通年ベースである。県全体の91.0%は2026年7月というピーク月の値であり、通年の想定に置き換えてはならない(同年6月87.3%・8月87.8%はいずれも夏季)。冬季を含む通年では、この帯より下振れる前提で読む。
表6:ADR×通年OCC の RevPAR 感度(客室収入のみ・1室あたり)
推定成約ADR通年OCC(想定)
70%75%80%85%90%
¥10,000¥7,000
256万円¥7,500
274万円¥8,000
292万円¥8,500
310万円¥9,000
328万円
¥12,000¥8,400
307万円¥9,000
328万円¥9,600
350万円¥10,200
372万円¥10,800
394万円
¥14,000¥9,800
358万円¥10,500
383万円¥11,200
409万円¥11,900
434万円¥12,600
460万円
¥16,000¥11,200
409万円¥12,000
438万円¥12,800
467万円¥13,600
496万円¥14,400
526万円
¥18,000¥12,600
460万円¥13,500
493万円¥14,400
526万円¥15,300
558万円¥16,200
591万円
上段=RevPAR(1室1泊あたり)、下段=客室収入の年換算(RevPAR×365日、1室あたり・万円)。網掛けは中位置(ADR14,000円×通年OCC80%(推定値・2026年時点・通年想定))。単価レンジはメトロエンジンリサーチ&コンサルティングの推定成約ADR(直近12ヶ月=2025年9月〜2026年8月)の実勢に基づく。
※本表は客室収入のみの感度である。付帯収入(料飲・宴会・駐車場等)、運営費、用地取得費、建築費、資金調達条件は一切含まない。したがってNOI・利回り・IRRを直接読み取ることはできない。特定案件の収支予測ではなく、単価と稼働の置き方が客室収入をどれだけ動かすかを示す試算である。
中位置(ADR14,000円×通年OCC80%(推定値・2026年時点・通年想定))でRevPARは¥11,200、1室あたり年間の客室収入は約409万円になる。宜野湾市の実勢である約13,700円を単価に置くと、通年OCCが5ポイント動くだけで年間収入は1室あたり約25万円振れる。200室規模なら年5,000万円規模の差であり、跡地立地の事業性は単価水準よりも通年稼働をどこまで積めるかに感度が高い。夏季ピークだけを見て通年を組み立てると、この振れ幅をそのまま踏むことになる。
浦添市についてはもう一段の留保が要る。同市の推定成約ADRは対象施設が1〜2施設しかなく、本表の単価軸を同市の実勢として読むことはできない。隣接する宜野湾市の約13,700円と那覇市の約10,100円が現実的な挟み込みの上下限になる。
用地を探す側の実務論点 — 5つのチェックポイント
ここまでのデータを、用地取得の実務に落とすと次の5点に集約される。
表7:用地取得の実務チェックポイント5点
論点確認できた事実と含意
① リードタイム西普天間住宅地区は2015年3月返還→2018年3月引渡し→2025年に中核施設稼働。返還日から利用開始まで約10年という実測サンプルが1件だけ存在する。返還予定時期を取得可能時期と読み替えないこと。
② 地権者調整跡地の多くは民有地で、区画整理を経て土地が動く。単独地権者との相対取引ではなく、行政の跡地利用計画に沿った用途枠の中で用地が配分される。浦添市は2024年に跡地利用計画を策定済み。
③ 需要の下地沖縄県の推定稼働率は2026年7月で91.0%(1,083施設・51,693室)。県全体の推定成約ADRの夏季ピークは2024年約11,700円→2026年約13,700円と切り上がっている。需要側は跡地開発を待てる状態にある。
④ 参入余地浦添市はホテル業態4軒43室、宜野湾市は7軒583室。浦添市では200室級1棟で市内ストックが約2.8倍になる。先行者利益は大きいが、複数棟が同時期に入る場合の需給影響も同じ倍率で効く。
⑤ 用途競合2026年公示地価で浦添市商業地+7.14%、宜野湾市+8.89%、宜野湾市野嵩三丁目の住宅地は+18.6%。住宅・医療・商業用途が先に評価を上げており、ホテル用途は競合の中で事業性を組み立てる必要がある。
まとめ
沖縄本島中南部でホテル用地を探すとき、市街地の流通在庫を追いかけるアプローチには限界がある。まとまった面積が新規に出てくる経路は、統合計画に基づく1,000ヘクタール以上の返還跡地に事実上集約されている。そしてその跡地を抱える浦添市・宜野湾市の客室ストックは、それぞれ全業態で111室・715室、ホテル業態では43室・583室と、那覇市の149分の1・23分の1にとどまる。
薄さの原因は需要の弱さではない。県全体の推定稼働率は2026年7月で91.0%に達し、推定成約ADRの夏季ピークも2年で約2,000円切り上がっている。海側と幹線沿いという最も価値の出る立地が基地・港湾用地であったために、供給が構造的に起きなかっただけである。返還はその制約を解く唯一の一次供給ルートであり、西普天間住宅地区という「返還から利用開始まで約10年」の実測サンプルが、そのリードタイムの目安を与えている。
用地を探す側にとっての実務的な結論は明快だ。取引可能な土地が市場に出てから動くのでは遅い。跡地利用計画の用途枠が決まる段階から関与し、区画整理のスケジュールに事業計画を合わせる。地価はすでに先行して動いており、そのタイムラインは待ってくれない。
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参考資料・出典一覧
■ データソース
客室ストック・軒数は運営中施設のマスター集計(沖縄本島中南部12市町村 N=456軒、2026年9月時点)。推定成約ADRは各施設のOTA公開価格に業態別補正を掛けた推定値で、市町村別は直近12ヶ月(2025年9月〜2026年8月)の平均、県単位は2024年7月〜2026年8月の月次(対象 N=481〜508施設/月)。推定稼働率はOTA掲載在庫の消化状況に基づく県単位の推定値(2026年7月・1,083施設51,693室)。返還跡地の面積・時期・跡地利用の方向性は内閣府・沖縄県・宜野湾市・浦添市の公表資料、建築計画は国土交通省「建築物動態統計調査」、地価は国土交通省「地価公示」(2026年)による。
■ 試算前提
リードタイム3シナリオは、通しで観測できる唯一の実測サンプルである西普天間住宅地区(2015年3月返還・2018年3月引渡し・2025年中核施設稼働)を中位ケースに置き、部分返還が始まっている案件を楽観、代替施設の移設完了が返還の前提となる案件を悲観として幅を取った。ADR×OCC感度表は推定成約ADR1万円〜1万8,000円×通年OCC70〜90%の格子で、RevPAR=ADR×OCC、年換算=RevPAR×365日(1室あたり)として算出している。通年OCCは想定値であり、県の2026年7月91.0%は夏季ピークの実績値であるため通年値としては用いていない。
■ 限界・留意点
(1) 浦添市の推定成約ADRは対象施設が1〜2施設にとどまり、指標として安定しない参考値である。同市の実勢として読むことはできない。(2) 客室ストックは当社が把握する範囲の集計で、全数調査ではない。母集団の取り方(OTA継続観測/施設マスター/ホテル業態のみ)で値が変わる点は本文に併記した。(3) リードタイムの実測サンプルは1件のみで、統計的な幅ではない。(4) ADR×OCC感度表は客室収入のみを対象とし、付帯収入・運営費・用地取得費・建築費・資金調達条件を含まないため、NOI・利回り・IRRを読み取ることはできない。特定案件の収支予測ではない。(5) 建築計画は確認申請ベースの下限値であり、今後の申請追加により増加する。
■ 市場データ
■ 政府・自治体の公表資料
■ 地価・報道
