解体工事が1か月間(2026年9月15日~10月14日)停止されることが決まった「旧香川県立体育館」について、旧香川県立体育館再生委員会(以下、再生委員会)は9月11日午前、サンポートホール高松・市民ギャラリーで記者会見を行った。
中央が再生委員会委員長の長田慶太氏、左が進行役を務めた副委員長の上杉昌史氏、右が西山喬祐弁護士(会見のオンライン配信より)
再生委員会は、「事実上の証拠保全が認められた」ものの「県が発表と同時に解体再開を表明したことは非常に残念」、「県の態度は司法の場を著しく軽く扱うもの」、「県知事との直接対話を求めたい」などの考えを明らかにした。
旧体育館の利活用を提案している再生委員会は、公金支出の差し止めを求める住民訴訟を2025年11月に起こしたが、その裁判が進む中で解体工事が進められていた。躯体解体が始まる直前の2026年9月3日、県は同年9月15日から10月14日まで現地調査のため工事をいったん停止することを明らかにした。これまで原告が求めてきた「証拠保全」を裁判所が認め、県もそれを受け入れた形だ。ただし県は、「中断期間が終了した後は、直ちに解体工事を再開」すると表明している。(詳しくはこちらの記事へ→速報:旧香川県立体育館の解体工事が一時停止、「躯体解体」に入る直前で「証拠保全」を受け入れ/2026年9月3日公開)
▲旧香川県立体育館の現状。2026年8月26日に撮影(写真:旧香川県立体育館再生委員会)
▲解体が進む現場に掲示されていた工程表。2026年9月から地上部の躯体解体に入る予定だった(写真:宮沢洋、赤丸は筆者が加筆)
記者発表の登壇者は、長田慶太氏(長田慶太建築要素代表、再生委員会委員長)、上杉昌史(経営戦略コンサルタント、再生委員会 副委員長)、西山喬祐弁護士(第二東京弁護士会渥美坂井法律事務所・外国法共同事業)。このほかオンラインで、青木茂氏(建築家、工学博士、再生委員会理事)、神田順氏(東京大学名誉教授)が登壇した。
会見の主な内容は以下のとおり。
1)旧香川県立体育館の解体工事をめぐる争点の解説
争点は大きく3つある。①耐震性、②公金支出、③不可逆な解体。
①耐震性について:「直ちに倒壊する」という唯一の根拠は2012年の耐震診断結果による。しかし、診断を行ったTANGE建築都市設計(旧・丹下都市建築設計)自身が、「直ちに倒壊する」とは言っていない、としている(詳細はこちらの記事↓)。裁判の専門委員からも疑義が出されている。そう結論付けるならば改めて詳細な調査が必要。
②公金支出について:特殊な構造であるにしても解体工事費が異様に高い。これについて議会で十分な議論が行われていない。
③不可逆な解体:文化的価値の高い建築が失われることの損失の大きさ。ニューヨークタイムズなど、海外からその価値の高さを求める声が相次ぐ。国内でも建築家たちが声を上げる「アーキテクトボイス50」(@BUNGA NET)も始まった。
2)公金差し止めの住民訴訟の概要説明
住民訴訟で解体工事が停止することは極めて異例。今回、解体停止が実現したことの意味は大変大きい。裁判所は本案について前向きに受け止めていると考えている。
▲裁判の状況について説明する西山喬祐弁護士(右)
3)香川県立体育館の耐震性能及び改修方法について
青木茂氏、神田順氏がオンラインでコメント。構造面について神田順氏は、「県は『専門家の意見が割れている』という言い方をしているが、私はこれまで『直ちに倒壊する』という見方をする専門家に会ったことがない」と語った。
4)質疑応答
Q.内部の現況はわかっているのか。
A.全くわかっていない。調査の初日に現状を見て、与えられた期間(1か月)で調査が可能なのかを調べることになる。
Q.調査費用は誰か賄うのか。
A.原告(再生委員会)が負担する。200万円ほどかかる。
Q.県の姿勢はなぜ変わらないのか。
A.わからないことばかり。県はこの停止期間を考え直すチャンスにするべき。
Q.県の態度が変わらないなかで、あえて知事と会って話したいと考えるのはなぜか。
A.再生委員会を支える地元企業にどんなメンバーがいるのかを伝えたい。
Q.調査終了後の鑑定の期間はどれくらいか。
A.構造計算にかかるのは3か月程度と考えられる。調査が終わるとともに速やかに鑑定に回せるようにしたい。「鑑定結果が出る頃に建物が解体されている」という事態は絶対に避けなければならない。
会見の様子は、9月11日午後6時以降、YouTubeでも見ることができる。
https://m.youtube.com/@theaxiskagawa?ra=m
▲外構工事が始まって間もない頃の旧香川県立体育館。2026年5月10日に撮影(写真:宮沢洋)
なおBUNGA NETでは、解体工事の停止が明らかになった翌日の9月4日から緊急連載「アーキテクトボイス50─旧香川県立体育館に思う/Thoughts on Kagawa Prefectural Gymnasium」をスタートしている。この体育館や今回の経緯への思いを、1日1人ずつアップしていく企画で、今回の記者会見でも触れられた。ぜひそちらもご覧いただきたい。(宮沢洋)