【メルボルンINPS Japan/London Post=マジッド・カーン】

ロシア・ウクライナ戦争が5年目に入る中、戦場では激しい戦闘が続き、戦略や同盟関係も絶えず変化している。双方が優位を確保しようとする攻防に、終息の兆しは見えない。かつて短期間で終わる「特別軍事作戦」と位置づけられていた戦争は、いまや凄惨な塹壕戦、先端技術を駆使したドローン攻撃、敵後方深部への長距離攻撃、さらには東欧を越えて国際社会に波紋を広げる政治的駆け引きを伴う長期消耗戦へと変貌した。|英語版|

ここ数カ月の展開は、この戦争がいかに流動的かつ複雑になっているかを改めて浮き彫りにしている。戦場では双方が戦果を主張する一方、独立系の分析機関は、消耗戦と膠着状態が続く厳しい現実を指摘している。

ウクライナ軍司令部によれば、2026年に入ってからの防衛作戦により、ロシア軍の領土拡大は大幅に鈍化し、その進撃ペースは年初の時期に比べ半分以下に落ちたという。オレクサンドル・シルスキー総司令官は、兵員、装備ともに数的優位に立つロシア軍が今年前半に実施した大規模攻勢について、目標を達成できなかったと述べている。これはウクライナ側の防衛態勢が一定の成果を上げたことを示すと同時に、ロシア軍が抱える作戦上の困難を浮き彫りにしている。

一方、独立した戦況分析によれば、領土支配の推移にはばらつきがみられる。ロシア軍の前線での前進は絶対量では小さく、ここ数カ月の占領地域の純増も限定的である。支配地域は依然として流動的で、争奪が続いており、どちらの側にも決定的な優位をもたらさない消耗戦の様相を呈している。

分析者らは、ロシア軍が一時的に小規模な領土拡大を実現しても、その前後に後退を強いられる場合が多く、戦略的突破には至っていないと指摘する。ウクライナの防衛力強化と国際社会による継続的な支援を背景に、大規模攻勢によって決定的な成果を得ることの難しさが鮮明になっている。

戦場における最も顕著な変化の一つが、ウクライナによる攻撃範囲の拡大である。長距離ドローンやミサイルによる攻撃は、前線を越え、ロシア領内深部のエネルギー施設、物流拠点、交通網などを標的とするケースが増えている。

複数の報道によれば、ウクライナ軍は主要な石油精製所や燃料関連施設を攻撃し、ロシアのエネルギー生産能力に大きな混乱をもたらしている。その影響で国内の広い地域で燃料不足が生じ、ガソリンスタンドには長い列ができ、一部地域では配給措置も導入された。国内市場の安定を図るため、ディーゼル燃料の輸出禁止措置も取られている。

こうした攻撃は単なる戦術上の変化にとどまらない。ロシアが長期にわたり軍事作戦を維持する能力を低下させるという、ウクライナ側のより広範な戦略的狙いを反映している。

ウクライナによる大規模かつ継続的なドローン攻撃も注目を集めている。最近では数日間にわたり、モスクワ州を含む遠隔地の標的に無人機による波状攻撃が行われ、ロシア側は24時間以内に1000機近くを撃墜したと主張した。

ロシア当局が迎撃実績を強調する一方、ウクライナ軍司令部はドローン作戦を、ロシアの物流網や戦略基盤を弱体化させるための中核的手段と位置づけている。アゾフ海の艦船やクリミア周辺のインフラへの攻撃も含むこれらの作戦は、ウクライナが数週間から数カ月にわたって継続しようとしている、より広範な「影響作戦」の一環である。

こうした動きは、技術革新と無人システムの普及によって、大規模兵力同士の従来型戦争が、消耗と撹乱を重視する戦いへと変化していることを示している。

防御面では、ロシアも対応を強化している。ロシア連邦当局は最近、ウラル地方や極東の空軍基地など、戦略的に重要な遠隔地の標的を攻撃する目的で投入されたとする、西側製のAI搭載・爆薬積載ドローンを迎撃したと発表した。

ロシア連邦保安局(FSB)は、ウクライナから密かに搬送されたドローンを使った作戦を阻止したと主張している。これは、双方が従来の前線をはるかに越えた長距離作戦を展開している実態を示すものでもある。

クレムリンは、こうした事例を西側諸国による戦争への関与を裏づけるものとして位置づけている。一方、ウクライナとその同盟国は、侵略国に対するこうした作戦は正当な軍事行動だとの立場を維持している。戦闘の非対称性が増していることは、この戦争が従来型の正面戦闘をはるかに超えるものへと変化したことを示している。

長期化する戦争の重圧は、キーウの政治情勢にも表れている。2026年7月、ウクライナのユリア・スヴィリデンコ首相が就任から1年で辞任し、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は大規模な政府改造を発表した。

治安・法執行機関の指導部交代やエネルギー部門の主要人事を含む今回の再編は、軍事作戦が激しさを増し、経済的困難が続く中で実施された。

また、米国がウクライナによるパトリオット・ミサイル・システムの生産支援を約束するなど、ゼレンスキー政権は防衛協力の拡大に軸足を移している。これは西側諸国との戦略的連携の深化を示す一方、ウクライナが戦争を継続するうえで、依然として外国からの援助と技術に大きく依存している現実も浮き彫りにしている。

こうした国内政治の変化は、戦時下で国家を統治することの難しさと、軍事上の優先課題と行政運営が密接に絡み合う状況を示している。

外交面でも各国の関与は続いている。パリでは、ウクライナとフランス、ドイツ、イタリア、スウェーデン、英国など欧州9カ国が、ロシアのミサイルによる脅威から欧州を守るため、共同の弾道ミサイル防衛システムを構築する連合の設立を発表した。

この共同構想は、欧州の同盟国によるウクライナ支援が依然として続いていることを示すとともに、ウクライナ国境を越えた統合的な防衛態勢を構築する戦略を反映している。

同時に、この戦争が欧州全体の防衛上の優先順位を大きく変え、将来和平が実現したとしても存続する可能性のある共同安全保障プロジェクトを加速させていることも明らかになっている。

戦争の過程では何度か交渉への動きがみられたものの、外交的な機運は一貫していない。報道によれば、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、とりわけ激しい争奪が続くドンバス地方での領土目標を追求する姿勢を崩しておらず、西側首脳との断続的な対話にもかかわらず、相次ぐ和平提案には応じてこなかった。

クレムリンに近い関係者によれば、プーチン大統領は、制裁や戦場での後退によって大きな経済的代償を払うことになっても、軍事的圧力を維持することが国内での政治的正統性と戦略目標の双方に不可欠だと考えているという。

分析者の間では、ロシアによるエスカレーションがウクライナ領外に及び、欧州の重要施設が標的となる可能性も懸念されている。そうなれば、NATOや西側諸国が回避しようとしてきた、より広範な対立へと発展しかねない。

こうした状況は、戦争疲れが深まる一方で戦略的要請も存在するという、ロシアの政策判断を規定する根深い緊張関係を映し出している。

ロシアが本格的な停戦協議に踏み切ることをためらう背景には、戦争が国内にもたらしている大きな代償もある。

包括的な評価によれば、ロシア軍の戦場での死傷者と行方不明者は合わせて数十万人に上り、ウクライナの粘り強い抵抗と国際的な支援を前に、ロシア軍は主導権の維持に苦戦している。

さらに、長期化する戦争と制裁はロシア経済にも重くのしかかっている。影響はエネルギー産業にとどまらず、建設業や工業生産など幅広い分野に及び、構造的な圧力を強めている。

こうした負担は、戦時政策を長期にわたり維持することへの国民の信頼を損ない、戦争の方向性と長期的な持続可能性をめぐる国内論議を激化させている。これは、決定的な軍事的敗北がなくても、長期戦が国家の能力を徐々に消耗させていくことを示している。

ウクライナもまた、深刻な課題を抱えている。攻撃能力を拡大し、ドローン技術を効果的に活用している一方、防空能力の不足や複数の前線で続く圧力など、依然として大きな脆弱性を抱える。

西側諸国は追加支援を約束しているものの、防空システムや高度な長距離攻撃手段の不足により、ウクライナ軍の陣地はロシアによるミサイルやドローンの集中攻撃にさらされ続けている。

ドイツが攻撃用ドローン5万機への資金提供を約束するなど、新技術の調達と運用統合に向けた取り組みは、現代戦において技術的優位を確保することの戦略的重要性を示している。その一方で、戦時経済に内在する物流や生産能力のボトルネックも浮き彫りにしている。

戦場の需要と産業生産能力のせめぎ合いは、この戦争の行方を左右する重要な要素となっている。

ロシア・ウクライナ戦争の影響は、戦場をはるかに越えて世界に及んでいる。ロシア産燃料の輸出混乱によってエネルギー市場が不安定化するなど、東欧から遠く離れた国々の経済にも影響が波及している。

The Russia-Ukraine war has evolved into a prolonged war of attrition marked by trench warfare, drone attacks, and long-range strikes on infrastructure deep behind the front lines, with repercussions extending far beyond the battlefield to European security and the wider geopolitical landscape. Illustrative image:INPS Japan

また、NATO加盟国の間では、集団防衛上の義務や戦略的関与のあり方をめぐる議論が改めて活発化している。

インドのような国も外交的な影響力を示しており、ナレンドラ・モディ首相については、西側当局者が、地政学上の問題でモスクワが耳を傾ける重要な人物の一人と位置づけている。これは、この戦争の影響が大国間の世界的な勢力均衡にまで及んでいることを示唆する。

ロシア、西側諸国、地域的利益の間で相反する圧力に対応する中、インドをはじめとする非西側諸国の戦略的判断は、今後の戦況や外交交渉の枠組みに大きな影響を及ぼす可能性がある。

こうした情勢の中、戦争がもたらした人的犠牲を無視することはできない。何百万人ものウクライナ人が今なお避難生活を余儀なくされ、インフラの破壊は広範囲に及び、度重なる砲爆撃によって民間人は甚大な被害を受けている。

同時に、ロシア各地の家庭も、戦争がもたらした犠牲や制裁に伴う経済的困難に直面している。

ザポリージャのような都市や、ドネツク州の前線都市コスチャンティニウカをめぐる戦闘は依然として激しく、一つ一つの交戦が、都市空間や市民生活と軍事目標を切り離すことが困難な現代戦の残酷な現実を改めて突きつけている。

大量の火力が集中し、航空戦力、装甲戦力、無人システムが一体的に運用されるこの戦争は、破壊力が極めて大きく、技術的に高度で、戦場の両側の社会に深刻な混乱をもたらす21世紀型戦争の典型となっている。

今後について、政策当局者や専門家の間では、大きく二つのシナリオが想定されている。

一つは、国際社会からの圧力、ウクライナの同盟国による継続的な防衛協力、戦場での限定的な前進を背景に、交渉によって膠着状態が固定化され、双方が長期にわたり対峙しながらも、一定程度抑制された紛争が続くというものである。

もう一つは、より深刻なシナリオである。ロシアが領土目標の達成を目指して再び大規模攻勢に乗り出し、それによってさらなるエスカレーションが生じ、地域諸国や世界の大国がより深く関与する事態へと発展する可能性である。

多くの専門家が指摘するように、最大の問題は、相互不信と戦略目標の隔たりによって外交の余地が狭められていることである。現時点では、キーウもモスクワも、国内政治上受け入れ難い大幅な譲歩なしに、戦争の根幹にある目標を放棄する意思を示していない。

5年目に入ったこの戦争は、現代の紛争がいかに複雑化し、多層化し、決定的な解決を拒むものへと変化していくかを示す典型例となっている。

技術革新、経済的圧力、外国との同盟関係、国内政治上の制約が交錯し、長期にわたる消耗戦が戦場だけでなく、より広範な地政学的均衡をも形づくっている。

この戦争を見守る世界にとって、ロシア・ウクライナ戦争は、地域紛争が国際安全保障と経済の安定をいかに大きく変え得るのか、そして絶え間ない戦略的競争の時代に平和を追求することがいかに困難であるのかを、改めて突きつけている。

INPS Japan

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