欧州のデマンドが“ニッポンの軽”に寄ってきている

でも、日本以外のマーケットでも軽に勝機があるんじゃあないかというのは、こういう話が出る前から、割と皆さん考えていたことではないかと思います。

すでにASEANやインド、パキスタン、スリランカといった南アジア地域では軽派生の車両が十分実績をあげている。そこにきて電動化による動的質感の向上が、新たな地域での展開を可能にするのではないか……と、検討匂わせの発言をしていたのは日産に在籍していたアシュワニ・グプタ元COOです。「サクラ」登場時の好調を受け、商品に自信を深めてのことだったかと思いますが、想定していたのが欧州だったことは想像に難くありません。

静粛性やハンドリングといった電動化による商品力の向上は、小さいクルマほど大きな実利として享受できます。そこに軽く安くつくるという工夫が加われば、さらに勝負のしがいが出てくる。そう考えているのがスズキです。先のACEA会長の発言を引き出す呼び水のような話が鈴木俊宏社長から出てきたのは、2022年11月の中間決算発表会見でのこと。世の物価高傾向がスズキのユーザー層にとっては相当厳しいという印象を述べた後、その解決策としてメーカー側の努力にも触れながら、このように話しました。

「ユーザーの皆さんにも考えていただきたいのは、『なくてもいいよね』というものがないか。なんでも付いているということが、本当に自分のクルマに必要なのか、ということです」

これは、スズキが行動理念として掲げる「小・少・軽・短・美」と呼応する市場への問いかけであるとともに、ユーザーの要望があれば、クルマをより軽便・廉価につくれなくはないことを示しているともいえます。当時はM1Eに準ずる話はまだ出ていませんでしたが、その後、欧州のデマンドがじわじわとスズキの側に歩み寄ってきたと感じるのは、僕だけではないと思います。


スズキの鈴木俊宏社長。本稿で触れている自動車の肥大化に対する警鐘は、その後も技術説明会などで折に触れては発信されている。


スズキの鈴木俊宏社長。本稿で触れている自動車の肥大化に対する警鐘は、その後も技術説明会などで折に触れては発信されている。拡大

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