国税庁が有識者会議で示した株価圧縮スキームは、非上場株式の評価が「安すぎる」という36年来の問題を、単なる計算式の修正では済まない論点にまで押し広げた。類似業種比準方式を残すか/廃止するかという二択ではなく、企業価値の評価と事業承継への政策的支援をどう切り分けるか――ドイツの制度や日本の小規模宅地等の特例を手がかりに、見直しの方向性とオーナー経営者が今後注視すべきポイントを整理する。※本連載は、THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班が担当する。
「類似業種比準方式=悪」ではない
非上場株式の評価をめぐる見直し論議では、類似業種比準方式による評価額が実態より低すぎるのではないか、という指摘が繰り返しなされてきた。しかし、だからといって、類似業種比準方式そのものを一方的に悪者にすることはできない。
日本商工会議所は有識者会議で、類似業種比準方式と純資産価額方式の乖離について、直近の株価上昇を踏まえて改めて実態を調査すべきだと主張した。
さらに、仮に類似業種比準方式を廃止し評価方式を大幅に変更すれば、税負担が大幅に増加し、中小企業の円滑な事業承継を阻害する可能性があるとして、「円滑な事業承継への配慮」を切り離した評価方式にはすべきではないと指摘している。
株価を適正に評価することだけを考えれば、より精緻な企業価値評価を導入することもできるだろう。しかし、相続によってオーナー経営者の株式を後継者が取得する場合、株式の評価額が上がれば、そのまま相続税負担の増加につながる。その結果、納税資金確保のため、会社の株式や事業用資産を売却せざるを得なくなれば、かえって事業承継を阻害しかねないのだ。
株価を正しく評価することと、会社を次世代に残すこと。この二つは、必ずしも同じ方向を向いているわけではないのである。
ドイツは「評価」と「事業承継支援」を切り離した
この問題を考える上で参考になるのが、ドイツの制度設計だ。
ドイツでは、事業用財産について評価段階で優遇する仕組みが問題となり、連邦憲法裁判所は2006年11月7日、財産評価について通常価額を基準とする考え方を示した。
さらに、その後の制度設計で、ドイツは「企業価値を低く評価することで事業承継を支援する」のではなく、財産そのものは適正に評価した上で、評価後の相続税制において事業用財産に対する大幅な優遇措置を設ける方向へ進んだ。
評価自体は厳格に行い、事業承継への配慮は税制上の特例として別立てにする――そうした役割分担を実現するこの発想は、日本の非上場株式評価を考える上で、非常に重要な示唆を与えるだろう。
