シドニーやオーストラリア東海岸の住宅街の垣根や公園、川沿いや海沿いの湿地帯の藪などで、チチチッと小気味いい鳴き声とともに、目にも留まらぬ速さでビュンビュンと飛び回る小さな鳥。それが今回の主役、ルリオーストラリアムシクイ(Superb Fairy-wren)です。
(文・写真:クラークさと子) 

第4回 スパーブ・フェアリーレン

英:Superb Fairy‐wren
日:ルリオーストラリアムシクイ
分布:豪州南東部のユーカリの森に住む、明るい青色のオスがアイコニックな小鳥。つがいや小さな群れでいることが多く、他の小鳥と一緒に餌や水に集まることも。繁殖期にはオスの羽の青がより濃くなる。餌は虫、種、果実など。全長14cmほど。

ルリオーストラリアムシクイ オス(左)、メス(右)

小さいのに圧倒的な存在感 ルリオーストラリアムシクイの生態

 オーストラリアには多くのムシクイ(Fairy-wren)の仲間がいますが、東海岸や南東部で「フェアリーレン」といえば、圧倒的にこのスパーブ(Superb=素晴らしい、見事な)を指すことが多く、最も親しまれている野鳥の一つです。

オスとメスのギャップと「冬の変身」

ルリオーストラリアムシクイ オス

ルリオーストラリアムシクイ メス

 鮮やかなオスと控えめな色のメス: 繁殖期(夏)のオスは、ハッと息をのむような鮮やかなネオンブルーと黒のコントラストがアイコニック。一方のメスや若い鳥は、全体的に優しく暖かみのある茶色(マロン色)をしています。この美しいオスを引き連れ、つがいや数羽の小さな家族グループで行動します。

 実は、オスのあの美しい青色は一年中見られるわけではありません。冬の換羽期になると、オスの胴体もメスのような茶色っぽい地味な羽に生え変わります。しかし、「嘴(くちばし)と尾羽」だけは青黒い色を残しているため、よく観察すると冬でも「あ、君はオスだね」と見分けることができるのが面白いポイントです。

換羽期のオス

雛と一緒に

小さな体でダイナミックに生きる─食生活と子育て

 主食は小さな虫です。体長わずか14cmほど(長い尾羽を含む)の小さな鳥ですが、彼らが追いかけているのはさらに小さな虫たち。地面や草むらで虫を見つけては、敏捷に飛び回って捕らえます。虫のほかに、種子や果実などもバランスよく食べる食いしん坊です。

  夏の時期には、微笑ましい子育てが見られます。つがいで懸命に子育てをし、巣立ったばかりの子供たちと一緒に暮らす微笑ましい姿が観察できます。この鳥は「ヘルパー」と呼ばれる、前年に生まれた若鳥などが子育てを手伝う生態(社会的複婚・共同繁殖)でも知られており、家族の絆がとても強い鳥です。

小さな体で高度に会話する「鳴き声」の秘密

🐤チチチチチ……と長く続く「さえずり(Song)」
 普段よく耳にする、高いピッチでマシンガンのように速く続くクリッカ音のような鳴き声です。これは主に自分の縄張りを主張したり、家族同士で「私はここにいるよ」と位置を確認し合ったりする日常のコミュニケーションです。

🐤藪から一斉に聞こえる「警戒アラーム(Alarm Call)」
 天敵(フエガラス、猛禽類、あるいは猫など)が近づいた際の非常事態宣言のような状態です。誰かの一声(鋭いチッと尖った音)を合図に、周囲の家族が一斉に連動して警戒音を発し、藪の奥深くへ身を隠します。

🐤敵の種類や危険度でピッチやリズムを変える
 近年の研究では、彼らは「空からの脅威(タカなど)」と「地上からの脅威(ヘビや猫など)」で鳴き声のピッチや音の長さを明確に使い分けていることが分かっています。さらに、危険度がどれくらい差し迫っているかによってもリズムの速さが変わります。

🐤「恐怖のデュエット」という面白い生態
 天敵である猛禽類(タカやフエガラスなど)の鳴き声が聞こえた瞬間、ルリオーストラリアムシクイのオスがあえてその直後に被せるように大声でさえずるという不思議な行動(Predator-elicited song)があります。これは、メスに対して「天敵が近くにいても僕はこんなに勇敢で強いんだぞ」とアピールするための命がけのプロポーズ行動と言われています。

囀るオス

囀るメス

オーストラリア全土に広がる「色違い」の仲間たち

 NSW州ではスパーブ(Superb)が主流ですが、オーストラリアを旅すると、地域ごとに驚くほど美しい「色違い」のフェアリーレンに出会うことができます。どの種類も「メスは茶色っぽく控えめ」という共通点があり、オスの個性が光ります。

英名和名特徴・主な生息地Splendid Fairy-wren 🟦ムラサキオーストラリアムシクイ全身が吸い込まれるようなコバルトブルー。内陸〜西海岸に生息。Variegated Fairy-wren 🟫🟦🟨フジイロオーストラリアムシクイ青、黒、そして肩のあたりが栗色(サビ色)になる美しいグラデーション。Purple-backed Fairy-wren 🟪🟦🟫セジロオーストラリアムシクイフジイロに似るが、背中がより紫がかる。内陸の乾燥地帯に広く分布。Red-backed Fairy-wren ⬛🟥セアカオーストラリアムシクイ体は黒く、背中だけが鮮烈な赤。北部や東部熱帯地域に多い。White-winged Fairy-wren 🟦⬜ハジロオーストラリアムシクイ鮮やかな青い体に、羽の一部が純白。内陸の塩性低地などに生息。Red-winged Fairy-wren 🟫🟦🟨ウスアオオーストラリアムシクイ肩に赤茶色の斑紋。西オーストラリア州の南西部の湿った森に限定。Blue-breasted Fairy-wren 🟦🟨ムネアオオーストラリアムシクイ胸が濃い青。西豪州南部やエアー半島などに生息。Lovely Fairy-wren 🟦✨ケープヨークムシクイクイーンズランド州北部の熱帯雨林周辺にすむ、まさに「愛らしい」種。Purple-crowned Fairy-wren 🟫🟪エボシムシクイ頭頂部が美しい紫色になる、北部河川沿いにすむ絶滅が危惧される希少種。

 身近な庭の垣根から線路沿いの藪、大自然の湿地帯まで、私たちのすぐそばで活発に生きているルリオーストラリアムシクイ。散歩の途中でチチチッと声が聞こえたら、ぜひ足を止めてみてください。運が良ければ、まばゆい青をまとった小さな妖精が見つかるかもしれません。

 また、シドニー・オリンピック・パーク敷地内にあるウォーターバード・レフュージ(Waterbird Refuge)は野鳥の湿地保護区で多様な野鳥の生息地です。渡り鳥や水鳥を安全な場所から観察できる一方、水辺の藪や遊歩道では、1年を通してたくさんのルリオーストラリアムシクイを見ることができます。

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