2027年度から民営化される静岡市清水区の市立清水病院。市がおよそ50億円を補わなければ経営が維持できない危機的な状況となっています。経営危機に陥った公立病院をどう立て直していくのか滋賀県の先行事例を取材するとその未来像がみえてきました。

<VTR>
(静岡市・難波市長)
「地域の基幹的な医療機関として 清水の医療提供体制を守ることができるように新たな取り組みを実施します。」

2026年4月、静岡市は来年度から「市立清水病院」を指定管理者制度で民営化し指定管理を担う「清水厚生病院」と一体的運用を行うと発表。それぞれの外来は残した上で、「入院機能」は清水病院に集約し効率化を図ります。

「清水病院」の赤字額は2024年度に22.5億円。2025年度は30億円近くまで膨らんでいて、静岡市は、この危機的な経営状況に立て直しを図りたい考えです。

しかし、病院職員からは・・・

(市立清水病院の職員)
「清水病院の職員に対しての今後の処遇などについて、具体的な説明は一切なされていないのが現状です。」

市の説明が不十分だとして不満が噴出。急きょ職員向けの説明会が開催されたものの・・・

(市立清水病院の職員)
「職員の雇用や労働条件に直結する重大な方針に対して、 職場の不安はいまだに解消されておりません。」

ぬぐいきれない職員の不安。

一方で・・・

(難波 静岡市長)
「はっきり申し上げますが、(静岡市)直営の状態で継続は 不可能という状況に陥っている。今回はできる選択を取っていくしかない。」

清水の医療を守るために行う今回の病院再編。同じように再編を行い経営を立て直した病院が滋賀県にあります。

滋賀県守山市にある「済生会守山市民病院」。40年近く、公立病院として運営されていましたが、毎年、市から5億円あまりの補助がないと運営できない状態に。

そこで、2018年、守山市から滋賀県済生会に経営を移行し再スタートしました。すると、驚くべき変化が。

(済生会守山市民病院 野々村 和男 院長)
「私ども実際運営者として少し驚いた部分もあるんですけども、翌年から黒字経営に変わりました。」

指定管理を担う「滋賀県済生会」は、「守山市民病院」から5キロほど離れた場所にある「滋賀県病院」も運営しています。この2つの病院を一体的に運用したことが成功のカギだといいます。

(野々村院長)
「機能分化をしっかり図る済生会滋賀県病院が高度救急、高度医療、救急医療をしっかりやっていって、守山市民病院がその後方支援に 回って回復期を中心に運営していく。」

これは病院の機能を明確にして役割分担をする“機能分化”と言われるもので、「滋賀県病院」はとくに「急性期」に力を入れ、その治療を終えた「回復期」や「慢性期」の患者を「守山市民病院」が受け入れているのです。

その結果、滋賀県病院からの転院件数は2018年度は205件だったのが2024年度は412件と倍増。病床稼働率もぐっと上がり90%超えていて収益アップにつながっているといいます。

一方、市が経営移行の方針を発表したのは移行開始の1年前。当時から働く看護師は、その突然の発表に。

(看護師)
「来て2年ぐらい経った時にその話があって、『いやいや、公務員やから来たので』っていう 思いは大きくありましたけど。」

当時の管理職も現場からの不安をの声を多く耳にしたと言います。

(済生会守山市民病院 吉村 薫 看護部長 ※当時の看護副部長)
「発表の後は、スタッフから『いつからこんな話なってたんですか』と言われましたけど。『いや、実は私も前日聞いたとこ』っていうようなところで。とにかく職員と話す、一緒に考えるっていうことを、 当初はしてとにかく看護部としては1人でも多く残っていただくことを目標に取り組みをさせてもらった。」

守山市も移行後の給料について、5年間は現行の給与額を保障するなど職場環境をサポート。

(看護師)
「丁寧な説明をしてくださって、 給与面ですとか環境っていう 待遇ですね、を説明していただ いたので、徐々に不安はなくなりました。」

この結果、およそ8割の病院職員が「残る」という選択をしました。

こうした中、2020年にオープンしたのが

(野々村院長)
「新棟の3階で約1000平米。リハビリセンターになります。入院患者さんはこの階で、明るいこの部屋でリハビリをやっていただく。」

在宅復帰を目指しリハビリを行う施設。市が経営移行の際に国の補助金を活用し、リハビリ施設や回復期病棟を整備。広々とした空間にはさまざまなリハビリの器具が!

(野々村院長)
「こちらはトヨタ製のウェルウォークと言いまして、歩行支援ロボットになります。」

滋賀県内初となる歩行練習支援ロボットや・・・

(野々村院長)
「認知機能とか判断能力に問題がある方に、手を使ってゲームをしながらそれを訓練してもらう機械。」

国内およそ20施設にしかないリハビリの機械まで!充実したリハビリ施設にできた理由は。

(野々村院長)
「(建物を)新しくした時に入れたものと、それから、やはり経営上安定してこういう機械も導入していって、 より患者さんに取り組みやすく リハビリをしてもらおうと。」

指定管理というかたちで地域の医療を守った守山市。病院は7年後の2033年、済生会に譲渡されます。

清水病院の”運営委託先”として名前が挙がっている清水厚生病院は、今回の再編計画をどう考えているのでしょうか?

(JA静岡厚生連 荒田庄司 理事長)
「22万人いる清水区の中に大きな病院が2つある状況。国は今地域医療構想の中で20万人から30万人の人口がいるなかでは急性期の拠点病院を一つという考え方もある。国の方針とも合致していくのではないか。仮に計画通りに進んだとして軌道に乗っていけば、清水区の医療は現状よりも良くなっていくのではないか、改善していくことでそうなることを確信している。」

反発を招いている清水病院側の職員の理解を得られるのか、地域医療を守るための努力が求められています。

<スタジオ>
(澤井志帆アナウンサー)
藤井さんは、この滋賀県の先行事例を率直にどう感じますか?
(火曜コメンテーター news zero 藤井貴彦さん)
もう答えが出ているような感じがありましたよね。一番大切なのは、不満を持って不安で感じている方々をどういうふうにプラスに変えていくかということだと思うんですよ。今後どういう方向に行くか分かりませんけども、不満とか不安というのは“自分たちを大切にしてもらっていない”ということから始まるんです。
ですから、しっかりとした説明をして、こうこうこういう道筋だから一緒に歩いてもらえませんか、ということを時間をかけて説明することが、先ほどの守山市民病院の肝だったんじゃないかなと思いますね。

(澤井アナ)
滋賀県でも先ほどVTRにもありました職員さんが、最初はちょっと驚きだったとか不安だったという声もありましたよね、津川さん。

(コメンテーター 津川祥吾さん)
そこはしっかりとご説明いただくということが必要なんだと思いますし、ただこうやってうまくいった先行事例があるというのは非常に希望にはなりますが、ただ、今の話の中では機能分化というものが出てきましたが、全国の同じような例では機能分化をしようとしたけどうまくいっていないケースもたくさんありますので、その辺よくよく地域の皆さんにも市としては丁寧に説明していただくということが非常に大事になってくるかなと思いますね。

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