一部の報道やネット上では、EU自動車業界の崩壊のような論調を見かける。ほとんどが見出しの煽り文句であり実態を表しているとも思えない。実際の欧州の状況はどうなのだろうか。
レスポンスセミナー「テスラ欧州とEV先進国ノルウェー最新動向~ギガ・ベルリン訪問、オランダFSD走行、Nordic EV Summitから~」では、EV先進国ノルウェーで開催された「Nordic EV Summit」(オスロ)に招待されパネルディスカッションに登壇したUndertones Consulting 代表取締役 前田謙一郎氏を向かえ、サミットの内容や欧州動向を解説する。その上で、日本メーカーがとるべき道を探る。
セミナーに先立ち、その報告概要を含めてインタビューでは主に現地の様子などを聞いた。
オスロ、ベルリン、オランダを視察・調査
――今回のセミナーについて前提のところからお話を伺いたいと思います。Nordic EV Summitに参加されたとのことですが、その流れでドイツやオランダの調査・視察も行ったということでしょうか。
はい、オスローでのサミットに参加後、オランダのアムステルダに飛んでFSD走行を行い、その後、ドイツのベルリンでテスラの欧州工場であるギガ・ベルリンを訪問してきました。
テスラの工場は、世界に上海、ネバダ、ベルリン、テキサスに建設されギガファクトリーと呼ばれています。一昨年はレスポンスの調査企画で上海のギガ・ファクトリーを訪問し、昨年はテスラのアメリカ本社を兼ねるギガ・テキサス工場を見学しました。今回の欧州工場訪問で乗用車を生産する工場は全て見学したことになります。
ギガ・ベルリンには無料の直通列車がある
――他にも視察で印象に残ったものはありますか?
EU、ドイツという国柄を考慮して、持続可能性を重視した工場展開をしています。工場建設にあたって環境保護や水資源の管理などに気を使っています。
ドイツの中では東ドイツ側のベルリンに大規模な工場を立てて雇用や地域経済に貢献したことも評価されています。工場は空港とベルリン中央駅を結ぶ鉄道の間にありますが、途中からこの工場、ギガ・ベルリンへの支線があり、中央駅から「テスラ駅」まで直通の列車が運行されているほどです。
それ以外にも伝統的な自動車大国ドイツでの工場であるということ、テスラの製造イノベーションであるギガ・キャスティングが採用され、塗装工程も革新的とされています。
ギガ・ベルリン
――工場誘致や雇用確保については中国勢も同様な戦略を展開していると思います。
そうですね。ですが、ドイツでは中国車をあまり見かけません。自動車製造業が強い国は、抵抗感があるのかもしれません。ノルウェーやオランダではまったくそのようなことはなく、乗用車、タクシーを含め中国EVがたくさん走っていましたが、ベルリンはそうでもありません。
歩行者・自転車・白線なしでも対応したFSD
――FSDの評価はどうでしたか?
FSDはアメリカで何度も経験していますが、今回は新たに公道走行が認められたオランダでモデルYのFSDを体験しました。日本でいう渋谷みたいなところを走行したのですが、オランダの街並みは狭い道も多く、自転車も大量に走っています。そのような状況でも、人手の介入がなく目的地まで移動できました。
モデルYのFSD運転
ありがたかったのは、石畳の道、白線がない道、歩行者が多くても、トラムと並走区間があっても、迷わず正しいルートを進んでくれたことです。旅行者のレンタカーでは、どこをどう走ればいいのかとパニックになるような道でも安心です。
FSDについては、市街や高速での走行など撮影した動画を使って紹介するつもりです。
AI・通信・ロボティクス…テスラの全方位戦略
――一方で、テスラ(イーロン・マスク)は、モデルXやSの製造を中止し、ロボタクシーやオプティマス(ヒューマノイド)に力を入れています。テスラの事業モデルは自動車からAIやロボットにシフトしていくのでしょうか。
モデルY投入前後の2025年前半にテスラは販売台数を落としましたが、2026年Q1は、ドイツ、フランス、イギリス、ノルウェーで数字を戻してきました。世界を見渡すと中東の情勢も無視できなくなっています。いまEU圏のガソリン料金はリッターあたり400円以上し、EVへの注目が集まっています。
オランダの街並みでもFSDが機能したように、テスラのE2E自動運転のアプローチの強みは、国ごとの道路事情や街並みを超えた展開がしやすいことです。Waymoなどのルールベースの自動運転もジオフェンスでエリアを限定すれば、かなり高度な運転が可能になっています。私もテキサスで体験しましたが、かなり完璧にこなしています。しかし、逆にいえばジオオフェンスに頼ったルールベースでは、サービスエリアごとにプログラムが必要になります。
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