「
魚庭(なにわ)
の海」や「
茅渟(ちぬ)
の海」と呼ばれ、古くからその豊かさをたたえられてきた大阪湾。今もイワシやタイ、タコなどの漁が盛んで、「食い倒れの街・大阪」を支える重要な存在だ。

「釜揚げしらす丼」(左)と「生しらす丼」(大阪府泉佐野市で)「釜揚げしらす丼」(左)と「生しらす丼」(大阪府泉佐野市で)

 南海泉佐野駅から北に向かって約15分歩くと、周囲に潮の香りが漂い始める。連絡橋の先に関西空港を望む泉佐野漁港。新鮮な魚介類が並ぶ「泉佐野漁協青空市場」があり、空港を利用するインバウンド(訪日外国人客)らでにぎわう観光スポットにもなっている。そんな漁港近くに店を構えるのが、旬が始まったばかりのシラスをふんだんに使った丼が人気の食堂「こたや」だ。

 ちょうちんや大漁旗が飾られた、にぎやかな店内。メニューでお目当てのしらす丼を探すと、「生」のほかに、さっと塩ゆでする「釜揚げ」もある。店長の宮下和樹さん(34)に「それぞれの違いを楽しんでみて」と促され、
贅沢(ぜいたく)
にも両方の丼を味わってみることにした。

 先にいただいたのは、まさに「山盛り」という盛り付けが目を引く「釜揚げしらす丼」。ふわっとした食感が口の中いっぱいに広がる。店でブレンドしたという甘めのしょうゆが食欲をそそり、とにかくご飯が進む。

 続いて「生しらす丼」を箸ですくうと、1匹1匹が透き通って見える。添えられた卵黄を割って口に運ぶと、酢飯と相まって、何ともたまらない濃厚な味わいになる。

 「特有の魚臭さを感じる人もいるので、甘めの酢飯や、みりん、砂糖などを合わせたしょうゆで食べやすいようにしています」と宮下さんは工夫を話す。

 こたやは、スーパーなどに魚を卸す水産会社「裕太朗水産」(大阪府泉佐野市)が「地元の魚を楽しんでもらおう」と2020年にオープン。水揚げ後すぐに自社工場で凍結などの加工をすることで、鮮度を保ったまま提供できるといい、こたやでは多い日には100杯以上の注文があるという。

 「漁場が近く、すぐに競りに出せる点でも鮮度がいい。旬のシラスをぜひ味わって」と中田邦裕社長(49)は言う。

 水平線を眺め、潮風に吹かれ、新鮮な海の幸にお腹も心も満たされた。大阪湾の豊かさを体いっぱいに感じることができた。(泉佐野支局 門間圭祐)

旬を迎えているシラス(大阪府泉佐野市で)旬を迎えているシラス(大阪府泉佐野市で)大阪湾のシラス

 シラスは魚の子ども(
仔魚(しぎょ)
)の総称で、大阪湾で取れるのは、ほとんどがカタクチイワシの仔魚。漁は例年4月下旬頃から始まり、12月頃まで続く。春のシラスは、主に紀伊水道から外海域で生まれ、潮の流れに乗って大阪湾内に入ってきたものとされる。

 大阪府岸和田市の地蔵浜地区には船びき網の共同荷さばき場が整備されており、水揚げから落札までを短時間で行うことで鮮度保持につなげている。

大阪湾のシラスのおいしさを語る中田社長(大阪府泉佐野市で)大阪湾のシラスのおいしさを語る中田社長(大阪府泉佐野市で)パスタがおすすめ

 シラスのうまみを楽しむため、中田社長が薦めるのは、パスタだ。ペペロンチーノの具材にしたり、トマトパスタの上にのせたり。釜揚げのシラスはスーパーなどでも比較的手に入れやすく、「香り付けとして刻んだ大葉を散らすとよりおいしくなる」とアドバイスする。

 「秋口のあっさりとした味わいと違い、春から夏にかけてのシラスは脂がのっている。大阪湾の味覚を手軽に楽しんで」とする。

泉佐野漁港近くにある食堂「こたや」(大阪府泉佐野市で)泉佐野漁港近くにある食堂「こたや」(大阪府泉佐野市で)こたや

 大阪府泉佐野市新浜町3。南海泉佐野駅から徒歩約20分。営業時間は、平日が午前11時~午後4時(ラストオーダーは午後3時)と午後5時~9時30分(同午後9時)、土・日曜日と祝日は午前10時~午後4時(同午後3時)と午後5時~9時30分(同午後9時)。大型連休期間中は無休。

 「生しらす丼」は税込み1628円、「釜揚げしらす丼」は同1188円。問い合わせは電話(072・458・0800)で。

 

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