オマーン湾を航行するイランの貨物船「TOUSKA」。米海軍の駆逐艦から撮影(4月19日、提供:CENTCOM/ロイター/アフロ)

 米国とイランの状況を見ていると、停戦交渉に漕ぎ着けたかと思えば決裂し、再び停戦協議に向かったかと思えば頓挫しと、停戦に至る道のりはかなり遠そうである。

 イランでは、穏健派が停戦に進もうとしても強硬派が米国の要求や軍事行動に強く反発して簡単に妥協点を見つけられる状況ではないようだ。

 一方、米国もドナルド・トランプ大統領の威勢のいい発言ばかり聞かされると、停戦協議をまとめる気があるのか疑問に思えてくる。

 イラン戦争は現在、予測困難な状態に陥り、カオスから抜け出すのは簡単ではなさそうだ。

 その理由は、①米国とイランの要求に大きな開きがある、②イラン側で交渉の主導権を握っているのが穏健派なのか強硬派なのか不透明、③米国の停戦に向けた戦略が見えないなどであろう。

 こうした膠着状態が続く中で、事態を打開する時限装置となりそうなのが、実はホルムズ海峡の封鎖ではなかろうか。

 世界経済の冠動脈と言ってもいいホルムズ海峡の封鎖が長引けば、世界経済、とりわけアジア各国の経済に大打撃を与える可能性がある。原油価格の高騰は自給率の高い米国にも間違いなく波及し、世界各国からの批判も高まるだろう。

 一方、米国が踏み切ったホルムズ海峡の逆封鎖は原油輸出を主な収益源とするイラン経済にとっても深刻だ。

 このため、米国とイランの我慢比べはそれほど長くは続けられないはずだ。この時限装置が起動したとき、停戦協議は自ずと進まざるを得なくなる。

 それでは、この我慢比べはいつまで、どのように続くのだろうか。

 そのカギとなるのが、イランによる海峡封鎖の軍事的能力であろう。イランが軍事的に封鎖を維持できなくなれば時限装置は即座に起動し、イランは停戦協議に応じざるを得ないからだ。

 そこで、今回はイランにホルムズ海峡を封鎖し続ける軍事力がどれだけあるのかどうかを検討してみたい。

イラン貨物船「TOUSKA」の拿捕

 米軍は、「イランの港を出入りするあらゆる海上交通の封鎖」を4月13日から始めると発表した。

 その後、米中央軍(CENTCOM)によれば、米海軍駆逐艦が4月19日、オマーン湾をイランに向かって航行し、海上封鎖の突破を試みたイラン貨物船「TOUSKA」の機関室を砲撃した。

 TOUSKAは航行不能となり、ヘリから乗船してきた米海兵隊によって拿捕された。

 戦闘艦艇から停船命令を受けても逃走して停止しない場合は、戦闘艦艇は強制的に停止させるために、砲撃を実施する可能性がある。

 砲撃されれば、命中した箇所にもよるが船体に穴が開き沈没するか、炎上して大きな被害を受ける可能性がある。そのため、停船命令を受けて停止しないのは極めて異例である。

 TOUSKAは2月24日にイランを出航し、3月下旬に中国沿岸の港湾(珠海・高欄港など)に入港してコンテナを積み込んだ後、イランに向けて帰港するところだったという。

 この時期に中国に寄港したこと、また米軍に停止するよう警告されてから、ヘリから特殊部隊のラぺリング降下(懸垂下降)と着船を許さないために航行速度を落とさず6時間も航海し続けたことなどから、検閲されては困る積み荷が含まれていた可能性がある。

 ドナルド・トランプ米大統領はCNBCに対し、「(この船には)あまり好まし⁠くないものが積まれていた。恐らく中国からの贈り物だろう。分からないが」​と​述べたとも報じられている。

 軍事専門家や米国のメディアなどの分析によれば、軍民両用(デュアルユース)品の可能性が高いという。この表現は、私はサニタイズ(情報源を特定されないため、あるいは政治的意図から奥歯に物が挟まったような言い回しを用いること)だとみている。

 米軍艦艇が砲撃までして停船させようとしたのは、積み荷に対して相当な確信があったからだろう。

 さて、米国とイスラエルの空爆によりイランの弾道ミサイルは大半が破壊された可能性が高い。

 ドローンはまだ相当数を保有しているとみられているが、ドローンだけで海峡封鎖を維持することは難しい。米軍の艦船、あるいは大型タンカーを沈没させられる火力を備えたミサイルは不可欠だろう。

 そうしたミサイルを量産するには部品や燃料が必要だ。イランはそれらを軍事転用可能な民生品として中国から輸入していたのではないだろうか。それらがTOUSKAに積載されていた可能性が高いと私はみている。

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