兵士1人でも携行可能な小火器が、対ドローン防衛の最終手段として浮上している。Sushchyk Kanstantsin/Global Images Ukraine via Getty Images銃器を「ドローンキラー」に変えるミニコンピューターシステムに、ヨーロッパ諸国が関心を示している。このシステムを開発した銃器メーカーが明かした。2022年以降、このテクノロジーを導入済み、あるいは前向きに検討しているヨーロッパの国は少なくとも10カ国に上ると、開発元のイスラエル・ウェポン・インダストリーズ(IWI)は述べた。このシステムへの関心の高まりは、対ドローン防衛に多くの資金が投じられているヨーロッパの現状を反映したものだ。
兵士に通常の装備品として支給されるライフルを、最終手段としての「ドローンキラー」に変えるテクノロジーに、ヨーロッパ各国の軍隊からの関心が高まっていると、イスラエルの銃器メーカーが明かした。その背景には、盛んに用いられるようになった無人機(ドローン)による攻撃システムに、より安価な手段で対抗する方法を各国が模索しているという事情がある。

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この話をBusiness Insiderに明かしたのは、銃器メーカーのイスラエル・ウェポン・インダストリーズ(Israel Weapon Industries:IWI)だ。それによると、2022年にロシアによる本格的なウクライナ侵攻が始まって以来、同社のアーベル(Arbel)システムを導入した、あるいは関心を示したヨーロッパの国は、少なくとも10カ国に上るという。アーベルは、ドローンを撃ち落とす任務に銃器を最適化する目的で開発されたマイクロコンピューターだ。
IWIは、購入した国や関心を示している国の具体名を明かすことは拒否した。だが、ヨーロッパの軍隊がこのところ、対ドローン防衛への関心を高めているのは事実だ。
ウクライナではドローンが戦場の主役となっている。ウクライナとロシアの双方が、ドローンを活用して偵察および精密照準爆撃能力を得ている。両国がより安価にドローンの脅威に対応する方法を開発するなかで、この紛争を注意深く見守っている周囲の国々も、同様のシステムへの投資を始めている。
IWIでヨーロッパ地域を統括するセミオン(Semion)氏によれば、同社のアーベル・システムは、すでに世界各国の軍隊(数は非公開)で用いられているという(なお、セミオン氏からは安全上の理由から記事に掲載するのは名前だけにするようにとの要請があった)。
現在の傾向を見ると、ヨーロッパの国々のうち40~50%は、2026年までにアーベルを調達するか、検討が大詰めを迎えるだろうとセミオン氏は予測している。これは、ヨーロッパ全土でコスト効率の良い対ドローン防衛への投資が増加している状況を反映したものだ。
ドローンは、「戦場の新たな弾丸」になった
ウクライナの戦場では、さまざまな形状、大きさ、機能を持つドローンが主要な役割を果たしている。だが、双方の兵士にとって最も厄介な兵器の一つが、一人称視点(FPV)システムと呼ばれる小型のクワッドコプターだ。
FPVドローンには爆薬が搭載されていることが多く、これによってドローンは、安価な精密照準爆撃兵器と化す。これに対抗する側の兵士は、妨害電波を使って、ドローンの信号接続を妨げている。
ドローンの中でも、光ファイバーケーブルで制御するタイプがウクライナの戦場の主役となっている。Kostiantyn Liberov/Libkos/Getty Images
こうしたなかでFPVドローンは、無線ではなく、操縦士と機体を直接つなぐ光ファイバーケーブルで制御するタイプが増えている。こうしたタイプのドローンは、電波妨害などの電子戦の影響を受けない。この場合、残された唯一の対抗策は小火器による撃墜だが、この場合は、標的を狙う際にかなりの正確性が要求され、運に左右される部分も大きい。
多くのケースにおいてドローンは、ショットガン(散弾銃)以外の手段では命中させるのが難しい標的だ。しかもショットガンを使ったとしても、撃墜できる保証はない。ドローンは素早く、予想外の動きを見せるからだ。
ドローンが、現代の戦場で恒久的な装備としての地位を固めるなかで、各国の軍隊は先を争うように、前述のアーベルのような、兵士が単独で携行可能な対ドローン兵器の確保に動いている。これは、ドローン兵器からの攻撃を受ける側に回った際に備えるものだ。
アーベルは、軽機関銃やアサルトライフルに装着可能な、コンピューターを内蔵した小型システムだ。これを装着することで、迅速な反応や、小型ドローンなどの動く標的に対抗する必要がある場面において、より正確な射撃が可能になるとセミオン氏は説明する。
アーベルが起動すると、兵士が銃の引き金を引き続けるだけで、標的に命中する可能性が最も高いタイミングで自動的に銃弾を発射する。アーベルを使えば、日中は約450メートル、夜間は約200メートル先までのドローンを撃墜できるという。
このシステムのセンサーは、銃の動きや安定性、引き金にかかる圧力など、銃を構える兵士の行動を読み取る。一度引き金が引かれた状態になれば、兵士はドローンを視界に捉えるだけでいい。それぞれの射撃時に弾を発射すべき正確なタイミングは、アーベルが見極めてくれるからだ。
アーベルはバッテリー駆動で、装着しても銃は400グラムほどしか重くならず、兵士も即座に適応できる。セミオン氏は、このシステムは低価格だと述べたが、導入や運用にかかるコストに関しては詳細を明らかにしなかった。
セミオン氏は、今日ではドローンは「戦場における新たな銃弾」の役割を果たしていると指摘した上で、このシステムは、ヘルメットや防弾ベストといった、兵士に支給される装備のようなものだと述べた。
アーベルは、銃器に追加するミニコンピューターシステムだ。Courtesy of Israel Weapons Industries
アーベルそのものが、標的としている物体が何かを把握しているわけではない。セミオン氏によれば、迎撃対象を選ぶ責任は兵士が負うという。
