コラム:トランプ関税、最も痛手受けるのは中国以外のアジア新興国か

 トランプ米大統領(写真)は関税を好み、大きな数字に注目する。2月10日、ワシントンで撮影(2025年 ロイター/Kevin Lamarque)

[オーランド(米フロリダ州) 11日 ロイター] – トランプ米大統領は関税を好み、大きな数字に注目する。だから同氏が貿易戦争の最初の標的として、ドル建ての膨大な対米貿易黒字を抱える国・地域が名指しされるのは当然だ。

しかし米国の二国間貿易赤字を貿易相手国の国内総生産(GDP)に対する比率で測定するか、赤字が急速に拡大しているという点に目を向けると、最も懸念する必要があるのは中国を除くアジアの新興国と言える。

これらの国は、GDPと比較した対米貿易黒字が非常に大きい。トランプ氏が1期目の大統領となった8年前の2017年に「米国第一」の保護主義的な姿勢を打ち出して以来、貿易不均衡はかなり拡大してきた。米国がこれらアジア新興諸国の対米輸出に重い関税をかければ、彼らの成長や国内投資、国内市場全てが危険にさらされる。

傷口に塩を塗るようだが、アジア新興諸国は2017年以降、中国との通商上の結びつきも強まっている以上、米中貿易戦争の「とばっちり」も大きくなりそうだ。

アジア新興諸国はまさに「どちらに転んでも負け」の状況に直面する恐れがある。

<中国プラス1>

米国の二国間貿易赤字額を見ると、上位15カ国のうち9カ国がアジアとなっている。

これはいわゆる「中国プラス1」戦略、つまり米企業が中国だけでなく、中国と経済的な関係が緊密な国に投資してきたことが一因だ。この流れは、第1次トランプ政権中と新型コロナウイルスのパンデミック以来、かなり強まっている。

アジア新興諸国の全輸出に占める対米輸出の比率は近年、11%から18%に急上昇してきた。

JPモルガンのエコノミストチームによる分析によれば、これらの国の中国との通商関係も強化され、現在アジア新興諸国の合計輸出の45%が米国と中国向けだ。

韓国の対米黒字はGDP比率で見ると中国の2倍以上、台湾の黒字はGDPの10%近くに上る。

特に足場がぜい弱かもしれないのはタイとベトナムだ。シティのエコノミストチームの計算では、タイの対米黒字は2017年以降で343%、ベトナムも222%それぞれ拡大した。

実際タイの対米貿易黒字額は、欧州連合(EU)を1つの単位とすれば国・地域別で上から5番目となり、日本や韓国を上回っている。2017年当時、タイの対米黒字が上から13番目だったことを踏まえると、とりわけこれは特筆に値する。

一方でベトナムの趨勢は、過去10年で米国と中国の双方との貿易を飛躍的に拡大し、米中関係悪化に伴う世界的な貿易フローの変化がより深く進んだことの象徴になった。足元では全輸出の約30%が米国向け、17%が中国向けで、対GDP比はそれぞれ25%前後と14%だ。

タイとベトナムは国際貿易において自分たちのウエートを超える役割を演じているのは確かだが、米国の関税発動に対して相応の報復に動ける経済的な力はない。さらに両国とも近年は中国からの大幅な投資という恩恵を享受しているので、米中貿易戦争が本格的にヒートアップすれば、追加的なリスクにさらされる。

<米国プラス1>

中国の場合は実のところ、「米国プラス1」と呼ぶ戦略を採用することで、米国の政策転換にもかかわらず世界における市場シェアを維持できている。モルガン・スタンレーによると、中国から新興国市場向けの輸出が全輸出に占める比率は、2000年の16%から2023年には44%と約3倍に急上昇した。半面、対米輸出の比率は21%から16%に低下した。

それでも、モルガン・スタンレーのジタニア・カンダリ氏が先週記したように「貿易のルールは書き換えられつつあるが、中国が主導するアジアがなお全体の重心になっている点は変わっていない」というのは真実かもしれない。

しかし、いずれ世界的な貿易戦争に発展しかねない今の状況を支配しているのは米国だ。アジア新興諸国にとっては残念なことに、彼らが多くの「前線」で矢面に立たされる公算が大きい。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab

筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

Jamie McGeever has been a financial journalist since 1998, reporting from Brazil, Spain, New York, London, and now back in the U.S. again. Focus on economics, central banks, policymakers, and global markets – especially FX and fixed income. Follow me on Twitter: @ReutersJamie