[New門]は、旬のニュースを記者が解き明かすコーナーです。今回のテーマは「陸上シューズ」。

没後30年以上、人気衰えない安部公房…寓意とユーモアで現代社会を見つめる

 陸上競技の長距離界に革命を起こした厚底シューズ。「日本の女子選手は恩恵を受けにくい」とされてきたが、今年1月、前田穂南選手(27)(天満屋)が厚底を履いて19年ぶりに女子マラソンの日本新記録を樹立した。その道のりから見えるのは、進化する用具を使いこなすために努力を重ねるアスリートの姿だ。薄底から履き替え 走法に変化 関係者が待ち望んだ瞬間だった。1月末の大阪国際女子マラソンで前田選手が2時間18分59秒をマークして2位となり、野口みずきさん(45)が2005年ベルリンで出した日本記録を13秒更新。支えたのはアシックスの「メタスピードスカイ」だ。詳細は非公表だが、ベースとなった市販品でも靴底の厚さ約38.5ミリの厚底シューズ。前田選手は「これまでは『脱いで走りたい』と思うくらい合わなかったけど、今はゆとりを持って(脚を)動かせる」と語った。 前田選手は21年東京五輪の男女日本代表で唯一、従来型の薄底で出場。33位に終わり、パリ五輪での雪辱を期して厚底に挑んだ。 素足に近い感覚の薄底に対し、厚底は内蔵のカーボンプレートを踏んで得られる反発力を推進力に変える。機能が異なるシューズへの適応に約2年半もの時間を要し、武冨豊・天満屋専任コーチ(70)は「反発に負けてしまい、かなり苦労した。使いこなせるようになったのは今年に入ってから」と明かす。ナイキが一般発売 世界を席巻
 1960年ローマ五輪でアベベ・ビキラ選手(エチオピア)が
裸足(はだし)
で快走したのは有名だが、シューズはかつて靴底が薄く素足に近いものほど理想とされた。国内でも「日本マラソンの父」と呼ばれる金栗
四三(しそう)
さんらが開発した金栗足袋を源流に、薄底が主流の時代が長く続いた。野口さんがベルリンで履いたアシックスの「ソーティジャパン」は厚さ19ミリ。前田選手のシューズとは約20ミリもの差がある。
 開発思想を「ランナーの速度向上」へと転換したのが、ナイキの厚底シューズだ。2016年リオデジャネイロ五輪男子マラソンで、エリウド・キプチョゲ選手(ケニア)が試作品で金メダルを獲得。17年に一般発売されると瞬く間に世界を席巻し、トップ選手がこぞって履く状況となった。マラソンの男子では18年以降、世界記録が3度、日本記録は4度塗り替えられ、女子でも昨年のベルリンでティギスト・アセファ選手(エチオピア)が2時間11分53秒という驚異的な世界新をマークした。

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