水槽の底でじーっと動かず、一見、何を考えているのかわからない……。滋賀県立琵琶湖博物館(草津市)にいるビワコオオナマズは、館内に数いる生きものの中でも、おとなしそうに見えるが、侮ることなかれ。実はとても気性が激しく、グルメな一面を持った「琵琶湖の主」だ。1300万年前から存在 琵琶湖が誕生したのは、およそ400万年前で、ビワコオオナマズは、その頃の湖の地層から化石で見つかっている。 でもDNA解析によると、約1300万年前には、すでに種として存在していたことがわかっている。つまり琵琶湖よりはるかに「年上」なのだ。
 琵琶湖は約260万年前に地殻変動などで沼や川に変わったことがあった。ビワコオオナマズはその時代にも周囲の水域で生き残り、再び琵琶湖が形成されると湖に
棲(す)
みつき、現代に至っている。
 ちなみに同じ琵琶湖固有種のホンモロコが誕生したのは約240万年前、ゲンゴロウブナは約260万年前。この巨大ナマズは、ダントツに古株で「琵琶湖の主」の名にふさわしい。「一匹ナマズ」 同館では現在、8匹を飼育しているが、全て別々の水槽で暮らしている。 「気が強く、他のナマズと一緒にいるとすぐに縄張り争いのようなケンカになってしまう。かみついてけがをさせることもあり、複数での展示も難しいのです」 同館の鈴木隆仁・主任学芸員(40)は、飼育の難しさをそう説明する。「一匹オオカミ」ならぬ「一匹ナマズ」。館では将来的に繁殖を目指しているが、まずは複数飼いを成功させることが必要で、その道のりは遠いらしい。切り身は好かん 夜行性で日中はじっとしていることが多いものの、夕方になると、泳ぐ姿が見られることもあるという。 エサは、琵琶湖に昔からいるウグイやアユを好む。 鈴木学芸員によると「新鮮な生きたままの状態がお気に入りで、切り身はなかなか食べてくれないグルメさん」なのだとか。 特に成体になってから博物館に来た個体は餌付けが難しく、飼育員が根負けすることもあるとのこと。頑固な美食家を飼うのは大変なようだ。ブラックバスなどと競合 同館では昨年2月、ビワコオオナマズ用の大型水槽が破損して約100トンの水が流出。飼育していた1匹のビワコオオナマズが割れた水槽の底の水たまりで発見され、助け出された。 すり傷を負い、飼育員を慌てさせたが、すっかり回復し、別の水槽で元気な姿を見せている。元の水槽も新調にむけ準備中だ。 ただ外に目を転じると、野生のビワコオオナマズは滋賀県のレッドデータブックで希少種に選定されている。護岸工事などによる産卵場所の縮小や、ブラックバスといった外来種との競合が課題だ。 保護の前提となる生態についても、よくわからない部分が多く、同館でも研究や調査は途上にある。琵琶湖の主は謎に包まれた存在なのだ。(角川哲朗)謎に包まれた生態 主任学芸員・鈴木隆仁さん主任学芸員・鈴木隆仁さん主任学芸員・鈴木隆仁さん 「琵琶湖の主」とはいえ、普段は琵琶湖のどのあたりの水深にいるのか、どう暮らしているのか、わからないことが多いです。琵琶湖の伝統漁法「えり漁」の網などにかかった個体が博物館に持ち込まれることもありますが、「どうやってたどり着いたの?」とこちらから聞きたいくらい。ぼーっとした顔に見えますが、多くの謎を抱えている。それも魅力のひとつですね。

Share.