築地(東京都中央区)の市場機能が豊洲(江東区)に移転して5年半、築地市場跡地(約19ヘクタール)が「再生」に向けて動き出す。19日、再開発を担う事業予定者が決定した。計10ヘクタールのオープンスペースに散策できる歩行者・水辺空間が整備され、2030年代前半には都民の憩いの場に生まれ変わる計画だ。
隅田川沿いのオープンスペースのイメージ図隅田川沿いのオープンスペースのイメージ図
 「市場があった頃のように、『新たな街』と一緒に築地を盛り上げていきたい」
 築地場外市場商店街振興組合の鈴木章夫理事長(74)はそう歓迎した。場外市場では現在、約460店が営業しており、市場移転前と店舗数に大きな変化はない。ただ、夕方以降はほとんどの店が閉まって寂しい雰囲気といい、鈴木理事長は「再開発が進めば、夜も営業する店が増えるはず」と声を弾ませた。
 一方、中央区の山本泰人区長は、都からの正式な連絡はないとした上で、「歴史的な地域でもあり、水と緑に恵まれ、世界の方をお迎え出来る、新しいにぎわいの場所になる」と期待を寄せた。
築地市場跡地(東京都中央区で、読売ヘリから)=林陽一撮影築地市場跡地(東京都中央区で、読売ヘリから)=林陽一撮影
 都は東京五輪・パラリンピック後の臨海部開発を進めるため、22年に策定したまちづくり戦略で、「質の高い緑と魅力ある水辺空間の形成」を一つの目標に掲げた。市場跡地の開発をする事業者にも、緑のネットワークや水辺空間の形成を求めていた。

 事業予定者の計画では、場外市場などと、都が29年度に隅田川沿いに開設する船着き場を歩行者空間でつなぎ、都民らが様々な活動を行うことができる広場を設ける。
 船着き場に加え、築地には都が2040年頃の開業を目指す「臨海地下鉄」の新駅も計画されている。交通機能の充実によって交流人口が一気に拡大する可能性があり、場外市場や浜離宮恩賜庭園など、周辺のにぎわい・観光エリアとの相乗効果が期待される。
 地元でスーパーを営む男性(83)は「緑がたくさんある広場も作られるようなので、地元の人も行きやすい空間になるのではないか」と喜んだ。

移転・再開発、曲折の末

 築地市場の移転と再開発は、曲折をたどった。

 都と市場関係者による協議会が、老朽化を理由に築地市場を江東区豊洲に移転すべきだとの方針を取りまとめたのは1999年11月。2001年12月には移転が正式に決まった。
 だが、移転先の土壌から高濃度の有害物質が検出され、土壌改良工事を余儀なくされた。工事終了後、移転日程がいったん決まったが、16年7月に初当選した小池知事が安全性に懸念を示して延期を発表。市場跡地に「食のテーマパーク」を作って市場機能を持たせる構想も表明し、関係者の混乱を招いた。
 結局、構想はトーンダウンし、18年10月に市場は豊洲に移転した。都は19年3月、大規模集客・交流施設や国際会議場、交通ターミナル機能の整備などを盛り込んだ市場跡地のまちづくり方針を策定。昨年8月、事業者からの提案書を受け付け、有識者による審査を行ってきた。

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