Osmo Pocket 4P

米国と中国のハイテク業界における経済摩擦が続いている。2010年代初頭に通信分野から始まった米国の規制は今なお継続しており、その規制の影響を受けているのが、日本でもドローン、アクションカメラ、ジンバルカメラを投入するDJIだ。米国では、規制のために現在はDJI製品を購入できなくなっている。

発端はHuaweiから

この米国での規制の端緒となったのは中国の通信大手Huaweiだ。通信機器や基地局などで世界的なシェアを伸ばして世界最大手となっていたHuaweiに対して、2010年頃までには米国政府が警戒を強めて同社の米国企業買収を阻止するなどしていたが、2012年には米下院情報特別委員会によるレポートで、HuaweiやZTEの通信機器に、中国政府によるバックドアなどが含まれており、悪用されているとの勧告が出され、対立が決定的となった。

2013年以降は米政府調達からの排除が始まり、第一次トランプ政権下の2018年にはHuaweiとZTEが名指しで米国防総省からの調達を禁止された。

対立が激化した2019年、米国は禁輸措置の対象を定めた「エンティティリスト」にHuaweiと関連企業を追加。これによって米国企業がHuaweiに米国の技術や部品を輸出することが原則禁止とされた。その後、米国の通信政策を担う米連邦通信委員会(FCC)がHuawei製品の排除を開始。結果としてHuaweiは、米国から携帯基地局のような通信機器から撤退したほか、スマートフォンのSoCやOSが使えなくなったことで一般向けのスマートフォンでも排除されるようになった。

Huaweiは、ライカカメラとの協業による高性能カメラを搭載したスマートフォンの先駆けとなった企業だったが、その後は独自のOSや半導体の開発をさらに強化して独自路線を進んでいくことになる。

これは日本にも影響があり、特に5G関連の通信機器が排除され、さらにAndroid OSを事実上搭載できなくなったHuaweiのスマートフォン製品は日本市場から消え、現在も日本市場には戻ってきていない。

ドローンからカメラへ波及

このHuaweiの規制の動きがDJIにも適用されている。DJIがエンティティリスト入りしたのは2020年。米国製品の利用ができなくなったDJIだが、スマートフォンとは異なりまだ影響は小さかった。しかし、2025年12月にFCCがDJIの規制を決定。新規機器が認可されなくなったことで、米国市場からDJI製品が排除されることになった。

DJIが特にターゲットになったのは、ドローンの世界的なシェアが高まり、さまざまな分野で使われるようになったことが影響しているためだ。DJIの製品への規制は、ドローンだけでなくビデオ関連製品にも及んでおり、結果としてDJIのアクションカメラ「Osmo Action」やジンバルカメラの「Osmo Pocket」といったシリーズもターゲットとなり、米国への輸入・販売が禁止された。そのため、最新の「Osmo Pocket 4」や「Osmo Pocket 4P」は米国市場で販売されていない。

ところが、米国市場にはDJIとそっくりな製品を提供する企業が存在している。「Xtra」という企業がアクションカメラ「Xtra Edge」、ジンバルカメラ「Xtra Muse」といったカメラを投入(なぜか日本語サイトも用意されている)。

「Xtra Muse」の購入ページ。外観やスペックが「Osmo Pocket 4」に近似している

ドローンでは「Cogito」が「Specta」ブランドの製品を展開。ほかにも複数の企業が「DJI製品そっくり」の製品(主にドローン)を米国で展開していた。

こうした企業に対してFCCは、DJIのダミー会社またはDJIのハードウェアの完全なコピー品を別ブランドで製造・販売していると指摘。例えば米国で販売されている一部のサードパーティ製アクセサリー製品には、対応機種にDJIとXtraを同時に記載しているものもあり、「同じ仕様の製品」であると言えそうだ。

解決は難しく効果は未知数?

こうした点を踏まえてFCCは、この7月に入ってDJIと同様に米国での販売を禁止する方針を示した(まだ決定はしていない)。

もともと政治的な思惑から始まった規制だけに、解決が難しい。ただ、Huaweiも中国市場で新製品投入を続けており、DJIもドローンだけでなくアクションカメラやジンバルなどで高品質な製品を投入している。同様に規制の激しいAI業界でも中国勢の進化は目覚ましく、米国政府の施策に思惑通りの効果があるかは未知数だ。

なお、DJIは、政府機関を含めた多くの分野で活用されていることから米政府に目を付けられた形で、例えばアクションカメラなどでライバルのInsta360は米国で購入できるが、今後シェアを拡大して政府機関に食い込んでいこうとしたら、同様にターゲットになる可能性もある。

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