それはマルク・ククレジャの足元から始まった。

 W杯準決勝、スペインの2点目が生まれた場面だ。

 時計は後半11分を過ぎていた。左サイドライン際のククレジャから中央を経由し右サイドへ。前へ急ぐことはない。センターバックにもボールを戻しながら、よどみなくパスを繋いでいく。

 一瞬、ダニ・オルモの前が空いた。

 さあ前へ。メッセージ付きの優しい縦パスが入る。オルモは前進し、2度のトライ――アレックス・バエナのシュートとロドリのクロス――は跳ね返されるも、すぐにファビアン・ルイスと2人がかりで回収し、再び右サイドへ展開する。

 オルモとの連携によるペドロ・ポロのゴールはそこから生まれた。

「67秒間の詩」

 スペインのスポーツ紙「アス」は、ククレジャがボールに絡んでから得点までの一連の流れをそう表現した。

 スペインの決勝進出を決定づけるだけでなく、国のサッカーの歩みを象徴するゴールの裏には、56のタッチがあり、18のパスがあった。

 パスを紡ぎ終えたマエストロたちが、歓喜のポロに集まってくる。ピッチの遠いところでは、フランスのアタッカーがうなだれていた。

 それはスペインの信念が乗り移った67秒間だった。

 大会が終盤に差し掛かった時点で、米国ではフランス優勝の予想が圧倒的だった。

 準決勝が行われたダラスのメイン通りにフランス代表の宿舎はある。通路は警察により封鎖され、その前には青いユニフォームを着た大勢のファンが列を作っていた。隣国カナダのフランス系移民に、大西洋を渡ってやってきた本国のフランス人。ブルーのユニフォームを着たアメリカ人もいる。

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