高知の豊かな風土が育む食の魅力を紹介する「土佐のfood記」。
担当は、揚田葵衣アナウンサーです。

今回はこの時期が旬の、高知県宿毛市のキビナゴです。地元ならではの味わい方に迫ります。
1年の中でも特においしい、旬の季節を迎えた宿毛市のキビナゴ!

おなじみの、定番の味わいに。鮮度抜群だからこそいただける、地元ならではの食べ方も。

■揚田アナ
「宿毛市にある田ノ浦漁港です。宿毛の春の魚といえばキビナゴ。今まさにキビナゴの漁が行われる時期」

朝6時。漁から帰ってきた船が、次々と漁港に入ってきました。港ではさっそく水揚げが始まり、銀色に輝くキビナゴが運び込まれます。特産のキビナゴでにぎわう、宿毛市の風物詩です。

四国の西南端に位置する宿毛湾。「魚のゆりかご」や「天然の養殖場」と呼ばれるほど、魚種が豊富な海です。
キビナゴは全盛期には、年間3000トン以上が水揚げされていましたが、近年は30分の1ほどに落ち込んでいるといいます。

■すくも湾漁協・東さん
「豪雨や黒潮大蛇行とかが重なって、今の水揚げの減少になっていると思います。『宿毛といったらキビナゴ』というイメージが地元民にも強いので、やっぱり(キビナゴを)獲って、全国の人々にも食べてもらいたいという思いは(漁師も)強いと思う」

地元の漁師は今年、2026年のキビナゴ漁が、これから本格化することに期待を寄せています。

■漁師・河原さん
「本当に最近とれないので、とても貴重な魚ですね、宿毛湾にとって。今日のキビナゴの状態はとても良いです。獲れました新鮮なものが」

獲れたてのキビナゴは、鮮魚のほか、丸干しやオイル漬けなどに加工され、地元のスーパーに並びます。

■買い物客
「馴染み深いです。小さい時からキビナゴは。天ぷら、焼いたり、生でと色々ありますね。なんでもおいしいです」
「キビナゴはよく見る食材で、義理の母が宿毛出身なので、刺身にしたり、クセもないのでとてもおいしいと感じました」

学校給食にも登場するなど、地元はもちろん、高知県内で広く親しまれています。

では、高知でなじみ深いキビナゴですが、海のどのあたりまで分布しているでしょう?
高知県水産試験場によりますとキビナゴは、インド洋から西太平洋の温かい海、さらに東アフリカ沿岸まで広く分布しています。
日本では、黒潮や対馬暖流の影響を受ける地域に見られ、このあたりが分布の北限とされています。身近な魚ですが、じつは世界の広い海で見られるんです。

宿毛湾で獲れたキビナゴ。地元ではどんな食べ方があるのか、飲食店を訪ねました。まずは、定番の天ぷら。衣をつけたキビナゴを丸ごと揚げます。ポン酢につける、宿毛流でいただきます。

■揚田アナ
「周りのサクッとした衣の中からキビナゴのうま味がしっかり感じられて、最後にポン酢でさっぱりと、口あたりが良いですね、おいしいです。今まで食べたキビナゴの中でも、この天ぷらが1番柔らかかったです」
■稲田料理長
「柔らかいでしょ。地元ですぐ揚がるから、臭みもなくて、キビナゴ自体のおいしさが味わえます

■揚田アナ
「地元では、揚げ物以外の食べ方があるらしいですね?」
■西田店長
「刺身ですね」
■揚田アナ
「生で食べられるんですか!?」

鮮度が落ちやすいキビナゴですが、獲れたてが手に入る宿毛では、刺身でも味わえるんです。丼でいただきます。(※刺身は要予約)

■揚田アナ
「臭みが全然ないですね。つるんとしたのどごしがおいしいです」
■稲田料理長
「その日揚がったものを、血が回らないうちにさばいて、お刺身として提供しています」

さらに、キビナゴで地元を盛り上げたいと作られた郷土料理があります。
教えてくれるのは、魚料理の注文販売などを行う「土佐ひめいち」の代表で漁師でもある、河原権士郎さん(29)です。

■土佐ひめいち代表 河原権士郎さん
「キビナゴのほおかぶりという、おから寿司です」
■揚田アナ
「おから寿司、この辺りでは有名なものなんですか?」
■河原さん
「宿毛では昔、おからを使ったお寿司が作られていて、(高知県)四万十市にはウルメイワシを使ったおから寿司があったので、それをヒントに母が作りました」

今年(2026年)亡くなった、河原さんの母・多絵さん。キビナゴが豊漁だった頃、宿毛をPRしたいという思いで、キビナゴのおから寿司を作り始めました。

河原さんは以前、高知市で働いていましたが、家業の「まき網漁」を継ぐため5年前に宿毛に戻りました。母のレシピを受け継いた、ほおかぶりを作ってもらいます。

刻んだショウガや、焼いてほぐしたサバを油で炒め、おから、酢、砂糖を入れます。ここで豆乳を入れるのがポイント。

■河原さん
「豆乳を入れることによって、おからがぼそぼそしない、しっとりします」

調味料で味を整えて冷ましたら、一口大に丸めます。キビナゴは丁寧に手で開き、擦ったショウガが入った特製のお酢で締めたあと、おからにのせていきます。この味には、河原さん自身の思い出も詰まっています。

■揚田アナ
「河原さんにとってはどんな味ですか?」
■河原さん
「母の味ですよ、完全に」

宿毛市の郷土料理、キビナゴのほおかぶり。
横から見ると、人がほおかぶりをしているように見えることから、この呼び名が付きました。

■揚田アナ
「口に入れた瞬間おからがほどけてきますね。お酢で締められているから、キビナゴも少し食感がしっかりしていておいしいですし、ショウガもたっぷり入っているのでアクセントになりますね」
■河原さん
「お米よりヘルシーなので、何個でも食べられるようにしています」

母から受け継いだ味を、いまは河原さんが守っています。

■河原さん
「母の味を全国に広められるように作っていきたいと思います」

宿毛市のキビナゴ。家族の記憶とともに受け継がれる、 やさしい宿毛の初夏の味でした。

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