大阪大学と立命館大学は、半極性(2021)GaN上にEu添加GaN薄膜を成長することで、極めて発光効率の高いEu発光中心が優先的に形成されることを明らかにした(ニュースリリース)。
(図)赤色発光を呈す Eu 添加GaN は、半極性面GaN上への成膜によりさらなる高輝度化が可能。
近年、超高精細な次世代マイクロLEDディスプレイの実現に向けて、既に実用化されている青・緑色LEDと同じ材料系であるGaN系半導体を用いた赤色LEDの開発が求められている。青・緑色LEDを構成しているInGaN量子井戸を用いた赤色LEDも開発されているが、電流注入時に生じる顕著な波長シフトが課題となっている。
一方で、GaNに希土類元素のEuを添加したEu添加GaNは、Euの4f殻内遷移に基づく波長安定かつ狭線幅の赤色発光を示すため、これらの問題を克服できる有望な材料。しかし、従来の極性(0001)GaN上に結晶を成長させた場合、発光効率の低いEu発光中心が意図せず多数形成されてしまうという課題がある。
研究グループは、GaNの結晶成長方位に着目し、半極性(2021)GaN上に有機金属気相成長法を用いてEu添加GaN層を成長させた。試料に対して共鳴励起発光分光法(CEES)を用いた詳細な解析を行った結果、従来の結晶成長面では多く見られていた発光効率の低いEuクラスター(OMVPE1、OMVPE2)が消失していることが分かった。代わりに、酸素原子の取り込みが促進されたことによって、極めて発光効率の高い発光中心である「OMVPE7」の濃度が100倍以上にまで劇的に増加することを見出した。
(図)実作したEu添加GaNの赤色発光スペクトル。半極性面GaN上への結晶成長で光強度が3.6倍に増大した。
(図)従来はEuがクラスター化して効率の低いEu発光中心(OMVPE1,2)を形成。半極性面成長では、酸素不純物の取り込みが向上し、高効率なOMVPE7と呼ばれる発光中心が増加する。
また、高効率な発光中心が増加したことで、強励起条件下における発光効率の低下(効率ドループ)も顕著に抑制される良好な特性を示すことが確認された。結果として、室温下での発光強度が従来比3.6倍以上に増大することが実証された。この成果は、結晶成長面を変えるだけで、高効率なEu発光中心が選択的に自己形成することを示しており、電流注入時にも波長シフトが起きない超波長安定なGaN系赤色LEDのさらなる高出力化につながる重要な結果だという。
今回の研究成果により、半極性面基板の活用が、高効率なEu発光中心を優先的に形成するうえで極めて有効な手法であることが示さた。青・緑色InGaN系LEDとも材料系が一致するため、波長シフトのない安定した高出力赤色LEDが実現可能となることで、同一の半極性面基板上へのモノリシックフルカラーLED集積への道筋が明確になった。これにより、次世代ディスプレイの要となる超小型フルカラーマイクロLEDの実用化が大きく前進することが期待されている。