停戦期待とAI・半導体への期待で、S&P500は7,000の壁を突破
S&P500は2026年3月30日に年初来安値(6,343)を付けた後、3月31日以降は米・イラン交渉を巡る報道などをきっかけに、停戦期待相場に転じ始めました。4月11~12日の米・イラン交渉では合意形成には至らなかったものの、交渉継続は買い材料となり、第3次世界大戦につながるような最悪事態は回避できるとの期待が高まりました。原油価格上昇が一服したことに加え、FRB(米連邦準備理事会)のタカ派化(金融緩和に消極的)懸念が和らいだことも、市場心理を支える要因となりました。
4月15日には7,000を突破しました。終値ベースでは初めてです。場中では1月28日に7,000を上回り、その後も2月上旬に何度か7,000に接近しましたが、いずれも跳ね返されました。その後はイラン情勢の緊迫化で10%近い調整となりましたが、底打ち後に最高値を更新するまでの期間は2週間前後と短期間でした。
野村證券では従来、S&P500が7,000の壁を突破する時期を2026年末とみていましたが、想定以上に早い展開となりました。停戦期待には見切り発車の面がありますが、大局的には遅かれ早かれ緊張は緩和に向かうとみてよいでしょう。株安方向にポジションを傾けていたマクロ・CTA(商品投資顧問)の買い戻し観測も、相場の一段高につながりました。
先行きのS&P500の見通しを引き上げ
S&P500の2026年1-3月期決算の進捗状況や、野村證券による米国マクロ経済見通し(実質GDP(国内総生産)の下方修正、名目GDPの上方修正)、米国の交易条件改善見通しを踏まえ、トップダウンによるEPS(1株当たり利益)見通しを上方修正します。トップダウンで算出したS&P500のEPSは、2025年の269.3から、2026年は330.4、2027年は371.0、2028年は402.1へと引き上げます。
野村予想通り、米国の実質GDPが2026年に前年比2.2%増、2027年に同1.9%増、CPI(消費者物価指数)が2026年に同3.5%上昇、2027年に同2.3%上昇し、FF(フェデラルファンド)金利が2026年末に3.125%まで引き下げられる状況であれば、「G>R」(名目経済成長率が名目長期金利を上回る状態)が長期化し、株式市場にとって基本的にポジティブな環境になりやすいと考えます。仮に野村予想の年内2回の利下げが実現しなくても、「G>R」の環境は継続しやすいとみられます。EPSの拡大を背景とする株高、すなわち業績相場の局面に入っており、景気拡大が続く限り、業績拡大局面も続きやすいと考えます。
これを踏まえ、S&P500の見通しを引き上げます。メインシナリオでは、2026年末を7,500(従来予想7,300)、2027年末を7,900(同7,600)、2028年末を8,300(同7,900)と見込んでいます。米国株の期待リターンは配当込みで6~7%程度、配当を除く株価指数ベースでは年5%程度の上昇が持続可能と考えています。
メインシナリオでは、イラン情勢が4~6月中に収束し、景気・企業業績およびAI需要が拡大し続けるほか、2026年中にFRBが2回(9月および12月)の利下げを実施することを想定しています。短期的には、2025年10月のAI一極集中相場直後のような警戒感が強まりやすく、大手テクノロジー企業の決算における投資コスト負担や電力不足への懸念、FRBのタカ派姿勢への警戒などが、上昇一服の要因になるとみています。
一方、レンジ上限となりうる上振れシナリオでは、イラン情勢が早期に収束し、景気・業績の拡大が続くほか、AI活用による生産性や収益性の改善がユーザー企業を含めて顕在化し、先端技術分野などへの設備投資が加速することを想定しています。逆に、レンジ下限となりうる下振れシナリオでは、イラン情勢が3~4四半期にわたり長期化し、景気・業績が大きく下振れることや、AI需要が失速するケースを想定しています。
米国株見通しと上下シナリオ
(出所)野村證券市場戦略リサーチ部作成
「半導体+ユーザー企業」分散の勧め
投資戦略では、引き続き半導体、金融、中小型株、クオリティー株、等ウェイト指数を組み合わせたバーベル戦略(両極端の性質の銘柄を同時に持つ戦略)を重視します。一方、REIT(不動産投資信託)は、株価上昇による国債との割安感低下などを踏まえ、注目セクターから除外します。また、ゲーム企業など半導体のヘビーユーザー企業や、資源インフラ関連企業を注目セクター・テーマに加えました。
半導体については、株価以上にEPSが拡大したことでPER(株価収益率)が低下しており、中長期では継続保有が適切と考えます。ただし、直近の利益水準や価格、マージン(粗利)の持続性にはやや不透明感があります。そのため、分散投資の観点では、メモリーなどの半導体価格高騰が短期的な逆風となっている半導体のヘビーユーザー企業の株も合わせて保有することで、長期的な分散効果が期待できます。この観点では、ゲーム機、PC、カメラの製造企業が注目されます。
また、株価が急落した石油・ガス探査・開発セクターや石油・ガス精製・販売セクターは、PERが10倍前後まで低下しており、押し目買いがしやすくなっています。3月のように、地政学リスクなどで原油高となった局面では、高値で買うのではなく、中長期では利益確定のタイミングとすることが有効と考えます。
金融セクターは、PERが15倍前後とバリュエーション(投資尺度)面の妙味があり、引き続き注目したい分野です。3月以降はS&P500をアウトパフォームしており、割安感に着目した評価が入りやすい状況です。
業績予想を上方修正した企業の比率が高い一方、株安によりPERが低下した指数・セクターとしては、等ウェイト指数、半導体セクター、金融セクター、石油・ガス探査・開発セクター、石油・ガス精製・販売セクター、金セクターなどが挙げられます。
(編集:野村證券投資情報部)
編集元アナリストレポート
米国マクロメモ:S&P500の業績・指数見通し引き上げ – 停戦期待とAI・半導体期待でS&P500は7,000の壁を突破、今後も最高値更新へ(2026年4月30日配信)
(注)各種データや見通しは、編集元アナリストレポートの配信日時点に基づいています。画像はイメージ。
※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。
