
鹿の角をもって戻って来る住職
例年になく早く梅雨が明けた今年の夏。7月中旬この日は、前日に久しぶりの雨が降りました。奈良県桜井市にある音羽山観音寺の参道でも、雨上がり恒例のサワガニの姿もあり、緑もどこか元気になったように見えます。山を登っているとさすがに汗が噴き出てきますが、ふもとよりは随分と涼しく感じます。
この日は火曜日で観音寺はお休みの日。表の門は鍵が閉まっているので、不動堂の方に回ると、サクラの散歩をしている後藤住職の姿がありました。
「猫を見張ってて、散歩に行きたがらないのよ」
先月取材に来た時、住職に新しい家族が増えていました。4匹のかわいい子猫です。先輩の犬のサクラは、家の中を走り回る猫たちが気になって仕方ないようです。
「ギンナン、これだけ落ちてるのよ」
県の天然記念物にも指定されているお葉付きイチョウは、去年はお休みの年。夏に実のようなものがたくさん落ちてしまい、秋のギンナンはバケツ1杯もないほどでした。見上げると、緑の枝にまだ緑色のギンナンがたくさん見えます。今年はなっているようにも見えますが……。
「上の方までなっているかしら」と心配そうな住職です。
境内にはキキョウが咲き始め、ナデシコやハス、ポンテデリア、テマリクサギなど色鮮やかな花が住職の庭を彩っています。
先月きれいに咲いていたバラは、何だかスリムになっています。
「バラはズクズク伸びていたんだけど、毛虫がいっぱいで丸坊主になっちゃって。半分切ったのよ」
夏は虫との戦いですね。それでも、7月中旬にまだバラが咲いているのは、さすが標高600mの観音寺です。
庭の写真を撮っていると、住職の姿がどこかに消えていました。サクラも一緒のようです。庭のさらに奥の方から戻ってきた住職の手には、枝のような何かがあります。
「鹿の角よ」
あっさりと言う住職。3日ほど前に見つけていて、どこかに置き忘れていたとのこと。山には鹿がたくさんいると聞き、帰り道で出会ったこともありますが、角を見るのは初めてです。
自然に落ちるそうで、年に1回見つかるかどうかとのこと。
「モノレールから見える場所にもう一つあるから、今年は2つね。探し回っているわけじゃないけど」
探せばもっとあるのかもしれません。鹿の角は、犬のおもちゃになるそうです。
音羽山観音寺
山の中にある尼寺。桜井市南音羽。
JR・近鉄桜井駅下車、桜井市コミュニティバス談山神社行、下居下車、約2km。
火曜日閉門。17日の御縁日が火曜日の時は開門、翌日閉門
