【写真で見る】デモ隊で埋め尽くされる香港島中心部(2019年6月12日撮影)

■息ができない…催涙ガスが立ち込める街でカメラを回し続けた

2019年6月。私は拡大しつつあった民主化デモを取材するため、香港に降り立った。

空港からすぐさま、香港島へ向かう。通りという通りが、「香港の自由」を訴えるデモ隊で埋め尽くされていた。デモ隊と対峙するのは、武装した香港警察。私が見たのは、スマートな国際金融都市というイメージからかけ離れた、「混乱の香港」だった。

突然、数百メートル先からデモ隊が必死の形相で私のほうに向かって走ってきた。「何が起きてるんだ?」思わずデモ隊と一緒に走り出す。すると、あたり一面が真っ白になった。

「催涙弾だ!」

香港警察が投げ込んだ催涙弾から白い煙が立ち込める。目、鼻、喉すべての粘膜が焼けるように熱くなり、私は激しくせき込んだ。息ができない。苦しい。目を開けていられない。それでも、私はカメラを回し続けた。

煙から逃れようとショッピングモールに駆け込むと、デモ隊のひとりが「これで洗うように」と水を手渡してくれた。顔にバシャバシャと水をかけ、催涙ガスを洗い流す。ようやく呼吸が落ち着いた。

これが、私の香港との出会いだった。

■失われる「期限付きの自由」 迫る中国の影、危機感を持った香港人

デモの発端は2018年に台湾で起きた、殺人事件だった。香港人の男が台湾で交際相手の香港人女性を殺害。台湾当局は香港に逃げ帰った男の身柄の引き渡しを香港当局に要請したが、香港と台湾の間に犯罪者引き渡し協定がなかったため実現しなかった。そこで2019年2月、香港政府は犯罪容疑者を中国本土や台湾、マカオへ引き渡すことを可能にする「逃亡犯条例」の改正案を提案する。

しかし、香港人は「この法律によって中国に対し批判的な考えを持つ人が中国当局に引き渡され、裁判にかけられるのではないか?」という疑念を抱く。彼らがこうした考えを持つに至るのには、ある伏線があった。

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