
2027年版ピレリカレンダー『INDIA』がニューデリーで発表された。今回のテーマは「インド」。古くから受け継がれる伝統と、未来へ向けた発展の原動力が共存するこの国の姿を、多様な視点から描き出した意欲作となっている。
【画像】「インド」をテーマにした2027年版ピレリカレンダー『INDIA』に収録される作品の一部(写真19点)
2027年版の最大の特徴は、ピレリカレンダー史上初めて3人の写真家が共同で制作に参加したことだ。2026年版も手掛けた写真家ソルヴェ・スンズボーに加え、インド写真界の巨匠ラグー・ライ、そしてその遺志を継いだ娘アヴァニ・ライが、それぞれ異なる視点からインドを表現している。
ラグー・ライは1965年以降、60年以上にわたりインドの公共生活や人々の日常、社会の変化を記録し続けてきたインドを代表する写真家の一人として国際的に高く評価されている。2027年版では、自身の膨大な写真アーカイブと現代のインドを結び付ける構想を描いていたが、2026年4月に逝去。その後、娘であり写真家でもあるアヴァニ・ライが父の遺志を受け継ぎ、本プロジェクトを完成へと導いた。
今回のカレンダーでは、ラグー・ライのアーカイブ写真をアヴァニスタジオの外へ持ち出し、デリーやムンバイの街へと再び持ち込み、現在そこに暮らす人々とともにそれらの作品を新たな形で撮影した。過去と現在を同じフレームの中で対話させることで、時間の連続性と変化、そして記憶の継承を描き出している点も大きな見どころだ。
アヴァニ・ライの作品は、花市場や路地、学校が残るオールド・デリーから、超高層ビル群が立ち並ぶムンバイまで、急速に変化する現代インドを舞台としている。約130人に及ぶ一般市民や若者、職人、ダンサー、パフォーマーらを撮影し、父が記録した過去のインドと、現在そこに生きる人々の姿を重ね合わせた。
一方、ソルヴェ・スンズボーは、インドにゆかりのある9人の女性たちに焦点を当てた作品を制作した。撮影の舞台となったのはラージャスターン州のジャイガル城とアジャブガル。女優、音楽家、詩人、モデルなど各分野で活躍する女性たちを被写体に、鮮やかな色彩や布地の質感、光と影のコントラストを生かして表現している。
キャストには、アディティ・ラオ・ハイダリ、アヴァンティカ・ヴァンダナプ、フリーダ・ピント、アヌーシュカ・シャンカール、ルピ・クーア、ラクシュミ・メノン、バヴィータ・マンダヴァ、パドマ・ラクシュミらが参加。さらにアヴァニ・ライ自身も被写体として登場している。
2027年版ピレリカレンダーは2026年5月から9月にかけて撮影された。特製ボックスセットには、ソルヴェ・スンズボーによる18作品と、ラグー・ライおよびアヴァニ・ライによる18作品、計36点の写真が収録されている。
今回の『INDIA』は単にインドという国を紹介する作品ではない。人々、土地、美しさ、記憶、そして現代をめぐる対話を通して、複雑で多様なインドの姿を映し出している。3人の写真家による異なる視点が交差することで、一つの視点だけでは捉えきれないインドの伝統や未来への発展に向けた奥行きを感じさせる作品が誕生したのである。