平安貴族が興じた風光明媚な地で、心身を調える。陰陽五行と奥嵐山の自然が織りなす、星のや京都の新ウェルネスプログラム誕生秘話
~平安貴族に深く浸透していた陰陽五行の思想から、新たな滞在プログラム「奥嵐山の調律養生」が完成。しかし「まだ完成はしていない」という担当者の真意とは~

平安貴族も愛でた風光明媚な場所に佇む星のや京都
「その瞬間の特等席へ。」をコンセプトに、各施設が独創的なテーマを持ち、圧倒的非日常を提供する「星のや」。その地ならではの風土、歴史、文化をおもてなしに繊細に織り込み、出合った季節にしか味わえない瞬間を届けています。
星のや京都は、平安貴族が愛でた風光明媚な場所に佇む施設です。そんな星のや京都に今年誕生したウェルネスプログラム「奥嵐山の調律養生」。平安時代から貴族に深く浸透していた陰陽五行の思想で心身のバランスを調える、星のや京都ならではの養生プログラム造成の裏側には、知られざるストーリーがありました。
主人公は、星のや京都に7年勤め、年間100冊の本を読む読書家、鈴木瑛介さん。
彼は、お客様ひとりひとりに「その瞬間の特等席」を感じる滞在をしてほしいという思いで尽力しウェルネスプログラムを作り上げました。しかし、提供が始まった今も「まだ完成はしていない」と語るのです。その言葉の裏にある真意に迫ります。
新たなプログラム造成のリーダーに抜擢
平安時代の情景さえ目に浮かぶような、豊かな自然に囲まれる星のや京都。心身を癒すにはぴったりの場所です。近年多くの人が癒し、リラックス、リフレッシュを旅に求めており、京都だけでなく世界のホテルをみてもウェルネスはどんどん進化しています。星のや京都の豊かな自然環境を放っておくのはもったいないと皆が感じていた時、陰陽五行をテーマにウェルネスプログラムを開発するプロジェクトが立ち上がります。プログラム造成リーダーに任命されたのが、鈴木さんでした。施設の知識が豊富なのに加え、日本文化を熱心に学んでいた姿から、複雑な知識が必要な陰陽五行の世界を楽しく学んでくれそうという期待もあり任命されました。
何事にも前向きで好奇心旺盛な鈴木さんですが、この話を受けたときは、引き受けるかどうか迷ったと言います。
「大変だなと思ったけど、施設の本質的な魅力を伝えるプログラムの造成にわくわくして、挑戦することを決めた」という鈴木さん。ここでしかできない体験価値を伝え、お客様に選ばれ続ける宿でありたいという思いがありました。

星のや京都スタッフ・鈴木瑛介さん
初めてのプログラム造成への挑戦

静かな客室で、一人ひとりに合わせた鍼灸の施術を行う「奥嵐山の調律養生」
挑戦することを決めましたが、これまでプログラム造成や運営に関わったことはなく、今回が初めて。施設で新しいプログラムを始めるためには、社内の関係各所に合意を得る必要がありました。自分ではこのプログラムの魅力をよく理解していて、この魅力を伝えたい!という気持ちで張り切り、資料は専門用語や情報が盛りだくさん。熱量高く伝えました。が..「結局なにがすごいかよくわからなかった。他のスパと比べて特別な部分は結局どこなのでしょうか。」とこだわりを理解してもらえず撃沈。結局この会議ではうまく伝えられなかったために合意を得られませんでした。
2回目の会議の前日、スパ担当者と3時間という長時間の会議をしてこだわりのポイントをとことん整理。基礎知識から平安貴族と陰陽五行の関係、星のや京都のロケーションとの関わりなど、細かく理解を深めこだわりを言語化していきました。「自分の知識はどんどん蓄えられていく一方、相手に必要となる前提知識が何なのかを見極めることができていなかったし、こだわりのポイントを整理できていなかった」と反省したと言います。2回目の会議に挑み、無事プログラム造成のスタートラインに立ちました。壁を乗り越え、ようやく一歩が踏み出せたときはとても嬉しかったと振り返ります。
鈴木さんはその後、プログラムの重要な要素である食事やアクティビティに関しても料理長や鍼灸師の先生と相談を重ね、五味を網羅する季節感のある食事や、体調によって味付けが変わる食事、体質のタイプによって変わるアクティビティなど、細かく造り上げていきました。鈴木さんの尽力あり、平安貴族の歴史や文化を織り込んだ2泊3日の養生プログラムが完成しました。

料理長と提供する食事内容の相談

五味を味わう五行の調律膳
プログラムの魅力を実感した夜

プログラムの造成過程を振り返る鈴木さん
協力してくれる鍼灸師の中根先生が来館した際、実際に川に面した客室で施術を受けた鈴木さん。川の流れる音や窓から入る光を感じながら施術を受けていると、気付かないうちに眠ってしまっていたそう。「とってもよかった!」と興奮気味に語る鈴木さん。施術を受けた後は周りのスタッフに「顔が違う!ぎらぎら輝いている!」と言われ、実際に自分の顔を見たときは、仕事終わりの22時だったにも関わらずエネルギーがみなぎっていて、身体が軽くなっていたことにびっくりしたそう。この経験もあり、改めてプログラムの魅力を実感しました。施術はもちろんのこと、季節の微差を感じる星のや京都の環境、平安貴族の歴史や文化の背景ストーリーなどここにしかない要素が組み合わさって、究極の癒しに繋がっていると自身が深く実感したそうです。
そして読書家である鈴木さん。陰陽五行の知識をつけるためにも、先生からおすすめされた岡倉天心「茶の本」やレヴィストロース「月の裏側」など、本をよく読んだと言います。不完全さの美が日本独特の美意識だということを学び、陰陽五行について理解が深まったそう。さらに「良い旅館とは何か?」というテーマで先生にお勧めされた本が、すでに自分の愛読書で、思わず「私も好きです!」と伝えたことから一気に距離が縮まり、信頼関係が深まりました。先生も「星のや京都の自然に包まれる環境の中で施術できるのがとても幸せ」と、星のや京都のために良いプログラムを造ろうと前向きに協力してくれたと振り返っています。
お客様一人ひとりに提供する「その瞬間の特等席」
はじめは、声をかけられて関わった新たなプログラム造成。星のや京都の世界感を伝える滞在をどう演出するかなど、すべてをゼロからイチにしていく作業は骨の折れる作業でした。しかし、もがきながら進めていくうちに、鈴木さん自身も施設への理解がさらに深まり、ここでしかできない魅力があるプログラムだと強く認識したと語ります。先生からは「お客様にどこまで説明して、どこをあえて説明しないか。その匙加減が大切」というフィードバックをいただき、お客様に頭で理解してもらうよりも、どうやったら五感で感じてもらえるかという思考で内容を磨いていきました。
季節や時間、その他すべてが影響し、一刻一刻違う表情を見せる星のや京都。あえて余白を残すことで、お客様一人ひとりの心身にあった滞在で変化を感じ、自分だけの「その瞬間の特等席」を感じてほしいと語る目は真剣で、きらきらと輝いていました。

プログラムで重要な役割を持つ「聞香」を丁寧に準備する鈴木さん
「まだ完成していない」の真意
プログラムが完成したあとは、スパの専門家に体験していただき、星のや京都の環境やおもてなしがあるからこそ成立するプログラムだと高評価を得て自信もつきました。これでこのプロジェクトは成功、完結したかと思いきや、鈴木さんは「まだ完成していない」というのです。その真意とは..?
「お客様の笑顔を見ることが、毎回のゴールです」
プログラムをお客様に体験していただき、笑顔を見ることができたときこそが本当の意味でのゴール。その瞬間を積み重ねていくことで、このプログラムは真の完成へと向かっていくと強く語ります。目の前のゴールを一つひとつ迎えるために、鈴木さんは今日もプログラムを磨き続けています。
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