『La Bola Negra』共同脚本・アルベルト・コネヘロが語るフェデリコ・ガルシア・ロルカ暗殺の背景

アントニオ・マチャードの詩に、こんな一節がある。

「この世に生まれてくるスペインの子よ、神が守り給わんことを。二つのスペインのうち、どちらかが君の心を凍らせる」

セビリア出身の詩人の言葉は、まさにそのとおりだと言うほかない。裁判所の手続きにより住み慣れた自宅から強制退去させられてから約2週間後、87歳で亡くなったマリカルメン・アバスカルの痛ましい一件*を見ればいい。

この出来事は、スペイン社会に根強い、同胞を敵とみなして争う気質をあらためて浮き彫りにした。一方は、何十年も暮らした家に住み続ける高齢女性の権利を擁護した。もう一方は、彼女の人生や、信用に値しないとする根拠らしきものまで持ち出し、彼女を貶めることに躍起になった。

さらに、極右政党の躍進が予想されている2026年11月29日のスペイン総選挙に向けた選挙戦が始まっていることも踏まえると、映画の面でもいまはとりわけ大きな節目を迎えている。ロス・ハビスが監督した『La bola negra(英題:The Black Ball)』が大ヒットしているのだ。この作品が描くのは、古くからスペインの歴史を特徴づけてきた社会の分断である。残念ながら、二つに分断されたスペインは手を取り合う気配に乏しい。共に生きる力こそ問われているはずなのに、なお対立の理由を探し続けている。

* 1956年からおよそ70年間、マドリードの賃貸住宅に暮らしていた彼女は、家族から引き継いだ古い賃貸契約をめぐり、2018年に住宅を取得した不動産会社と争いになり、裁判の末、2026年9月23日に強制退去に。退去当日に病院へ搬送され、約2週間後に亡くなった。退去後、彼女を支援する声が広がる一方、ネット上では私生活や経済状況を疑う真偽の疑わしい情報も流れた。住宅問題への姿勢が各々の政治的な対立とも結びつき、彼女の件が社会全体を分断する争点になっている。

a dramatic scene between two individuals in a監督賞受賞者(同時受賞) ハビエル・カルボ&ハビエル・アンブロッシ監督『la bola negra』 dimly lit room

courtesy of festival de cannes

ロルカが体現した自由と、暗殺が今に伝えること

これは決して新しい話ではない。近現代史の多くは、国のあるべき姿を自分たちこそ代表していると考える人々と、それとは正反対の考えを掲げる人々との対立の連続として語ることができる。その悲劇を体現する人物として、フェデリコ・ガルシア・ロルカに並ぶ人はいない。1936年、スペイン内戦時の暗殺から90年あまりを経たいま、彼はスペイン文化を象徴する世界的な存在となった一方で、型から外れるものを受け入れられなかったスペインの犠牲者でもある。

ロルカについて語るのは、作家・劇作家であり、戯曲『ラ・ピエドラ・オスクラ(暗い色の石の意)』の作者でもあるアルベルト・コネヘロだ。同作は映画『ラ・ボラ・ネグラ』の物語のひとつの着想源となっている。以前、エスクァイアのインタビューで、同僚のピラール・マンサナレスに語ったコネヘロは、詩人の暗殺と、その蛮行の背後に何があったのかを振り返った。ロルカの死を一つの原因だけに還元しないその言葉は、強く胸に迫る。

alberto conejeroSergio Parra

劇作家アルベルト・コネヘロ。

ピラールから「ロルカは思想よりも、同性愛者であることを理由に殺されたと思うか」と尋ねられたコネヘロは、冒頭で触れた、同胞を憎み合うスペインを端的に表す言葉で答えた。「ロルカを殺したのは、無知と憎悪と同性愛嫌悪です。彼が体現していたものすべてを忌み嫌う人々が、彼を殺したのです」。

コネヘロにとって、ロルカは同性愛者の詩人というだけではない。共感、善良さ、寛大さ、社会へのまなざし、人間主義、そして自分らしく生きる自由を体現していた。だからこそ、彼の暗殺は象徴的な意味も帯びていた。「戦争が始まった頃の彼の暗殺には、見せしめの意味合いもあったと思います」とコネヘロは語る。「ロルカを殺すことで、その思想やアイデンティティを共有するすべての人に、恐ろしいメッセージが突きつけられたのです」。

2026年カンヌ国際映画祭出品作『la bola negra』の基となった作家フェデリコ・ガルシア・ロルカの肖像。

Getty Images

映画『La Bola Negra(ラ・ボラ・ネグラ)』が映す現代スペイン社会の分断

そしてインタビューの終盤、記事の見出しにもなり得るほど力強い言葉が語られた。「フェデリコ・ガルシア・ロルカを殺したのは、兄弟殺しにも似た憎悪と、最も光に満ちたスペインへの蔑視でした」。歴史のなかで繰り返し起きてきたように、スペインのあり方は一つしかないと信じる人々が、その国の輝きを踏みにじったのだ。

『ラ・ボラ・ネグラ』がいまスクリーンに登場するのは、だからこそ特別な意味を持つのかもしれない。ロス・ハビスの映画は過去を語るだけではない。歴史を通して、いまもなお答えにくい問いを投げかける。異なる人々に私たちはどう向き合うのか。考え方、愛し方、生き方の違いを受け入れることが、なぜこれほど難しいのか。そして何より、なぜ私たちは他者を敵に仕立て上げることに、これほど容易に傾いてしまうのか。

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